参議院経済産業委員会で産業競争力強化法について質疑

2024.05.23 22:00(5か月前) ブログ国会質疑 |里見りゅうじ(里見隆治)

議事録

里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案についてお伺いをいたします。
 まず、前提となります産業政策の政府の関わり方、基本的スタンスについて、冒頭、齋藤大臣にお伺いをしたいと思います。
 今回の法改正につながりましたのは、その背景として、経済産業省の産業構造審議会の経済産業政策新機軸部会の議論がございました。私も政務官のときに何度か委員、また有識者の皆様から貴重な御意見をいただき、まさに最先端、新機軸の議論を頂戴してきたところでございます。この部会におきまして一昨年の六月に中間報告を取りまとめられ、それが今回の法律の原型になっているというふうに承知をしております。
 この中間報告、中間整理に、私注目をしております。今回のまさに何が新機軸なのかというその考え方が述べられておりまして、ここで、ちょっと長くなるんですけれども、引用させていただきたいと思います。
 不確実性が高まる中で、過去の構造改革アプローチでは、民間による成長投資が進まなかった点に鑑み、中長期の社会経済課題の解決を目的とした産業政策、括弧してミッション志向の産業政策、政府が積極的に市場創造に関わり、リスクを負い、ここは括弧して起業型国家とありまして、そして、政府による大規模、長期、計画的な支援により民間投資を呼び込む、ここも括弧してクラウドインとありまして、こうしたアプローチで経済産業政策を見直したというふうに考え方が述べられております。
 私なりに言い換えますと、従来の、政府の失敗を懸念して市場機能を重視してきたというそれまでの構造改革路線を転換をして新機軸として打ち出したのは、その裏側として、不確実性への対応に政府の不作為を懸念して政府が市場創造する、政府がリスクを負い投資する起業家国家というふうに受け止めております。何というんですかね、教科書的にといいますか、経済学的にいろいろ勉強しますと、まさに産業政策というのは、この市場と政府のこの間をどう取っていくのかということで、このバランスをどう取るのかということが重要だと思います。
 そういう意味で、この近年の様々な産業政策ということを考えますと、この中庸、バランスを取っていくというよりも、最近、近年、お隣の三浦信祐さんも経済安全保障ということで党内で非常に引っ張っていただいている方なんですけれども、この経済安全保障という概念、あるいは政策も進み、また今回の新機軸というような政府の役割に非常にこの重きを置く、そうした傾向が出ているんじゃないかなと。これは日本だけではなくて、まさに国際社会全体の潮流の中で、私たち、政府の産業政策もその方向性を変えてきていると、そういうことだと思います。
 そういう意味で、これはまだ何か一時的にこの瞬間ということではなくて、何十年単位の中での潮流だと思います。私なりにこれは、先ほど中庸とかバランスというふうに言いましたけれども、これ別にどっちを取るというものではありませんということだと思います。むしろ、どちらも取ると、両立をしていくという意味合いであろうかと思いますけれども、こうした基本的なスタンスについて、大臣の御認識を伺いたいと思います。

国務大臣(齋藤健君) 産業政策につきましては、当然ながら、政府が講じる政策だけではなくて、市場機能の活用ということでいえば、双方重要だろうと認識しています。
 過去の日本を振り返りますと、一九八〇年代までは伝統的な産業政策、言わば官主導とも言われる政策を展開をしてきておりまして、一方で、一九九〇年代以降は民間主導という考え方の下で市場を重視し、政府としては規制緩和などの市場環境整備策を中心とした政策を進めてきたものの、結果的には政府として新たな価値創造に向けた取組が不十分となってしまったという面があったんだろうと思います。結果として、企業は足下の利益の確保のために賃金や成長の源泉である国内投資を抑制をしてきました。つまり、民間企業、すなわち市場機能だけでは、必ずしも期待していたほどには経済成長できなかったという認識であります。
 こうした反省と世界的なマクロ環境変化を踏まえて、経済産業政策の新機軸と称して、産業政策を強化する姿勢に転換をしてきているわけであります。具体的には、政府は、民間市場だけでは進みにくい社会課題の解決に向けて、大規模、長期、計画的に、予算、税制だけでなく、規制・制度改革といった民間市場を活性化させる取組も含めまして、あらゆる政策を総動員していこうとするものであります。
 一番分かりやすいのはGXだと思うんですけれども、経済合理性だけ考えれば、なかなか民間企業はその高コストのものを取り組もうとしないわけでありますが、政府が方向性を示し、助成をし、長期的にコミットすることによって、それに乗っかっていこうという機運が出てくるわけでありますので、社会課題解決に向けてというのはそういう趣旨なんだろうと思います。
 こうした取組は、市場を軽視しているということではなくて、むしろ政府の取組を呼び水に、民間の予見可能性を高めて、リスクを取って挑戦する企業の取組を生み出していこうということを目的としているわけであります。市場を通じて企業がより成長できるように、政府も一歩前に出て積極的に取り組んでいきたいというふうに考えています。

里見隆治君 大臣、ありがとうございます。
 まさに市場もしっかりと重視しつつ、むしろ政府がしっかりとリスクを取りながら前に出て、そして民間も引っ張り、まあ、引っ張るというよりも官民協調して国際社会に伍していくと、そういう意味で、今回重要な法律案であるというふうに受け止めております。
 もう一点、大臣にお伺いしたいんですけれども、この国内の政策と併せて、国際的な視野の中で海外との関係性というふうに見ますと、例えば、アメリカではインフレ削減法、CHIPS法、また欧州ではグリーンディール産業計画など、戦略分野の国内投資を強力に推進する世界的な産業競争政策が活発する中で、日本も世界に伍して競争できる投資促進策が必要だと、これはもう今回も何回も御答弁いただいているとおりでありますが、それに、国益にかなっていると、そういうふうに理解をしております。ただ、これあえて申し上げますと、各国がそれぞれの国益、自分のためだけの利益に走ると社会、国際社会全体としてどうなるのかと、そのこともよく考えておかなければなりません。
 自由で公正な貿易秩序という観点でいいますと、その前提となるWTO協定等の国際ルールとの整合ということにも留意する必要があると思います。そもそもWTOには様々な、現時点でも、これだけでなかなか国際的なルールがお約束事として成立しないと、運営できていないという課題もありますけれども、理念的には非常に正しい方向性を目指していると思います。
 そうした中で、WTOの補助金協定については留意しておく必要があるんではないかというふうに思います。このWTO協定によりますと、補助金、これ、読み方によって減税措置も含まれるということでありますが、結局これが、この補助金が自由競争を歪曲をし、また輸出先の国内産業に損害を与えるなどということになりますと、先方、輸出先から相殺関税を賦課してもいいですよというのがこれはルールですし、もっとひどい状況になれば提訴されたりといったリスクも考えられます。
 このリスクというものも国内政策として考えなければなりませんし、また、国内だけではなくて、この国際ルールをいかに構築していくかということを考えますと、それぞれの主要国がそれぞれの力に応じて過度に補助をするというようなことの、その競争になってしまっては国際経済に非常に大きな影響が、ネガティブな影響が出てしまうのではないかというふうに思います。
 この点、齋藤大臣の御認識、お考えを伺えればと思います。

国務大臣(齋藤健君) 補助金は、正当な公共政策目的を達成するためのツールとなるわけでありますが、一方で、貿易歪曲的なものともなり得るということでありますので、WTOでは、補助金について一定の規律を設けているわけであります。例えば、輸入品よりも国産品を優先して使用することを条件とする補助金、こういったものは禁止をされていますし、また、補助金を受けた産品の輸入によって輸入国の産業に損害が生じた場合は、輸入国は一定の手続の上で補助金額の範囲内で関税を引き上げるということを認められているわけであります。
 日本におきましては、様々な産業政策に関する制度を設計をする際にはこのWTO整合性にも十分に配慮してきておりまして、日本の投資促進のための補助金につきましても、国際ルール上問題ないものとなっていると考えています。例えば、今回の産業競争力強化法改正で追加された税制上の優遇措置や日本の半導体補助金についてもWTO協定で禁止されている補助金には該当せず、WTO整合的と認識をしています。
 また、御指摘のように、他国の市場歪曲的な補助金に対応すべく、日本としても、G7、OECD、WTOなどにおいて問題提起を重ねてきているところであります。例えば、昨年のG7貿易大臣会合では、市場歪曲的な補助金等への対応につきまして、ツールやルールの活用強化を進めることを確認をさせていただきました。引き続き、有志国間の連携強化とより幅広い国への問題意識喚起、こういったものに取り組んでいきたいと考えています。

里見隆治君 大臣、ありがとうございます。
 こうした基本的な認識に立って、あと政府参考人の皆さんに各論について質問していきたいと思います。
 まず、戦略分野国内生産促進税制についてお伺いしたいと思います。何度か論点出ておりますので、重なるところもあるかもしれませんが、御容赦ください。
 この税制の対象となる、法律上は産業競争力基盤化商品ということで新たに定義がなされております。具体的には、エネルギーの利用による環境への負荷の低減に特に資する半導体ですとか、あるいは、電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAFなどを対象としているということで、今後、これは法律上で詳細には決まっておりませんで、今後は政省令で定めるということになっています。
 この対象となる商品の考え方をお伺いしたいと思いますが、あわせて、これ当初、蓄電池も入るんじゃないかというようなお話も聞いておりましたが、こちらは対象とならないということ、これは先ほど答弁がありまして、予算措置を昨年度、補正措置をされているということでありますが、こうしてこの予算で措置するもの、また今回の税制で措置するもの、この辺のこの目的とまたその政策手法ですね、これについての関連について、考え方を整理して御答弁をいただければと思います。

政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
 本税制の対象分野につきましては、欧米を始め各国がGX、DX等の戦略分野における投資促進策を次々と打ち出してきている中、我が国においても、戦略分野の中でも特に生産段階でのコストが高い等の理由から投資判断が難しい分野について、新たに国内投資を強力に推進する観点から選定をしております。
 他方で、投資促進策には様々な手法があります。分野ごとの特徴や既存の制度なども踏まえて効果的に講じていくことが重要であるというふうに考えておりまして、委員御指摘の蓄電池につきましては、本税制により対象になっております電気自動車製造の国内投資が進むことでプラスの効果があることに加えまして、蓄電池については、主に初期投資の大きさが課題であるということを踏まえまして、生産向上の初期投資に対する補助金として、令和五年度補正で二千六百五十八億円、令和六年度当初予算で二千三百億円の措置をしているところでございます。こうした投資促進策を講じながら、蓄電池分野における国内投資の拡大にも取り組んでいきたいと考えております。

里見隆治君 初期に費用が掛かるのか、生産過程での費用についてのリスクをしっかりと政府で抑えていくのかという違いだというふうに理解をいたしました。
 この戦略分野国内生産促進税制、その効果は、直接的には最終生産者たる大企業が主に想定されますが、その恩恵を被るものだと考えます。しかし、それでは、サプライチェーン全体を日本に根付かせていくという意味では不十分でありまして、このサプライチェーン全体をこの税制措置によって受けられた恩恵を広く均てんしていくと、広げていくと、そうしたことが重要であろうかと思います。そして、これ午前中も審議にありましたように、この中小・中堅企業を含めて、また地方を含めて広く波及させていくと、そのことがそのサプライチェーン上の事業者のみならず、さらにはこの事業者に連なっている、雇われている労働者の皆さん、またお取引先、そこにいかに波及をさせていくかと、こうした視点が大事だと思います。
 したがって、このスタート地点の税制優遇ということだけではなくて、広く事業者また取引先、そして雇用者にどのように広げていくのかと、そうした方策についてお伺いしたいと思います。

政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
 まず、本税制の対象分野であります電気自動車、グリーンスチール、半導体などは、いずれも広範なサプライチェーンを構成する産業によって造られた製品でございます。本税制を通じて、こうした分野における国内投資を実施し、生産、販売を拡大することによりまして、地域の中堅・中小企業を含め、部素材等の発注や供給の拡大、確保、さらには雇用、所得への好影響など、幅広く経済波及効果が生じるんではないかというふうに考えております。
 本税制と併せまして、例えば電気自動車の構成部品であります、先ほどお答え申し上げました蓄電池であるとか、あるいは半導体の製造装置、部素材については、昨年度の補正予算や今年度の当初予算におきまして、初期投資支援に必要な予算措置を盛り込んでいるところであります。こうした措置は、本税制の効果を、中小を含めたサプライチェーン全体あるいは地域に、より広く波及するものと考えております。
 加えて、本税制のみならず、中小企業向けの賃上げ促進税制や徹底した価格転嫁対策、さらには革新的な製品、サービスの開発、IT導入や人手不足に対応した省力化投資の支援なども取り組むことによりまして、サプライ上の企業のみならず、その他の企業を含めまして競争力強化につなげていきたいというふうに考えてございます。

里見隆治君 次に、イノベーション拠点税制についてお伺いをしたいと思います。
 我が国は、これまでも、イノベーションを生み出す事業環境の整備を進めていただいておりますが、先日、我が党公明党の会合で経済産業省から提示をいただきました資料、これは、済みません、今日ちょっと配付はできていないんですが、産業技術環境分科会イノベーション小委員会の資料を拝見いたしまして、これに、国単位の研究開発費については、他の主要先進国が増加しているけれども日本は横ばいであると、さっき類似の資料は配付をいただいておりまして、また、企業単位で研究開発費の売上高に対する割合、これも他国は増加しているものの日本は横ばいという数字でありまして、これは非常に危機感を感じました。
 これまで、研究開発税制ということで長年にわたり拡充、拡充を繰り返してき、私としては民間の研究開発を後押ししてきたんだというつもりでいたわけですけれども、それがこの結果だというところに大変残念な思い、また危うさも感じたところであります。その会合の場で経済産業省の幹部に、いや、ここまで研究開発税制後押ししてきたじゃないかと、そういうふうに質問しましたら、逆に、ここまでやったと言うけれども、ここまでしかしていませんと、結局、主要先進国に比べてはまだまだ足りないんですという御回答でありました。そうした中で、今回の税制措置を含めての産業競争力強化という話が出てきたんだと思います。
 そういった意味で、この今までの研究開発税制等で後押しをしてきたという中で、今回イノベーション拠点税制を創設することとなる、その趣旨、意義、背景について、改めて御説明をいただきたいと思います。

政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおりでございますが、我が国では、これまで民間企業によるイノベーションの促進に向けて研究開発税制を措置してきたところであります。具体的には、研究開発投資を増やした企業を優遇する仕組みであるとか、あるいは自前主義に陥らず、オープンイノベーションを促す仕組みなど、研究開発投資、すなわち研究開発に係るインプットの量と質を高めるという措置を講じてきました。
 一方で、産業競争力の強化や社会課題の解決に向けてイノベーションが重視されている中で、イギリスなど諸外国においては、従来の研究開発投資税制に加えまして、研究開発によって生じた知財由来の収益、すなわち研究開発によるアウトプットを継続的に減税する措置、つまり、今回のイノベーション拠点税制のような制度を導入することで、国内での研究開発活動を強力に後押しするための事業環境整備をしてきているところでございます。
 近年、国内企業の海外での研究開発費は増加傾向にございまして、企業買収などを通じて海外に研究開発拠点を設ける事例も増えるなど、我が国企業の研究開発活動のグローバル化が進展しており、イノベーション拠点税制の有無を含めた事業環境が研究開発拠点の立地の判断に影響する状況になっております。
 こうした背景を踏まえまして、従来の研究開発税制に加えてイノベーション拠点税制を導入することで、我が国の研究開発拠点としての立地競争力を強化し、研究開発の海外への流出を防ぐとともに、企業が国内で投資を行うインセンティブを強化するということで考えております。

里見隆治君 今までの研究開発税制の中での今回のイノベーション拠点税制の位置付けということでお話をいただきましたが、ただ、このイノベーション拠点税制、いろいろ御説明をいただいておりますと、既に二〇一〇年以前には、フランス、ベルギー、オランダなどヨーロッパで導入が始まり、アジアでも中国が始めていたようでございます。二〇一五年にOECDでルールを策定したその前後から、それ以降で、アジアの韓国、インド、シンガポールなどで広がってきたということであります。
 そうした意味では、ちょっと時間的にタイムラグが生じています。この優遇措置を目当てに、経済合理性から海外に、先ほども海外への拠点移転という話も出ておりましたが、海外に開発拠点を展開する企業も増加してしまったという事実も否定できません。
 なぜこの日本で導入に時間が掛かってしまったのか、その理由についても御説明をお願いしたいと思います。

政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、欧州を中心に二〇〇〇年代からイノベーション拠点税制のような制度の導入が図られてきました。当初、税制の対象の知的財産権に特段の制約がなかったことなどもありまして、多国籍企業が制度導入国に知的財産権を移転することに伴いまして税収も国際的に移転されるといった性質に留意すべきであるという議論がOECDでございまして、これもまた委員御指摘のとおりでございますが、二〇一五年に国際的なOECDでのルールが整備されたところであります。
 我が国としては、国際的なルールを踏まえまして、既にイノベーション拠点税制を導入していた国や、あるいは新たに導入しようとしている国の動向、さらには国際ルールと整合する制度の詳細、さらに、研究開発税制と併せて措置する必要性や研究開発税制に与える影響等も含めまして、慎重に検討する必要があったところでございます。こうした中で、OECDによる国際的なルールの整備を受けまして欧州では制度の見直しが進んだほか、委員御指摘のとおり、近年ではアジア諸国でも導入が進んでおります。
 また、繰り返しではございますけれども、我が国企業の研究開発活動のグローバル化に伴いまして、こうした税制があるかないかということによってその研究開発拠点の立地の判断にも影響するというようなことで、この本税制の導入に対する必要性が一層高まってきたということであります。加えて、これまた委員からの御指摘のとおりなんですが、研究開発費を大幅に増加させている国がある一方で、我が国国内の研究開発投資はここ十五年間で横ばいで推移しておりまして、日本として将来の飯の種を生み出す研究開発投資の現状に危機意識を持っていたということ、持つに至ったということでございます。
 こうした状況とか、あるいはこういったその機運の高まりなどを踏まえまして、この度、我が国として初めての制度となるイノベーション拠点税制を措置したということでございます。

里見隆治君 ありがとうございます。
 先ほど、慎重に検討されてきたと、この点、私、今回の拠点税制導入がどうだったかという検証はできませんけれども、これ、ほかのいろんな行政分野も、満を持して完璧な、完成したものをつくるというのは日本人得意ですけれども、ちょっと完璧性を求め過ぎてどうしても後追いになってしまうという、そのタイムラグで損をしてしまうということも多いと思います。
 ほかの条約等でも、これ批准をする、例えばいろんな、これは党派を超えてこの条約は批准するべきだとなっても、慎重に慎重を重ねて、国内法制が整っていませんと。ところが、国内法制が整っていないと思われる他国が、余り言い過ぎると問題ですけれども、もう既に何年も前に批准をしていたなどということも多分にありまして、そうした、何というんでしょうか、もちろん慎重を期すことは重要ですけれども、このタイミング、時期ということもしっかり考えていかなければならないというふうに思います。
 じゃ、次に、この拠点税制に関連して、ちょっと地元でお伺いをしてきたことをここで共有し、また政府に確認をしておきたいと思います。
   〔委員長退席、理事古賀之士君着席〕
 このイノベーション拠点税制については、新たに創設された特許権の譲渡所得等に対する優遇税制、これは多数の特許等を所有する大企業にとっては歓迎されるものである一方で、スタートアップ企業など、自ら研究開発を行って特許権を取得し、それを自社の製品やサービスを販売するような企業にとっての実益は不十分だと、こうした指摘をいただいております。スタートアップ企業等が特許権等の知的財産を生かしてより一層成長するためには、製品やサービスの販売益に対して優遇税制を行い、その優遇分を次の開発資金に振り分け、再投資できるようにしてほしいと、そうしたお声でありました。
 もちろん、これ、経済産業省もそうした問題意識、恐らく現場からも届き、またそうした方向性での税制改正要望、昨年夏の時点では要望されていたわけでありますけれども、結局これが、昨年末にはなかなか制度化するまでは至らなかったということでありまして、その販売益については今回の改正では適用対象としないという整理を一旦はしております。
 今すぐこれをひっくり返すというわけにはいきませんけれども、実は昨年末の与党税制大綱の、税制改正の大綱において、今引用するように、この点、今後の検討課題として整理をしております。
 そのまま引用いたしますと、イノベーションボックス税制、これボックス税制というのは拠点税制と同じ意味だと思います、の対象範囲については、制度の執行状況や効果を十分に検証した上で、国際ルールとの整合性、官民の事務負担の検証、立証責任の所在等、諸外国との違いや体制面を含めた税務当局の執行可能性等の観点から、財源確保の状況も踏まえ、状況に応じ見直しを検討するというふうになっております。
 今後、運用面において解決するべき課題ではあるかもしれません、課題はあるかもしれませんが、イノベーション拠点税制の確立のためにも、今回の制度で完結させるものではなく、立地競争力の観点から、製品、サービスの販売時に対する税制優遇の実現に向けて、これは積極的に今後も検討いただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。
   〔理事古賀之士君退席、委員長着席〕

政府参考人(田中哲也君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、大変重要な点だと我々も認識しておりまして、スタートアップ企業を始め我が国の多くの企業は、積極的な研究開発により生み出した知財を自らの製品やサービスとして事業化し、そこから収益を次の研究、知財開発に投資するということでイノベーションを継続的に生み出そうとしております。
 研究開発拠点としての立地競争力を強化し、無形資産投資を後押しする観点から、こうした知財を生み出した事業者が自らその知財を活用して事業化した製品やサービスの売却益を制度の対象に含めるべきだという声があることは、経産省としても十分に認識をしております。
 他方で、知財を組み込んだ製品やサービスの売却益を本制度の対象とする場合には、売却益の中からその知財由来の所得を客観的に特定するため、国際ルールに沿った計算を税務当局が認める形式で申告者が行う必要があります。こうした作業負担への対応や立証責任の所在等を含めて適切な執行が可能かどうかの検討を要するため、今回は、制度創設時においては、対象知財を組み込んだ製品の売却益を対象外としたところでございます。
 まずは、諸外国の運用状況や民間の知財管理の状況把握等に取り組みつつ、本制度の着実な執行に努め、その上で、他の税制と同様に制度の執行状況や効果を検証し、本税制がより良い制度になるよう、御指摘の本税制の所得の単位も含めまして、不断の見直しを行ってまいりたいと考えております。

里見隆治君 よろしくお願いします。
 ありがとうございました。

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