誰もが希望持ち暮らす「新しい認知症観」の普及へ

2025.01.21 07:00(2か月前) ブログ公明党ニュース |里見りゅうじ(里見隆治)

党推進本部など合同会議
(講演要旨)厚生労働省老健局認知症総合戦略企画官 遠坂佳将氏

公明党の認知症施策推進本部(本部長=里見隆治参院議員)と地方議会局(局長=中川康洋衆院議員)は先月25日、東京都新宿区の党本部と各地をオンラインでつないだ合同会議を開催。厚生労働省老健局・認知症総合戦略企画官の遠坂佳将氏から地方自治体が取り組む認知症施策推進計画の策定のポイントなどを聴きました。講演要旨を紹介します。

■高齢者 「3人に1人」時代に

2022年の調査によると、認知症の有病率は65歳以上の高齢者で推計12・3%。85歳以上になると急激に上昇し、約40~50%の方が認知症になるという状況だ。認知症予備群の軽度認知障害(MCI)も年齢とともに上昇している。今後ますます認知症の方、MCIの方は増え、高齢者の3人に1人が認知症かMCIという時代になる。誰しもが認知症になり得る時代が、もうそこまで来ている。

こうした中で、超党派の議員の皆さんが認知症基本法の制定に乗り出し、23年に同法が全会一致で成立した。

基本法では、認知症の方を含めた国民一人一人が共に支え合いながら共生する社会の実現をめざすとうたっている。国・地方自治体は、認知症施策に関する計画を策定することになった。これを受けて、国は先月3日に基本計画を閣議決定した。地方自治体の計画策定は努力義務となっている。

■施策拡充へ自治体でも計画を

国の基本計画のポイントは、共生社会の実現をめざす上で「新しい認知症観」を打ち出している点だ。誰もが認知症になり、認知症の方の家族になり得る時代だ。認知症を「自分事」として考える必要がある。「新しい認知症観」では、認知症になってもできることがあり、希望を持って自分らしく暮らし続けられるという考えを示した。

認知症施策は、新しい認知症観に立って多様な主体と連携しながら進めることが重要になる。この点、国の計画では、認知症に関する理解の増進や社会参加の機会確保など、施策を12分野に整理した。

地方自治体については、都道府県と市区町村で「認知症施策推進計画」を策定する。策定は努力義務ではあるが、できるだけ策定してもらい、地方自治体の実情に応じた取り組みを進めてほしい。計画の形式は(他の福祉計画と連動して良いなど)柔軟な形で良いとしている。ぜひ前向きに取り組んでいただきたい。

■本人参画、住民の理解など重要

計画を作る上で最も重要かつハードルが高いのは、認知症の方とその家族らに参画してもらい、意見を聴き、対話しながら共に認知症施策の立案に当たる部分だと思う。実際、「認知症の方にどうやって出会えばいいのか」との声が自治体からも聞こえてくる。

この点、自治体職員が認知症の方の集う認知症カフェなどを訪れ、対話してほしい。実際に認知症の方たちと接するとイメージが変わる。私自身も近所の認知症カフェに行き、当事者の話を聴いた。

その上で、自治体で関係機関との連携や相談業務を担う「認知症地域支援推進員」らが中心になって、認知症の方の活動を支援しながら、当事者が認知症と診断されて間もない人の相談に乗る「ピアサポート活動」や、認知症の方同士で体験や思いを共有する「本人ミーティング」に取り組みを発展させていただきたい。

ピアサポート活動や本人ミーティングの場は、まだ全国的には広まっていない。計画を機に取り組みを広げたいと考えている。

また、認知症の方と家族への一体的な支援事業も進めてほしい。この事業は、本人ミーティングの拡張版のようなもので、本人ミーティングの裏で同時並行で家族のミーティングを開催する。その後、本人と家族が混ざり合ってミーティングを行うものだ。

一方、当事者以外の住民の理解の増進については、認知症サポーターを広めることが重要だ。学校教育において認知症に関する知識、認知症の方に対する理解を深めていくことも進めなくてはならない。

このほか、さまざまな業種や企業の協力を得ながら認知症のバリアフリーで連携することや、認知症の本人の活動の場をはじめ、若年性認知症の方の就労の場や社会参加の活動の場を拡大、創出することも進めてもらいたい。

医療・介護との連携は、診断後の支援が非常に重要になってくる。こうした取り組みができる地域の受け皿をつくってほしい。

■(東京・町田市の通所施設)民間企業と連携を進め社会活動メニュー用意

認知症の方の社会参加活動で有名な事例として、東京都町田市に「DAYS BLG!」という事業者の取り組みがある。

ここは、認知症デイサービスの事業所だが、例えば、洗車サービスや学童保育での読み聞かせを行っている。また、利用者が社会参加できるさまざまな活動メニューを用意し、利用者は朝行った時にどのような活動に参加するかを選び、午後に実際、活動に繰り出している。このような事例を広めていくには、民間企業と介護事業所の連携が非常に重要となる。今回の計画策定を機に、こうした取り組みを広げていきたい。

誰もが希望持ち暮らす「新しい認知症観」の普及へ/党推進本部など合同会議/(講演要旨)厚生労働省老健局認知症総合戦略企画官 遠坂佳将氏

公明党ニュースより

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