参議院行政監視委員会で、村上総務大臣、高村法務副大臣等に質問。
外国人労働者が在留期間後に帰国する時点で、翌年に納税義務が課される住民税の多くが未納になっている実態を、政府が把握・フォローできていない点を指摘。
「外国人や事業主にしっかり周知します」に終始する態度に猛省を促す❗️
質問の様子をYouTubeにアップしました。
議事録
第217回国会 参議院 行政監視委員会 第3号 令和7年5月12日
里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
本日は、外国人労働者が就労期間を終了し母国に帰国した後に相当程度が未納付となっているのではないかと懸念をされております住民税につきまして、お手元に関連資料も配付させていただき、質問してまいります。
現在、外国人労働者は増加の一途でありまして、令和六年度末時点で技能実習生が四十五万六千五百九十五人、特定技能外国人が二十八万三千六百三十四人と過去最高水準となっております。人口減少社会の日本にあって、今や外国人労働者なくして我が国社会経済は成り立たない状況となっております。
この技能実習生や特定技能外国人は、その期間が終了すれば帰国することとなりますが、そこで問題となるのが住民税の納付についてであります。住民税は、所得が発生した翌年に確定、その後、納付という仕組みのために、事実上、最後の年の所得に対して納付義務の生じる住民税は支払うことなく未納のまま帰国することが頻発し、自治体にとって住民税の取りっぱぐれといった事態が発生しているのではないかというおそれを抱いております。
そこで、総務省に質問いたします。
外国人技能実習生、また特定技能外国人などが日本に滞在した最後の年の翌年納付すべき住民税を納付せずに帰国している件数、すなわち住民税未納帰国外国人労働者数、また未納総額についてどの程度把握をされているか、お伺いいたします。
政府参考人(寺崎秀俊君) お答え申し上げます。
個人住民税の令和五年度における滞納額の総額は三千二百九十八億円となっているところでございますが、ただいま委員から御質問ございました外国人の方に限った個人住民税の滞納額、滞納件数については、総務省では現時点で把握していないところでございます。
里見隆治君 把握していないと。別に人種別に把握しろとは言いません。しかしながら、これ様々、これ私だけが言っているわけではないんですね。様々なところで、また現場の外国人、あるいは外国人を受け入れている企業、またその監理をしている監理団体、様々な方からそのような話を伺っております。
その意味で、是非これ、総務省としてもこの未納のまま帰国してしまう外国人がいるということに関して是非問題意識を持っていただきたいというふうに思いますけれども、総務省としての課題認識をお伺いいたします。
政府参考人(寺崎秀俊君) お答え申し上げます。
現行制度上、一月一日以降に国外に転居することにより住所を有しなくなる場合、納税義務者は納税管理人を定めなければならないこととされております。また、給与からの天引きを受けている個人が退職する場合においては、本人からの申出等により事業者が残りの税額を給与、退職手当などから一括で徴収する制度がございます。しかしながら、自治体からは、国外に転居する納税義務者がこういった納税管理人制度や一括徴収制度を活用せず徴収が困難となる場合があるとの声を承知しております。総務省としても、この問題につきましては重要な課題として認識しているところでございます。
里見隆治君 重要な課題として認識ということでありますので、であれば、更にこれしっかり実態として把握をし、そして手を打っていくという必要があると思います。
これ、いろいろと今回調べている中で、遡りますところ六年前、令和元年度に総務省で取りまとめられた個人住民税検討会報告書がございました。この中にこうあります。地方税法には残税額、残りの税の額という意味だと思います、その一括徴収についても規定されている、しかしながら実際には一括徴収もせず帰国してしまう外国人労働者が多いとの声もある、こうしたことも踏まえ、引き続き検討を行うこととしたと。
当時、もう既に六年前に総務省としてはこの認識をされているんだと思います。ただ、確かに特効薬はないということも一方あると思います。その報告書の中に、最後、引き続き、特別徴収義務者、地方団体、納税義務者の事務負担に配慮しつつ具体的な対応方策の検討を進めていくことが必要であると、これ継続案件となっているんですね。その後、特定技能の外国人が入ってきた、更にこれから増えていく。この課題の論点というのは、論点は同じですけれども、これ外国人の数に比例して、あるいは高度な外国人が入ってくれば更にそれ以上に加速化して、この取りっぱぐれている本来徴収すべき納税額、これが増えていってしまうと、そんな課題があると思うんです。
今行っているまさにこの特定技能制度、これが始まったところで、政府が、これは関係閣僚会議、ほぼほぼ閣議に匹敵すると思いますが、そこで、外国人材受入れ・共生のための総合的対応策、こちらで、こうした課題について各省庁が取り組むべき施策、対応策、挙げられております。総務省ではどのような対応策講じられているか、御答弁お願いします。
政府参考人(寺崎秀俊君) お答え申し上げます。
御指摘の令和六年度に改訂されました外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策におきまして、外国人の方に地方税制度を御理解いただき納税義務を果たしていただくための取組といたしまして、「個人住民税の滞納対策として、給与支払者に徴収・納入をさせる特別徴収を促進することが必要との観点から、地方公共団体と連携して、特別徴収の適切な実施のための事業者に対する周知を図る。 また、出国する納税義務者に支払われるべき給与から未納税額を一括徴収する制度及び納税義務者の納税に関する一切の事項を処理する納税管理人の制度について、引き続き、企業や納税義務者たる外国人に対する周知を図る。」と記載されているところでございます。
里見隆治君 やるべきことはこれで明確に示されているわけですね。ところが、我々、この行政監視委員会もそうですけれども、また総務省の行政評価局の特段の任務でもありますとおり、それが実行されているか、問題があれば、どうPDCAサイクルを回して次なる課題そして手段を講じていくのかということを、しっかりサイクルを回していかないといけないと思うんですね。
具体に、その対応策に基づいてこの五年間総務省が何をしてきたか、また、新たな課題が見付かってきたのか、その点お伺いしたいと思います。
政府参考人(寺崎秀俊君) お答え申し上げます。
総務省といたしましては、先ほど御答弁申し上げました納税管理人制度及び一括徴収制度を外国人の方々に理解していただくことが重要であると考えております。
このため、関係省庁と連携の上、個人住民税の制度を周知するための多言語パンフレットを外国人本人向けと外国人を受け入れておられる事業者向けに作成し、その周知を図っているところでございます。
一方で、地方の現場における多言語パンフレットの活用状況や納税義務者の反応については現時点で具体的に把握しておらず、委員のただいまの御指摘なども踏まえて、今後更に現場での実態把握に努めてまいりたいと考えているところでございます。
里見隆治君 この五年間何をやりましたかと、パンフレットを作りましたと。じゃ、それで具体的に地方の窓口で何やっていますかと、把握しておりませんが、委員の意見を踏まえてと。ちょっとこれでは、今後、外国人がこれからどんどん増えていく中で、果たして我々しっかりとこの税収を確保できるのか。
一方で、外国人の皆さん、様々な給付またサービスの提供を受けておられますけれども、私は、納税をし、また日本人と一緒に共生した社会の構成をされている以上、その権利はあると思います。しかし、こうした納税ということをきちんと確保しなければ、ほかの国民の皆さんにも理解が得られないのではないかと。その意味で、総務省に猛省いただいて、是非新たな手を、しっかりと対応策を講じ、進めていただきたいとお願いしたいと思います。
法務省にもお伺いいたします。
法務省の施策、主に入管庁だと思いますけれども、同じように、この地方税、特に住民税の納付について、入管庁としての対応策も掲げられております。その内容と、また現在どのような取組をされているのか、併せてお伺いしたいと思います。
政府参考人(福原申子君) お答え申し上げます。
令和六年度に改訂された外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の施策番号百七十六では、「受入れ機関は、一号特定技能外国人が円滑に納税を行うことができるようにするための支援、特に、在留期間満了時までに、翌年納付すべき住民税を当該外国人に代わって納付することができるようにするための支援を実施することとし、出入国在留管理庁は、受入れ機関が納税に係る支援を的確に実施できるよう受入れ機関に対する周知を図り、適正な履行が確保されていない受入れ機関に対しては、適切な指導等を行う。」とされているところでございます。
次に、お尋ねの具体的な取組状況でございますが、特定技能制度におきましては受入れ機関あるいは委託を受けた登録支援機関が特定技能外国人を支援することとなりますが、出入国在留管理庁におきましては、支援に関する運用要領において、生活オリエンテーションの中で税に関する手続について特定技能外国人に情報提供することを義務的な支援と位置付けているところでございます。
その運用要領におきまして、地方税につきましては、原則として離職後の翌年まで納税義務があること、離職後の納税については一括納税や納税管理人制度の利用も可能であることなどについて特定技能外国人に対し情報提供することとしております。また、特定技能外国人の在留期間更新などの審査において納税義務の履行を確認し、履行していない場合は消極的に評価することとしております。また、そのことを運用要領で明らかにすることにより、納税義務の履行を促しているところでございます。
さらに、出入国在留管理庁が作成する生活・就労ガイドブックで、納税管理人制度を含む地方税の納付に関し、多言語で周知を図っております。特定技能外国人を含む中長期在留者の入国時には、このガイドブックが掲載をされましたインターネット上のポータルサイトにアクセスできるQRコードを表示したリーフレットを配布しているところでございます。
また、外国人に対する受入れ機関等の支援の実施状況につきましては定期的な届出で把握をしており、その中で地方税に関する情報提供を含む義務的支援の実施を確認し、問題があれば指導等を行うこととしております。
当庁といたしましては、これらの取組は地方税の納付義務の適切な履行を促す効果があると考えているところでございまして、引き続きこれらの取組の適切な実施に努めてまいります。
里見隆治君 結局、入国管理庁としても必要な情報を提供します、周知をしますということですね。これ当然、住民税ですから実際には市町村だということですけれども、こうして、これは様々な施策一般にも言えることですが、目標として周知を行う、情報提供を行うと。そのKPIとして、進捗度合いを示す指標として、やはり周知だけを指標とすると、結局アウトカム的な、その施策の効果として何をもたらされたのかということが我々は把握できない。それでは、もちろん国会もそうですけれども、行政、また行政評価、そして政策効果という点でもこれ非常に、そもそもの評価ができないし、次に何を打てば、手を打てばいいのかというのが分からないということになるのではないかと懸念をしております。
法務副大臣に今日は御出席をいただいております。先ほど申し上げたとおり、外国人の受入れということをこれから、数的にはもっと増えていくと思います。そうした中で、この納税というところもしっかりしていただかなければ日本国民の皆さんの理解は進まないと思います。
法務省としてどのように御認識、またお取組をされるか、お伺いいたします。
副大臣(高村正大君) お答えいたします。
外国人を受け入れていくに当たり、日本社会の一員として受け入れられるよう、外国人が適切に公租公課に係る義務を果たしていくことは非常に重要であると考えております。
外国人の公租公課に係る義務の適正な履行を求める声が高まっていること等を踏まえ、特定技能制度及び育成就労制度では、本年三月十一日に閣議決定された基本方針において、外国人等受入れ機関にはそれぞれ納付すべき公租公課を適切に支払う義務があること、これらの者が納付すべき公租公課の未納を防ぐため、関係行政機関で連携の上、必要な措置を講じることを明記しております。
法務省といたしましては、特定技能外国人や育成就労外国人はもちろんのこと、それ以外の外国人も含め、公租公課の未納防止について関係行政機関と十分に連携した上で適切に対応していきたいと考えております。
里見隆治君 この連携というのはマジックワードなんですけど、ともすると各省の責任逃れにもなりかねないと私は思っておりまして、決して人に押し付けることのない連携を各省にはお願いしたいと思います。
また、これもよく聞くワーディングで、適切な対応ですけれども、結局、今お伺いしても、五年前に必要とした施策と変わっていないんですよね。その意味で、適切な対応というのは分かりますけど、じゃ、何が適切なのかということをよく国会でも審議し、その素材を行政の方でしっかりと御提示をいただくというのが皆さんの、政府側の使命だというふうに思いますので、お願いいたします。
今日は行政評価局長もお見えです。事ほどさよう、こうした対応、しっかりと、法務省に聞けば、最終的には住民税の話で、住民税だと聞くと、最終的には自治体の窓口だと。しかし、国が外国人を受け入れようとする中で、結局、最終窓口の住民税が納付されていないということで、この国が行おうとしている外国人の受入れということ自体がしっかりと動かなくなってしまうかもしれない、そうした危機感を私は感じております。
行政評価局の立場でこうした問題どのように捉えられるか、お伺いしたいと思います。
政府参考人(菅原希君) お答えいたします。
行政運営改善調査を当局で行っておりますけれども、これは総務省が各府省の業務の実施状況などを実地に調査し、行政上の課題を把握、分析して改善方策を各府省に提示するものでございます。この調査のテーマは、国民生活や社会経済への影響が大きいなど改善の必要性が高いと考えられるものを中心に、政策評価審議会の意見などを踏まえて選定しているところでございます。
委員御指摘の、出国した外国人の方の個人住民税の徴収につきましては、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策などに基づく関係府省の取組状況について引き続き注視をしてまいりたいと考えております。
里見隆治君 今日、村上大臣にもお越しをいただきました。村上大臣は、総務省、また各省庁の行政の適正な執行というお立場で、今日、私、その思いで、今日お越しをいただいております。
今、様々御答弁をいただきましたけれども、村上大臣のお立場で、これをどのように御認識をし、そしてこれをどう進めていくべきか、お考えをお伺いしたいと思います。
国務大臣(村上誠一郎君) 出国した外国人の方の個人住民税の徴税につきましては、里見委員の方から非常に重要な、また鋭い御指摘をいただいたと思っております。
外国人の中には、地方税制度を含め日本の社会制度に対する理解が十分でないために、意図せずして公的義務を履行していない方々や、また必要なサービスを享受できていない方も存在していると、そういうふうに考えております。そうした外国人の皆さん方に地方税制などの社会制度を十分に理解していただくことが重要であると、そのように認識しております。
そのためには、地方税制度も所管する総務省としても、引き続き、外国人の方に対する周知や制度の活用を促すとともに、自治体の実情を把握するように努めてまいりたいと考えております。その上で、里見委員御指摘を踏まえまして、必要に応じてどのような対応策があり得るのか、徴収実務を担う自治体の意見も聞きながら検討する必要があると考えております。
以上であります。
里見隆治君 大臣、御答弁ありがとうございます。
必要に応じてということですね、と言われると、こっちのはみんなそうなんですけど、じゃ、必要じゃないからやりませんでしたって将来言われるんじゃないかと思ってしまうんです。私は必要だということをこの二十分間掛けて申し上げましたので、そういう意味で私は必要だと思います。
是非御対応いただきたいですし、冒頭質問した、また、これ実態も分かりませんというのが一番最初の御答弁でした。まず、これ実態をしっかり把握し、確かに御負担も現場で出ると思います。しかし、それをどうクリアしていくのかと。
これ、今後、外国人は更に増えてまいります。特定技能は、今後五年間で八十二万人と。そうなりますと、特定技能は、だんだん賃金水準、高度な人たちで上がってまいります。例えば、平均年収四百万とすれば一人当たり住民税は約十七万円、これ毎年毎年十万人帰国をされたとしても、単純計算で百七十億円という規模に及びます。
私、何割が取りっぱぐれているか、滞納しているか、未納で帰られているか、そこは数字がないので分かりませんけれども、ともすると、これはもう十億単位、百億単位で取りっぱぐれてしまう、徴収漏れになるということを指摘し、そして、また私、一年後、二年後こうして質問しますけれども、決して同じ答弁にならないように、是非行政で全体でお進めいただきたいと、そのことをお願いしまして、質問を終わります。
ありがとうございました。