本日の国土交通委員会の質疑の動画です。
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議事録
第217回国会 参議院 国土交通委員会 第10号 令和7年4月17日
里見隆治君 公明党の里見隆治です。
質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
物価高騰に負けない賃金引上げ、これが我が国社会全体の最重要課題の一つとなっております。国土交通分野でいいますと、現場でせっかく頑張っていただいているのに賃金がなかなか上がらないという分野、今日は、特に自動車整備業、そして自動車貨物運送業、こうした二事業につきまして絞って御質問していきたいというふうに思います。
令和五年に公正取引委員会が実施しました調査において、労務費の転嫁率が低い受注者の割合が最も高いのが車体整備事業を含む自動車整備業となっております。こうした背景について、事故車の修理を行っている車体整備事業者からお話を伺ってまいりました。特に、損保との、損害保険会社との価格交渉において規模や資本力の圧倒的な違いから対等な交渉が極めて困難であると、適正価格での契約ができていないということであります。結果として、利益率が低く、労働者への適正な賃金の支払が困難となり、人材確保、労働環境の悪化、そして後継者不足といった問題が生じているということであります。
国交省では、昨年七月から、事故車の保険修理の価格交渉に関する自動車整備業からの情報提供窓口を設置いただいております。この窓口において具体的にどのような意見が寄せられているか、国交省にお伺いします。
政府参考人(鶴田浩久君) お答え申し上げます。
今御指摘のありましたように、国交省では昨年七月に情報提供窓口を開設したところでございます。昨日までに七百八十四件の情報が寄せられております。寄せられた情報の一つ一つについて事実確認をしたものではございませんけれども、寄せられた情報の内容といたしましては、価格交渉に応じてもらえない、また価格が折り合わない場合、協定を先延ばしされる、また十分な説明がないまま価格を押し付けられる、また必要な経費を計上させてもらえない、また、もう入庫させないなどと脅されたといった情報が寄せられております。
里見隆治君 様々な意見を受け止められているということであります。こうした情報を適切に、適切な価格交渉ができるよう、改善に向けた取組をお願いしたいと思います。
今日は、資料一として、情報提供窓口の設置と損害保険会社との対話という資料を配付をいただいております。
国交省では、車体整備事業者から寄せられた情報を関係省庁、具体的には金融庁、中小企業庁、公正取引委員会と共有をし、損保との対話を進めているということでありますけれども、具体的な取組状況、お伺いしたいと思います。
あわせまして、国交省では、車体整備事業者が損害保険会社と価格交渉をする上で取り組むべき事項を指針としてまとめていただいたということ、これは資料二に配付をいただいておりますけれども、この指針をどのように活用し、そしてどのような効果を期待しているか、併せて国交省にお伺いいたします。
政府参考人(鶴田浩久君) 情報提供窓口に寄せられました情報は、全て金融庁、中小企業庁、公正取引委員会に共有しております。その上で、損保各社ごとに整理、分析をしているところでございます。
また、国土交通省では、関係省庁と連携しまして、損害保険会社各社との対話を行っておりますが、その際に、窓口に寄せられた情報を匿名性が確保される形に加工した上で損害保険会社に提供し、損害保険会社のお話も聞きながら、車体整備事業者への丁寧な説明、交渉を促しております。
また、御指摘ありました指針におきましては、車体整備事業者が損害保険会社と価格交渉をする際に取り組むべき事項としまして、例えば自社の責任で見積りを作成し丁寧に説明すること、標準様式を用いて費用を適切に請求すること、損害保険会社の説明もしっかり聞くこと、さらに、損害保険会社の不合理な説明で交渉が進まない場合には国土交通省の窓口に情報提供することなどを規定しております。
国土交通省としましては、車体整備事業者がこの指針にある取組を実行することで、損害保険会社に対して労務費等の転嫁を含む適切な価格交渉を行えるようになることを期待しております。
里見隆治君 このお配りしました資料二の、九項目並んでおりますが、その中の三つ目、作業時間の実態を踏まえた価格請求、私は、ここは一つ大きなポイントになるのではないかと思います。
この三ポツの中身をそのまま読み上げますと、車体の状態が指数(標準的な作業時間)の前提と異なるなど、特殊事情がある場合は、個別交渉することというふうにございます。
私が事業者から聞いてまいりましたのは、そもそもこの標準的な作業時間が本当に標準的なのかという点であります。実際に、この標準的な作業時間として挙げられている時間では作業が終えられないことがほとんどであるということであります。また、標準的な工賃といっても、実際は最近の物価高も含めて費用がかさんでいる、懸け離れていると、そういった声もございます。
国交省がこの事業者と損保との対話を進めているという中で、こうした事業者からの声にもきちんと対応してほしいと思いますけれども、国交省の取組状況、お伺いいたします。
政府参考人(鶴田浩久君) 今御指摘ありましたように、事故車修理の価格決定に用いられております指数につきましては実態に即していないとの指摘があることは私どもも承知をしております。
このため、国土交通省では、本年度、第三者的立場から修理作業の標準的な作業時間を調査することとしております。調査結果は公表を予定しておりまして、その他の活用方策も併せて検討してまいりたいと考えております。
また、関係省庁と連携して行っております損害保険会社との対話におきましても、この調査結果を踏まえた意見交換も行っていきたいと考えております。
里見隆治君 この関係、今のやり取りを踏まえて、中野国交大臣にお伺いしたいと思います。
このように、昨年度、そして今年度、様々取組をいただいているということでありますが、車体整備事業者からは、こうした取組が、先ほどの窓口の設置、あるいは対話の促進、そして指針の制定と、こうした取組が事業者にまだまだ周知されていないのではないかと。もちろん、業界団体がそれぞれありますので、団体に属している皆さんにはお耳に入っているけれども、むしろこれは公正な競争と、やはり全体で取り組まなければどうしても穴が空いてしまうということでありまして、この全体の交渉力を強化していくべきだと、そのためにもしっかり周知をしてほしいと、そういうお話であります。
その意味で、この周知をしっかりしていくこと、また対話を活性化していくこと、さらに金融庁、公正取引委員会など他省庁との連携、こうしたことを通じて車体整備分野、これを活性化につなげていただきたいということでございます。人材確保がなければもうこの業が持続しない、そうすると、この我々の車社会も、そして社会全体も成り立たないという悲鳴でございます。
大臣の御認識、また今後の決意をお伺いします。
国務大臣(中野洋昌君) 里見委員にお答え申し上げます。
委員の御指摘の自動車の車体整備業、これは国民生活を支える重要な産業であります。今後も優秀な整備士を確保、育成をしていく必要がございまして、そのためには何といっても労務費等の適切な価格転嫁と賃金への反映ということが大事だということは私も強く認識をしております。
物流・自動車局長からも答弁させていただいた国土交通省の取組におきましては、当然、国土交通省のホームページにおける公表や業界団体を通じた周知等も行っておりますが、これら団体に所属していない事業者を含めて周知を強化をする必要があるというふうに私も認識をしておりますので、例えば塗料メーカーですとか、システム会社ですとか、あるいは日頃からこの車体整備事業者とつながりのあるような様々なルートを通じて、そして分かりやすいチラシのようなものも作って是非周知を図ってまいりたいというふうに思いますし、国土交通省としては、引き続き、情報提供の窓口を開設をし、損害保険会社との対話を継続をすることなどにより、この施策の効果というのは注視をしてまいりたいというふうに思いますし、また御指摘のような、関係省庁としっかり連携もさせていただいて必要な対策を講じていくということで、この車体整備業界が将来にわたって安全、安心な車社会に貢献できるように、これはしっかりと努めてまいりたいというふうに考えております。
里見隆治君 大臣、よろしくお願いいたします。
今日はもう一点、貨物自動車運送事業、つまりトラック運送の方についてもお伺いしたいと思います。
昨年、この国土交通委員会でも審議をし、そして制定、成立いたしました貨物自動車運送事業法の改正、そして物流効率化法、これが、その多くが本年四月一日に施行されたばかりであります。この施行状況、しっかり注視していきたいと思いますけれども、この目標として掲げられておりますのが、全国のトラック輸送のうち五割の運行で荷主、物流事業者が荷待ち、荷役等の時間を一時間短縮と、またドライバー一人当たりの年間百二十五時間の短縮を目指すなどとされております。また、全国の五割の車両で積載効率を五〇%とすることなどが目標として挙げられています。
こうした効率化と併せて、多重取引構造の是正、それによる価格転嫁率の向上と、また適正運賃、賃上げ原資の確保、そしてドライバーに確実な賃上げを強力に進めると、こうしたことがなければ今後の物流基盤というのは確保できないと思います。
しかしながら、現状、トラック運送事業においてはドライバーの所得が全産業よりもまだまだ低い、またトラック業界における価格転嫁率は受発注いずれの立場でもほぼ最下位という状況であります。これでは物流の担い手であるドライバーの確保は成り立ちませんし、これは、物流というのは、生活、そして経済のまさに動脈、静脈でありますので、その意味でしっかりとこれは確保いただきたいと。
国交省として、まずこのドライバーの賃金水準の現状、これをどう認識しているか、また適正運賃の確保、賃上げのためにどのような取組をされているか、お伺いいたします。
政府参考人(鶴田浩久君) トラック運送事業は、全産業平均に比べまして労働時間が二割長く年間賃金が一割低いなど、労働条件の改善が課題となっております。賃金の引上げの原資となります適正運賃を収受できる環境整備が重要であります。このように認識をしております。
このため、取組といたしましては、標準的運賃の周知啓発、トラック・物流Gメンによる荷主等への監視体制の強化を行うとともに、今月施行されました改正物流法によりまして物流の効率化や多重取引構造の是正に向けた規制を導入するなど、取引環境の適正化に向けた取組を進めております。
また、先月閣議決定されました下請法改正法案も契機に、荷主等に対する一層の価格転嫁と取引適正化、さらには物流そのものの効率化を推進してまいります。
引き続き、関係省庁とも連携をして、実運送事業者が適正運賃を収受できる、そしてドライバーの賃上げにつながるということに向けて全力を尽くしてまいります。
里見隆治君 昨年の法改正に当たって、本委員会で附帯決議がされております。大変重要な項目並んでおりますが、私、特に注目しておりますのは、この附帯決議の六項目めにこうございます。トラック運送事業における多重下請構造の是正を図り、実運送事業者における適正な運賃収受を実現するため、実運送を行わず利用運送を専門に行う第一種貨物利用運送事業者、いわゆる専業水屋についても実態把握し、運転者の運送及び荷役の効率化に向けた責務を担わせるよう検討するなど、規制措置の導入も含め必要な対策を講ずることとあります。
しっかりこれ国交省でも進めていただいておりますけれども、これ検討会も立ち上げていただいていると思います。現在の検討状況、お伺いします。
政府参考人(鶴田浩久君) トラック運送事業における多重取引構造につきましては、実運送事業者における適正運賃収受を妨げて、トラックドライバーの低賃金の一因になっているという御指摘がございます。このため、委員御指摘のとおり、昨年の物流法の改正の際にも附帯決議がされたところでございます。
これを踏まえまして、国土交通省では、昨年八月から多重取引構造の是正に向けた検討会を開催しております。ここにおきましては、昨年、貨物利用運送事業者やトラック運送事業者等を対象に実態調査を行いまして、その結果、多重取引構造は繁忙期だけではなく発生していること、また、その背景要因としては、運送事業者間の力関係、さらには手数料を運賃から差し引くことを当然視する商慣行があるといったことが明らかになりました。
こうした結果を基に今後検討すべき論点としまして、過度な多重取引構造の抑制に向けた規制の検討、また悪質事業者や違法な白ナンバートラック利用に対する取組の強化、さらにオープンかつ公正な運送のマッチングを行う仕組み等の普及促進などが挙げられております。
今後の検討会では、これらの論点について議論を深めていく所存でございます。
里見隆治君 局長が最後にお話し、答弁いただきました重層構造自体の縮減、抑制の規制、そして悪質事業者を退出させる、そして違法な白ナンバートラックの利用について遵法意識を醸成と、非常に重要な論点だと思います。
もちろん、今施行されたばかりの点についてはしっかり施行いただくとともに、これ加速化させなければ本当にこの運送の基盤、社会の基盤が損なわれてしまうと、そうした危機感、私は持っております。その意味では、こうした動きをしっかりと対策を加速化させる意味でも、更なる法的な整備を含め、これは検討する必要があるというふうに思っておりますし、改めて本委員会でもこの論点については議論を深めていく決意でありますので、今後ともよろしくお願いいたします。
最後に、中野大臣にお伺いしたいと思います。
中野大臣は、先月も石破総理始め関係閣僚とトラックドライバー、また事業者の皆さんと車座対話に臨まれたというふうに伺っております。中野大臣のこのトラック事業に関する認識、また今後のこの事業全体を活性化させていく、運賃収入、賃金水準の引上げをしっかりやっていく、その決意をお伺いしたいと思います。
国務大臣(中野洋昌君) お答え申し上げます。
先ほど局長からも、多重取引構造の是正について検討会で議論を進めるといったような様々取組を行っております。しかし、私もいろんな現場の声で、やはり経営環境、トラックドライバーの労働環境、依然として厳しいというふうに感じております。
総理の下での車座でも、ドライバーや事業者の方から、なかなか価格転嫁が引き続き厳しい状況にあるでありますとか、負担軽減に向けて更なる商慣行の是正が更に必要でありますとか、こうしたいろんな現場の声も直接伺ったところであります。
国土交通省として、こうした現場の声を始めとして様々な御意見にしっかりと耳を傾け、また委員の御指摘のような様々な課題にしっかりと向き合い、トラック運送事業における適正な取引環境の実現に向けては更に全力で取り組んでいきたいと、こういう決意でありますので、よろしくお願いいたします。
里見隆治君 大臣の決意のとおりにしっかり実行していただきたいと、また議会、国会においても法的な整備について議論を深めていくと、そのことを申し上げて、終わりとします。
ありがとうございました。