参議院経済産業委員会で産業競争力強化法について質疑

2024.05.30 22:00(5か月前) ブログ国会質疑 |里見りゅうじ(里見隆治)

議事録

里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
 先週に続きまして、産競法につきまして、改正法案につきまして御質問させていただきます。先週、イノベーション拠点税制の質問の途中で終わりましたので、その続きから始めたいと思います。地元でも、この知財に詳しい弁理士の先生から様々意見を伺ってまいりましたので、その点も含めて御質問していきたいと思います。
 今日午前中も質疑がありましたけれども、どちらかというと、青山先生からサプライサイド側の支援が多いと、この受け手の方がどうなのかと。それ、マクロ的にもそうなんですが、例えば知財そのものも、知財を渡す側の方の支援ということで今回のイノベーション拠点税制があろうかと思いますが、これを生み出された知的財産のライセンス、また取得によってそれを活用する側に対する支援策というものも併せ持ってこの知財の回転というものがうまく回っていくんじゃないかと、そんな御指摘でございました。
 また、この活用という意味では、やはりこれも何度か論点で出ていますように、その活用に当たっての人材が必要であるということでありまして、その意味では、企業だけではなくて、大学ですとか研究機関、又は中小、スタートアップなど、技術移転、ライセンス交渉等の知見が不足しているという方々もいらっしゃるんじゃないかという声を伺っています。
 今回、このイノベーション拠点税制を創設しますが、他者の知財を活用することを含めて、企業が積極的に知財の活用を行うための取組を進めてはどうかという考えでありますが、経産省としての御見解をお伺いいたします。

政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
 まず、繰り返しでございますけれども、イノベーション拠点税制は、民間における無形資産投資を促進するために、国内で生み出された知的財産権から生じる所得を優遇することで知財を生み出す側にインセンティブを与えるものであります。これは委員御指摘のとおりでございます。これに加えまして、委員御指摘のとおり、ライセンス等の受け手となり、これを積極的に活用することを後押しすることも重要だと我々考えております。
 経産省では、これまで、オープンイノベーションの促進に向けまして、中小企業等の知的財産権を使用して行う研究開発の場合、そのライセンスの受け手が支払った使用料について、研究開発税制による税制上の優遇を与えているところでございます。
 また、今般、INPIT法改正によりまして、中小企業等への助言や助成事業が追加される予定でございます。これにより、中小企業等が他者からライセンスを受けて、知財を活用して事業成長を図る場合にも、専門家からの助言等の支援を受けることが可能になります。
 経済産業省として、イノベーションの活性化には知的財産権の創出と活用の両面が不可欠であり、イノベーション拠点税制や研究開発税制を含め、関係する施策を機動的に活用しながら、委員御指摘の知財の活用についても着実に後押ししていきたいと考えております。

里見隆治君 今、INPITについても御答弁の中で触れていただきました。私も余り、日本語で言うと、正式名称、独立行政法人工業所有権情報・研修館ということでありまして、私も今回、法律改正を機にいろいろ勉強させていただきまして、これ、INPITというのは、これ青山先生じゃないですけど、頭文字を取ると、ナショナル・センター・フォー・インダストリアル・プロパティー・インフォメーション・アンド・トレーニングと、で、INPITというそうでありますが、これ、いただいた資料によりますと、一八八七年、明治二十年に農商務省特許局庶務部に図書館を設置して情報提供を始めたのがスタートという非常に歴史を持った組織、これがしっかり今も最先端の技術を担っていただいていると、日本が明治以来、技術そして知財を持って生きてきたそのあかしではないかなというふうに思います。
 そして、今回の産競法等の改正の中にもこのINPIT法の改正が含まれ、今御答弁いただいたように、中堅企業また中小・スタートアップ企業に対する相談、助言をその業務の範囲に加えられたということであります。
 実際、この法案の対象となるようなスタートアップ企業では、まだまだこの人数、規模も小さいということがあって、知財部門の人材がそろっていないということが指摘されています。じゃ、昔ながらの企業、中小企業、中堅企業はどうかというと、これ営々と続けてきた企業も、昭和、平成初期からずっと三十年、四十年というところは、確かにベテランさんがずっと一人で担っていただいていると。しかしながら、そのもう、一人が六十代だったり七十前後だったり、そういう人が引退した場合に次の人材がどうなるんだろうかと、実はそういう中小の企業も多いそうでありまして、そういう意味では、スタートアップでも、あるいはこの代替わりがうまくできないそうした中小・小規模事業者においても、この知財という、この人材育成というのがいずれにおいても非常に課題になっていると、検討課題になっているということであります。
 その意味で、このスタートアップ、中小企業等における知財人材の育成を進めていくとともに、INPITそのものの相談、助言業務、これも今回せっかく法律で位置付けられるわけですから、しっかり拡充して活用を図っていくということが重要だと思いますけれども、経産省としての御認識をお伺いします。

政府参考人(滝澤豪君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、スタートアップや中小企業等における知財人材の育成は極めて重要な課題だというふうに考えてございます。
 このため、特許庁におきましては、INPITとともに、知的財産に関するe―ラーニング教材として年間十八万人の方に御利用いただいておりますIPePlatの提供でございますとか、様々なイベント、ワークショップの開催等を通じまして、知財人材の育成に向けた取組を進めているところでございます。
 また、知財を活用した企業の稼ぐ力の向上には、内部人材のみならず、外部の知財専門家による支援も重要でございまして、本法案におきまして、INPITが外部専門家と協力しながら助言を行う等の規定を追加をしたところでございます。
 特許庁といたしましては、こうした支援策を活用していただけるよう、しっかりと周知徹底を図りつつ、関係機関と連携しながら、知財人材の育成やスタートアップ、中小企業等の稼ぐ力の向上に取り組んでまいります。

里見隆治君 よろしくお願いいたします。
 続いて、前回も触れたんですが、経済産業委員会、なかなかこれ、理事の皆さんとだけでしたので、全員ではないんですが、二月に、大阪そして名古屋にも皆さんにお越しをいただいて、その際の視察先の一つに名古屋市内のなごのキャンパスというところがございまして、もう既に委員長からも、委員会、今国会の委員会での御報告の中でもしっかり御報告いただいているわけですが、その中にありましたとおり、スタートアップ企業、このなごのキャンパスは、スタートアップ企業へのコワーキングスペースの確保、あるいはスタートアップと協業したい大企業とのマッチングなどのサポート、そして起業家育成のための教育の現場ということで、非常に名古屋もスタートアップ企業、急成長しているというお話を伺ってまいりました。
 午前中は福岡の事例の紹介がありましたので、対抗して愛知のお話をするわけではないんですが、愛知は非常にこの大企業また製造業、物づくりの背景、文化がある中で、いかにやっぱりスタートアップ、これを慫慂、奨励していくかということは非常に熱心でありまして、今までもやってきているんですが、福岡県は十年前からということで先ほどお話を伺いました。愛知県庁も、今までのものをリプレースしてSTATION Aiという、これは愛知県の大村知事の肝煎りで、この十月にほとんど新規に近い形でのオープンをいたしまして、自動車産業から、物づくり、航空産業から、その種となる研究開発をしていく、その、何というんですかね、一大拠点として地域でも期待をされているところでございまして、国からも後押しを是非お願いしたいと思います。
 今日はちょっとそれと外れて、これは紹介だけなんですが、資金調達面で、このなごのキャンパスは、特にそのお金付近は、回りはお手伝いしていただいていない、おつなぎはいただけるんでしょうけれども。
 じゃ、資金調達面でどんな組織があるのかということでいろいろ私も当たってみましたところ、中小企業投資育成株式会社というところにぶつかりました。これはスタートアップ支援ということだけではないんですが、経産省にもお問合せをして、地元の名古屋中小企業投資育成株式会社というところを先月訪問してまいりました。
 これ実は、株式会社と名のっておりますけれども、法律、中小企業投資育成株式会社法という法律に基づく会社でありまして、今回の、ちょっと私も言われるまで分からなかったんですが、この法律の中にも、実はこの一部改正によって特例措置、この法律の、この投資育成株式会社法の特例措置が今回の改正法案にも盛り込まれております。
 私も全く今まで存じ上げなかったものですから、いろいろお話を聞いたところ、この法律に基づいての組織が東京と名古屋と大阪の三か所にあるということでありまして、この法律そのものが、これもやはり歴史物で、もう六十年以上前、六十一年前、昭和三十八年に法律が制定され、営々とこの投資という側面において中小企業の育成支援に当たってきたということであります。
 地元の自治体とか商工会議所、金融機関などが出資をして、そして、国、中小企業が監督をしているということで、公的な機関として、利用される方も安心して活用できるということでありまして、これは、お話を伺いまして、もっともっと広く知っていただき、また使っていただければというふうに感じた次第であります。
 まず経産省にお伺いしますけれども、この投資育成株式会社につきまして、その概要、またこれまでの投資実績についてお伺いしたいと思います。

政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
 委員からも御紹介を頂戴いたしましたが、中小企業投資育成株式会社は、中小企業の自己資本の充実を促進し、その成長、発展を図るため、中小企業投資育成株式会社法に基づいて、一九六三年に設立された国の政策実施機関でございます。
 中小企業等の経営の自主性を尊重しつつ、長期にわたって中小企業等の株式への投資を行うとともに、投資先ネットワーク等を生かし、中立的な立場で企業の成長支援を行い、中小企業等の財務体質の強化や経営承継の円滑化、経営の更なる発展などに貢献してきているものと認識しております。
 実績につきましては、令和六年三月までに、東京、名古屋、大阪の投資育成三社の累計で、五千九百社を超える会社様宛てに二千七百億円を超えるエクイティーの供給を行ってきているところでございます。

里見隆治君 もっと更に数を増やしてほしいなと思うんですが、今回、この法案全体の中で、産競法改正の中では、中堅企業の定義をし、そして特定中堅企業者が大臣認定を受けた場合の支援措置を拡充するというこの考え方と並行して、この中小企業投資育成株式会社の投資育成対象も拡充するというのが今回の改正の趣旨だというふうに承知をしております。
 これを機に、中堅企業からスタートアップに至るまで、その投資、これもしっかりやっていただくとともに、これ、名前のとおり、投資育成株式会社ですから、育成という側面、例えばマッチングをするだとか、様々な情報提供をする、また様々な別の機関への御紹介ということもあろうかと思いますが、その育成についても是非機能強化をして、積極的な業務展開をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
 中小企業投資育成株式会社法上、投資育成の初回の投資先は、資本金三億円以下の中小企業に限られております。今回の改正案におきましては、投資育成からの出資につきまして、資本金が三億円を超える事業者であっても、特別事業再編計画の認定を受けた事業者であれば、MアンドA等に必要な資金を供給可能とする特例を設けさせていただくこととしております。これは、連続的なMアンドAを実施していく場合、中堅・中小企業はMアンドA資金やその後の成長のために必要となる資金の借入れ余力が小さく、資金面での支援が必要であるということを想定したものでございます。
 また、投資育成による育成支援についても御指摘がございました。投資育成株式会社、失礼しました、投資育成会社法に基づき、投資先からの依頼に応じて必要な経営面や技術面の指導を行うこととしておりまして、具体的には、投資先企業の個々の経営課題に対する専門家等とも連携した伴走支援や、投資先企業同士の連携や共通の経営課題への対処を目的とした研修等を積極的に実施しておりまして、好評をいただいているところでございます。
 中小企業の更なる成長を図るため、投資育成の育成機能は極めて重要であると考えておりまして、中小企業庁としても、投資育成株式会社三社に対しまして、こうした取組をより一層積極的に実施していくことを促してまいる所存でございます。

里見隆治君 よろしくお願いします。
 この投資育成株式会社の御担当とも様々話を伺う中で、今回、どちらかというとMアンドAを推しているわけですけれども、実際のいろんな中小企業からの御相談事で多いのは、やはり事業承継という一方の課題であります。
 これも、もう近年ずっと言われてきました、なかなか承継する人がいないという中で、昔ながらのこの同族企業、まあ、昔ながらというわけではないですけれども、同族企業の中で跡取りがいないという場合に同族でない非同族への承継が増える傾向にあるという中で、この投資育成会社からの投資という案件が非常にこの相談としては件数が上がってきているということでありました。
 このMアンドAはもちろん今回の法改正で拍車を掛けつつも、加速化させつつも、是非こうした事業承継等の他の業務についても目配りをお願いしたいというふうに思います。
 先ほど、MアンドAの様々なトラブル、この環境整備ということで、これも午前中審議がありましたので、私も同趣旨の質問しようと思いましたが、その答弁は今回結構でございますが、これ、その文脈で大臣からは、このMアンドAの様々なトラブルの中で幾つもの要因がある中の一つに、この元の、吸収される、合併される側の企業の元の事業者の経営者に関する経営者の経営者保証ですね、個人保証の問題、これについても触れられておりました。
 これ、MアンドAのときもそうですけれども、とかくこの事業を承継する、あるいは思い切った事業展開をすると、いかようにしてもこの事業を何らかの形で形を変えていくというときに、これも非常にこの問題意識はずっとお持ちいただいていると思いますけれども、この経営者個人の保証というものが非常にネックになっているのではないかと。これ、経産省も、この個人保証がなるべくなくても済むようにということで様々なルール化、またガイドラインというものも作っていただいてきたと思いますが、それが、事業承継にしても、またMアンドAにしても、円滑にこの事業形態を進め、そして、日本の社会全体の経済効率、生産性を上げていくということにもつながっていくのではないかというふうに思います。
 この個人保証の問題について、経済産業省のお取組、また御認識についてお伺いいたします。

政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
 経営者保証は、思い切った事業展開の抑制や、円滑な事業承継や早期の事業再生の阻害といったマイナス面も指摘されているところでございます。
 政府としては、関係省庁とともに二〇二二年に経営者保証改革プログラムを策定いたしまして、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて対立を、失礼しました、対応を進めてきております。
 例えば、政府系金融機関の経営者保証に依存しない新規融資の割合でございますけれども、二〇二〇年度は三八%でございましたが、二〇二三年度上期には六一%まで増加してきているところでございます。
 他方で、信用保証付融資の経営者保証に依存しない新規融資の割合でございますけれども、二〇二〇年度三一%から二〇二三年度上期には三二%と、残念ながら横ばいで推移しております。
 このことを踏まえまして、信用保証制度でも経営者保証改革を後押しするべく、本年三月に、保証料上乗せにより経営者保証の提供を不要とする信用保証制度を開始いたしております。制度開始から二か月余りたっておりますけれども、これまでに千百十七件、約二百四億円の保証を承諾しているところでございます。
 また、MアンドAに係る経営者保証の問題につきましては、先ほど来御審議のありましたとおりでございまして、しっかり中小M&Aガイドラインにおきまして適切な対応を講じてまいりたいと存じます。
 引き続き、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けまして、本制度の活用、この経営者保証を要しない信用保証制度の活用を促すなどして、適切に対応を進めてまいる所存でございます。

里見隆治君 先ほどのINPITにしましても、またこの投資育成株式会社にしましても、中小企業の皆さんに寄り添って、是非この支援を進めていく、それが日本経済の競争力の強化につながっていくというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

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