(座談会)篠原靖・跡見学園女子大学准教授×公明党議員
「地方創生と観光」を巡る座談会の<下>です。篠原靖・跡見学園女子大学観光コミュニティ学部准教授と公明党の里見隆治参院議員、海野真樹・北海道議、真山祐一・福島県議、岡明彦・愛知県議、林広文・長崎市議で語り合いました。※<上>は18日付で掲載済み
■司令塔が描く未来の戦略/民間の視点で“稼ぐ街”に
■DMO官民連携
林広文・長崎市議 長崎市では2018年、観光地域づくりの司令塔となるDMO(観光地域づくり法人)が発足しました。長崎国際観光コンベンション協会が担い、民間人材も登用しています。
里見隆治・参院議員 DMOとは、どのような組織ですか。
篠原靖・跡見学園女子大学准教授 行政や宿泊、交通、飲食、商店などにとどまらず市民の観光との関わりを担い、関係機関を取りまとめ、地域全体の観光戦略を立案、実行する“司令塔”とも言うべき組織です。従来の日本の観光は経験や勘に頼り行政が中心になり進めてきましたが、国策として観光を発展させるためには、来訪者数を競う「数の観光」から「稼ぐ観光」への転換が不可欠になります。
岡明彦・愛知県議 政策を実行する上で大切な視点は。
篠原 大切なキーワードは二つ。「マーケティング」(市場分析、商品計画、宣伝、販売を行うこと)と「マネジメント」(人や仕事、お金、情報をうまく動かして、目標を達成すること)です。すなわち、これからの地域観光は民間での経営手法を取り入れた戦略的なアクションが求められます。
林 長崎では造船業や水産業が厳しい状況に直面し、人口減少も続いています。観光客数だけでなく、滞在時間と消費額を伸ばし、地域の所得を高める必要があります。
篠原 長崎国際コンベンション協会は観光庁から日本を代表する「先駆的DMO」に認定されています。市長が描く行政のグランドデザインを戦略に落とし込み、民間の視点で新たな観光街づくりに挑戦しています。全国の自治体や地方議員の皆さんは長崎を訪問し、先進事例を視察されることをお勧めします。
里見 何を成果とするのでしょうか。
篠原 「訪問客の満足と消費」「事業者の商機と収益」「市民の満足」の三つです。これらを同時に高めリピーターをつくることが重要です。
海野真樹・北海道議 函館でも、航空会社や市場、宿泊事業者が共通の戦略で動く仕組みが求められています。
林 課題は人材と財源です。長崎市は23年に宿泊税を導入。26年度は約3億9000万円を見込み、多言語案内やWi-Fi環境の整備などに活用します。
篠原 税の使途と、旅行者、事業者、市民への効果を示すことが、理解を得る土台になります。
林 導入時には「宿泊客が減る」との懸念もありました。使い道を丁寧に説明し、受け入れ環境の充実へ還元していきます。
■市民の参加を促す
里見 市民の参加も欠かせませんね。
林 長崎のまち歩き観光「長崎さるく」では、市民ガイドが坂道や路地を案内し、街の歴史や暮らしを伝えています。原爆遺跡などを巡るピースツーリズムも進めています。
篠原 長崎の事例は市民が物語を伝えることによるシビックプライド(地域への誇り)の育成により、地域での飲食や買い物にもつなげ、地域に収益を巡らせることにも成功しています。
里見 行政と事業者、市民が目標を共有し、観光を地域の稼ぐ力に育てる。この動きを後押ししていきたいです。
■ホープツーリズムで再生/人の往来が平和を支える
■観光で被災地再生
真山祐一・福島県議 福島県浜通りは地震、津波、原子力災害を経験し、15年を経ても宿泊者数は震災前の約71%、教育旅行も約7割です。観光を地域経済の再生につなげています。
里見 能登半島地震の被災地では、和倉温泉など観光の再生が地域全体の復興に直結します。先月に起きた熊本地震の被災地も、復旧の先に人の往来となりわいをどう取り戻すか。観光は復興の重要な柱です。
真山 福島で進めているのが「ホープツーリズム」です。震災と原発事故、復興の歩みを現地で学びます。「フィールドパートナー」が体験を語り、参加者は見て、聞いて、考える。25年度は1万9588人が参加しました。
篠原 災害の多い日本では、自分の命をどう守るかを考える機会にもなります。学びと旅の楽しさを結び、福島の理解者やリピーターにつなげたいですね。
林 長崎でも地域の記憶と今の暮らしを共に伝えることを大切にしています。
■復興結ぶ自転車
真山 今年7月、「ふくしま浜通りサイクルルート」が、国土交通省のナショナルサイクルルート(NCR)に指定されました。かつて通れなかった地域を走れること自体が復興の姿です。海沿いの景観を楽しみ、地域の店や人を訪ねてきます。
里見 NCRは中道改革連合の赤羽一嘉副代表(衆院議員)が国土交通相(当時、公明党)時代の19年に創設されました。認定されたルートは国から財政支援を受けることができます。
真山 その赤羽国交相が21年、いわき市の観光業関係者との懇談で、NCRを通じた東日本大震災からの復興加速の重要性を呼び掛けてくれました。以来、党のネットワークを生かし、党県議団が認定に向けて取り組みを強く訴えてきました。
里見 同じ日に、能登半島を含む「いしかわ里山里海サイクリングルート」も指定されました。福島と石川が共に選ばれたことは、交流の力で被災地の再生を進める象徴だと思います。
海野 自転車で巡るからこそ、土地の暮らしや人の温かさを感じられますね。
里見 人が訪れ、交流が戻ることは、地域の希望になります。
篠原 震災の学びに食や自然、生活文化を観光客が体験する仕組みを作ることが重要になります。これらを組み合わせてこそ、「福島でしかできない旅」になります。観光は地域経済を支えるだけでなく、人と人、地域と地域を結ぶ産業です。被災地を訪ねて現地の声を聞くことが、理解と支援の輪を広げます。
里見 観光は平和でなければ成り立ちません。人々が行き交い、互いの歴史や文化、暮らしを知ることは、平和な社会を築く力になります。観光が「平和産業」と呼ばれるゆえんです。公明党のネットワークで各地の復興と挑戦を支えていきます。

公明新聞電子版 2026年08月25日付


