公明の主張で復活して10年
中小企業の設備投資などを幅広く支援する国の「ものづくり・商業・サービス補助金」(ものづくり補助金)が今年度で、事業再開から10年目に入った。民主党政権時代の事業仕分けで2010年度に一度は廃止されたものの、公明党の強い主張によって12年度に復活し、主に毎年度の補正予算で実施されてきた。復活以降、延べ約10万社が補助金を活用し、新たな挑戦に踏み出している。
生産性向上などで成果 延べ約10万社が設備投資へ活用
「先代から会社を受け継いだ矢先、ものづくり補助金を知った。おかげで古い設備を一新でき、新出発を切れた」――。こう話すのは、東京都墨田区で焼き付け塗装の専門会社「I・コーティング」を経営する五十嵐徹哉さん。8年前に同補助金を活用し、耐久性の高いステンレス製の塗装ブースを導入した。「生産性が格段に上がり、社員1人を新たに雇うこともできた」と喜びを語る。
一方、埼玉県加須市にある株式会社彩北自動車整備工場は2年前、補助金を活用し、大型トレーラーやバスの車体に写真や広告などを印刷できる「ボディープリンター」を導入。仕事の受注先が広がったほか、加須市の名物「ジャンボこいのぼり」を印刷した車両で地域のPRにも貢献する。
同社の橋本哲矢専務取締役は「新しい技術に挑戦し、結果が一つ一つ形になってきており、従業員のモチベーションが上がっている」と語った。
デジタル、グリーンの特別枠
この約10年、ものづくり補助金は補助上限額や対象を拡充しながら毎年実施されてきた。
現在、公募中の同補助金(一般型)は、新製品やサービス開発に必要な設備投資の費用などを支援する「通常枠」に加え、デジタル化や温室効果ガス排出削減に向けた企業の取り組みを支援する「デジタル枠」「グリーン枠」などの特別枠も創設されている。補助上限額は最大2000万円。
対象は製造業に限らず、商業やサービス業など間口が広い。これまでに採択された企業は延べ9万6757社(3月末時点)に上り、中小企業庁の担当者は「これだけの予算規模で10年近くも継続している事業者向けの支援策は他に例がない」と強調する。
効果は顕著だ。中小企業庁が12年度補正の補助金を利用した企業の実態を調査したところ、営業利益などを合わせた「付加価値額」の伸び率が5年間で23%に達していた。企業全体の付加価値額の伸び率(16%)と比較すると、1.5倍も高い結果となった。
「よろず拠点」に相談を 11次公募、今月中に受け付け開始
現在公募中の補助金(10次締切分)は11日で受け付けが終了するが、今月中にも新たに11次分の公募が始まる見通しだ。応募には、具体的な取り組み内容や将来の展望、数値目標などを記載した「事業計画書」の提出が必要になる。
計画書の作成が難しい場合は、「認定経営革新等支援機関」に登録されている金融機関や商工会・商工会議所、税理士などの支援を受けることも可能。また、経営上の相談に無料で対応する「よろず支援拠点」が47都道府県に設置されており、中小企業庁の担当者は「補助金の利用を初めて検討する方は、ぜひ訪ねてほしい」と説明する。
今後も継続・拡充めざす
党経済産業部会長代理 里見りゅうじ参院議員(参院選予定候補=愛知選挙区)
中小企業の成長なくして日本経済の発展はない。しかし、優れた技術や発想を持ちながらも、資金不足などで新しい事業に踏み出せずにいるケースも多い。公明党は中小企業の挑戦を後押しするために、ものづくり補助金の拡充や制度の改善に一貫して取り組んできた。
中小企業の新たな成長のカギとなるデジタル化、グリーン化の推進に向けても、昨年の衆院選公約に掲げ、21年度補正予算で、取り組みを支援する特別枠を実現した。また、1年を通じて申し込みができるよう、年1回だった公募の機会を20年から年4回に広げている。
引き続き中小企業の声を丁寧に聞きながら、今後も同補助金の継続・拡充をめざす。