先ほど終えた、参議院本会議の様子をYouTubeに UPいたしました。
ぜひご覧下さい。
【主な質問テーマ】
・歳入の多くを国債に依存することの国民の不安、懸念について
・低所得者支援の迅速な実施について
・公金受取口座活用について
・国、地方自治体、官公需における適正な価格転嫁について
・不登校対策について
・認知症施策推進について
・日中首脳会談を踏まえた今後の日中関係について
議事録
里見隆治君 公明党の里見隆治です。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました財政演説について、岸田総理に質問いたします。
まず、今回の令和五年度補正予算は、全体として、物価高により大変厳しい状況にある生活者、中小企業への支援の充実を図るとともに、賃上げ実現に向けた供給力の強化により、我が国経済をデフレから完全脱却させ、新たなステージへと引き上げようとする内容となっており、一日も早く成立をさせ、一刻も早く国民の皆様にお届けすべきものと考えます。
しかし、国民の皆様には、補正予算による物価高対策に期待感を持つ一方で、この十三・二兆円規模の補正予算において歳入の多くを公債金に依存することとなり、具体的には、公債金が合計八・九兆円、うち特例公債、いわゆる赤字公債が六・四兆円となっていることに、所詮は将来の国民負担の増加につながってしまうだけではないか、また、金融市場において国債が安定的に消費されるのかといった懸念の声があるのも事実です。
今回の総合経済対策による低所得者への給付や自治体への重点支援地方交付金の効果を強調する前に、まずは国民の皆様のこうした懸念に対して総理が分かりやすくメッセージを発信いただくことが大変重要だと思いますが、いかがでしょうか。
今回の補正予算で一刻も早く実施すべきは、物価高により厳しい状況にある低所得者への支援です。
住民税非課税世帯対象の一世帯七万円の給付については、既にこの夏の三万円の支給実績がありますので、年内にも速やかに支給できるよう自治体との調整を早急に進めるべきと考えます。
同時に、これら一世帯当たり合計十万円の給付と一人当たり四万円の定額減税とのはざまにある方々、例えば低所得者の子育て世代や住民税均等割のみの課税世帯への支援措置については、十二月までの税制改正と並行して速やかに制度設計を行い、年度内にも給付を始められるよう、自治体とも前倒しで準備を進めるべきと考えます。
公明党もネットワークを生かし、既に全国の地方議員とオンラインで結び、協議を開始、これらの給付や重点支援地方交付金などの早期執行に向けて準備を進めております。
制度設計を緻密にし過ぎて給付が遅れたということがないように、低所得者への給付という性格から迅速性を最優先して進めるべきと考えますが、総理の御見解をお伺いします。
これらの低所得者への給付をより迅速に行うために、先日、総務委員会で公明党議員が指摘をしておりますが、これまでマイナンバーカードの普及とともに強く推進をしてきた公金受取口座を積極的に活用することが重要と考えます。
既に、公金受取口座登録件数は六千二百万件を超え、公金受取口座を使用して給付金等を支給した自治体は十月末時点で全国千七百八十八の自治体のうち千三百二十四に達しており、今回の給付でも積極的に活用すべきと考えますが、総理の御見解を伺います。
物価高に負けない持続的な賃金を実現していくには、特に賃上げが困難な中小企業が賃金の原資を稼げるように価格転嫁しやすい環境づくりが不可欠です。
これまでも、岸田総理、西村経済産業大臣は、賃上げ、適正な価格転嫁、取引環境の改善を経済界トップに働きかけ、発注者の立場で自社の取引方針を宣言するパートナーシップ構築宣言を拡大、推進してきました。
しかし、中小企業からは、むしろ国や地方自治体が発注する庁舎管理や給食サービスなどの公共調達においても、契約後の急激なコスト上昇に応じた十分な契約金額の見直しが認められないといった声も聞こえてきます。国や自治体もそのための財源を確保しなければ、単価は上がるが事業の総量が減るという事態になりかねません。
〔議長退席、副議長着席〕
公明党としても、中小企業等の賃上げ応援トータルプランの中で国や地方自治体の官公需における適正な転嫁の確保を提言してきました。まず隗より始めよであります。
西村経済産業大臣には、先日の経済産業委員会で、官公需法を所管している中小企業庁が中心となって適正な価格転嫁を進めていくとの決意を表明いただきました。
その上で、国や自治体の調達活動や各事業を所管する全ての大臣自らパートナーシップ構築宣言を行い、適正な価格転嫁、取引適正化を進めていただきたいと強く念願をしておりますが、内閣総理大臣としての御所見、御決意を伺います。
まさに政府としてのパートナーシップ構築宣言をお願い申し上げます。
今回の補正予算には、包摂社会の実現に向けて、子供や高齢者にも配慮した対策が盛り込まれています。
先月、文部科学省により、病気などの理由以外で三十日以上欠席という不登校の小中学生が約二十九万人と過去最多と発表されました。しかも、その四割の約十一万四千人は、学校内外において相談支援につながっていません。看過できない事態であり、対策強化は待ったなしです。
誰一人取り残されない教育を目指し、公明党として、支援につながるための情報発信やアウトリーチの強化、一人一台端末への相談アプリの導入など、SOSを発信しやすい相談体制の構築、不登校の要因のより丁寧な分析などの対応を訴えてまいりました。
特に、不登校の要因のより丁寧な分析は、公明党の議員が予算委員会で訴えたとおり、今後の対策を打つための重要な鍵となりますが、文部科学省の調査によりますと、不登校の要因を本人の無気力、不安と教員が捉えているのが五一・八%にも及んでいます。
しかし、大事なのは、なぜその子供たちが無気力、不安になったかという原因です。本当は健康状態や障害が理由だったのに、無気力、怠けていると捉えられていたらどうでしょう。今後の対応を考えていく上で、不登校の理由を正確に把握するため調査を早急に見直し、不登校の対策の具体化、充実を図るべきと考えますが、総理の御見解を伺います。
公明党として認知症施策推進本部を六年前に設置して推進してきた念願の認知症基本法が、各会派の皆様と超党派で提出され、本年六月に成立いたしました。
先日の衆議院本会議における公明党の代表質問で、今後の施策推進について質問したところ、総理より、都道府県などに対する計画の策定支援など総合的に施策を推進すると御答弁いただき、現に補正予算案において自治体の計画策定支援事業が盛り込まれました。
その実施に当たっては、特に、各自治体において認知症の人や家族の意見を丁寧に聞き、意見や、計画作り、施策に反映、そして改めて当事者に評価してもらうような体制づくりを国として全面的に支援すべきと考えますが、総理の御見解を伺います。
最後に、日中関係について伺います。
本年は、日中平和友好条約締結四十五周年に当たります。
この節目に際して、今回、岸田総理と中国の習近平国家主席との間で一年ぶりの首脳会談が実現したことは大変意義深いと感じます。
特に、日中間では、足下で、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出の安全性、日本産水産物の輸入停止措置の撤廃など、様々な懸案について中国に正しい理解を求める必要が生じていたため、将来に向けて建設的で安定的な関係を構築するために重要な機会となったと考えます。
折しも、明後日二十二日より公明党の山口代表が訪中する予定であり、行政とは異なる政党レベルでの中国との対話を進めることにより、日中関係を更に広げ、深めることが期待されています。
今回の日中首脳会談の成果をどのように評価をされているか、また、今後の日中関係の構築にどう結び付けていくのか、総理に御見解を伺います。
公明党は、大衆とともにとの立党精神を変わらぬ原点として、これからも現場第一主義に徹し、小さな声に耳を傾け、真に必要な政策実現に全力を挙げていくことをお誓いし、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
内閣総理大臣(岸田文雄君) 里見隆治議員にお答えいたします。
将来の国民負担の増加等の懸念についてお尋ねがありました。
今回の補正予算においては、骨太方針で示された経済財政運営の考え方に沿って、役割を終えた緊急時の財政支出を平時の水準に戻していくとの観点から、めり張りある編成に取り組んだところです。結果、今回の補正予算においては、合わせて五兆円となる特定目的予備費を半減し、財源として活用するとともに、国債発行による公債金収入を令和四年度第二次補正予算よりも着実に抑制するなど、平時の抑制、政治の歳出構造に向けた一つの道筋を示すことができたと考えております。また、今回の補正予算の財源として新たに発行することとなる国債が市場で安定的に消化できるよう、今年度において実際に市場に対して発行する国債の発行総額の規模の抑制、これも図ったところであります。
今後とも、国債の発行に当たっては、市場動向も踏まえつつ、市場との緊密な対話に基づき、引き続き安定的な発行に努めてまいります。
その上で、経済あっての財政であり、今回の経済対策において最優先にしていることは、デフレからの脱却を行い、経済の好循環を実現させることです。経済が成長してこそ税収も増え、そして財政健全化にもつながっていくと考えております。
低所得者支援の迅速な実施についてお尋ねがありました。
物価高に最も切実に苦しんでおられるのは低所得者の方々であり、スピード感のある対応が重要だと考えております。
重点支援地方交付金を追加的に拡大して実施することとしている住民税非課税世帯一世帯当たり七万円の追加給付については、既に地方公共団体に対し必要な情報提供を行い、地方公共団体からの質問や相談にも丁寧に対応することで、低所得者の方々に必要な支援を迅速にお届けできるよう努めてまいります。
また、御指摘の低所得者の子育て世帯や住民税均等割のみ課税される世帯の方に対しても早期に支援を実施すべきであるという御意見があると承知をしており、できるだけ急ぎたいと考えております。
地方公共団体の事務負担にも配慮しつつ、令和六年度税制改正と併せて、年末に成案を得るべく検討を進めてまいります。
低所得者への給付における公金受取口座の積極的な活用についてお尋ねがありました。
物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々に対し迅速に支援をお届けするため、公金受取口座制度を御活用いただくことは有効であると考えております。
住民税非課税世帯一世帯当たり七万円の追加給付においては、地方公共団体が公金受取口座を活用するために必要となる特定公的給付制度について、迅速に事業が開始できるよう措置し、その活用について改めて周知したところです。
また、定額減税と住民税非課税世帯への支援の間におられる方々への支援についても、公金受取口座の活用も含め、簡素かつ効率的な給付事務が実現できるよう検討を進めてまいります。
迅速かつ効率的な給付となるよう、地方公共団体と緊密に連携をしながら、政府一体となって取組を進めてまいります。
国や自治体の調達活動における公正な価格転嫁についてお尋ねがありました。
パートナーシップ構築宣言は、サプライチェーン全体の共存共栄を目指し、企業が発注者側の立場から自主的に宣言いただく制度であり、取引対価の決定に当たって事業者から申入れがあった場合には協議に応じることなどが示されています。
政府においても、その精神を尊重し、中小企業の受注の機会を確保する観点から、官公需法に基づき毎年閣議決定をしている国等の契約の基本的な方針に沿って、原材料費等の上昇等があった場合の契約金額の変更の検討など、各所管大臣が責任を持って進めてまいります。こうした取組を通じて、国、自治体が率先して適正な価格転嫁が進む環境をつくってまいります。
不登校対策についてお尋ねがありました。
現下の不登校についての極めて憂慮すべき状況を踏まえ、校内の教育支援センターの設置促進など、緊急的に対応すべきものについては補正予算案に盛り込んだところです。その上で、更なる実態分析として、文部科学省において児童生徒本人等への調査分析を行っていると承知をしており、その調査結果も踏まえながら、今後とも、不登校に関する対策を強化し、子供の安全、安心確保に万全を期してまいります。
認知症施策における自治体への支援についてお尋ねがありました。
認知症基本法の基本理念に沿って、認知症の方が尊厳と希望を持って暮らすことのできる共生社会を実現していく必要があります。このため、政府としても、都道府県等が認知症の方御本人やその御家族等の意見を丁寧に聞き、計画策定に反映させることができるよう、今般の補正予算において必要な経費を盛り込んだところです。こうした支援を通じ、国と地方が一体となって総合的に認知症施策を推進してまいります。
日中関係についてお尋ねがありました。
習近平国家主席とは約一年ぶりに会談し、大局的観点から率直かつ建設的なやり取りを行うことができました。日中間には様々な協力の可能性と課題や懸案が存在する中、日中平和友好条約締結四十五周年の節目に当たり、日中関係の大きな方向性について習近平主席との間で確認をできたことは有意義であったと考えております。
引き続き、首脳同士での会談、意思疎通を重ね、建設的かつ安定的な関係の構築を双方の努力で進めていく考えです。(拍手)