昨日の経済産業委員会で、中小企業の賃上げ、適正な価格転嫁対策には、司令塔となる組織や関係省庁が連携した会議体が必要だと訴えました。
西村大臣から「関係省庁が一体となり、価格転嫁を進めていく」とのことばをいただきました。
議事録
里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
経済産業委員会、本年で私四年目でございますけれども、昨年八月からこの九月まで経済産業省、長峯政務官、前政務官とともに経済産業省で勤務をさせていただきました。その間、西村大臣には御指導いただき、また幹部、職員の皆様には大変お世話になりましたこと、この場で改めて感謝を申し上げたいと思います。
その意味では、今日は久しぶりの委員会での質疑でございます。質問の機会をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、早速でございますけれども、政府は先週、デフレ完全脱却のための総合経済対策を決定されました。
経済対策の取りまとめに当たっては、岸田総理からの要請に応じまして、与党として、自由民主党とともに公明党としても政府に提言を行ってまいりました。特に、一か月前には、物価高の影響を受けている中小企業対策を特出しして、中小企業等の賃上げ応援トータルプランとして提言をいたしましたけれども、その内容には、中小企業が、賃上げ要請もある一方、これも午前中様々先生からも御質問ございましたとおり、原材料、仕入れコスト上昇に遭遇する中で、賃上げができる環境へ、人件費、コスト上昇分の価格転嫁や生産性を高めるための施策を具体的に私どもの提言の中でも列挙させていただきました。
本日は、まず、そのうち提言四項目を基に質問させていただきたいと思います。
まず、その一つ目は、労務費の適切な価格転嫁のための指針の作成、公表、徹底という項目でございます。
私も先日、商工会議所の代表の皆様との懇談の機会がありまして、今日もこれ御議論が様々ございましたとおり、物価の調達コストは客観的に数値化して転嫁しやすいけれども労務費の価格転嫁が難しいという御指摘をいただいております。皆様から御指摘が今日もありましたとおり、価格転嫁、賃上げ、これどちらが先か後かではなく、これらをどのように同時に進めていけるのかという課題でございます。
この労務費の適切な価格転嫁のための価格交渉に関する指針、これは大変重要だと認識をしております。これは先週決定した総合経済対策の中でも年内に策定をする方針が示されております。もう速やかに作成をいただきたいと思っております。
この点は内閣官房と公正取引委員会が作業を担当すると伺っておりますけれども、まずは公正取引委員会に、どのような指針をどのような観点で作成する方針か、お伺いいたします。
政府参考人(片桐一幸君) 中小企業の賃上げ実現には、特に労務費をいかに適切に転嫁できる環境をつくるかが大きな課題であると認識しています。このため、業界ごとの労務費に係る実態の調査、把握を進めているところであり、内閣官房とともに、年内に労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を策定するということにしております。
指針の具体的な内容でございますけれども、発注者及び受注者双方にとっての明確な行動指針となるよう、例えば、労務費について、取引価格に転嫁する取組方針を発注者側は経営トップまで上げて決定し、その取組状況を定期的に経営トップに報告すること、それから定期的に労務費の転嫁について受注者側との協議の場を設けること、それから受注者側が準備する根拠資料でございますけれども、これは負担にならないよう、当該地域の最低賃金の上昇率、春闘の妥結額の平均上昇率など、公表資料を可能な限り用いることといった事項を盛り込むことを検討しているところでございます。
取引の適正化に向けて、実効性があり、かつ分かりやすいものとして指針を策定、公表してまいりたいと考えてございます。
里見隆治君 是非、公正取引委員会には、現場の実態に即した、また分かりやすい、使いやすい指針を作成いただきますようお願いいたします。
こうして作成をいただいた上で、これしっかり活用をいただかなければなりません。これしっかり徹底、活用いただくべき仕組みをつくるべきだと思いますけれども、これは、この指針を内閣官房としてしっかり各省庁にも徹底をし、そして各省庁が所管の業界、事業分野にもしっかり徹底して、また活用推進していく、その点が重要だと考えますけれども、内閣官房ではこの点は新しい資本主義実現本部事務局が担当しているということでございます。
この指針が策定された後の速やかな周知徹底、その活用促進、どのように対応されるか、お伺いいたします。
政府参考人(坂本里和君) お答えいたします。
先ほど公正取引委員会の方から御説明をいただきました労務費の適切な価格転嫁のための指針につきましては、中小企業における持続的な賃上げを実現するために、御指摘のとおり、この指針が価格交渉の現場においてしっかりと活用されるよう周知徹底を図ってまいることが必要だと認識をしております。
内閣官房といたしましても、関係省庁と連携をしながら、労務費の上昇を理由とした価格転嫁が進んでいない業種を始めといたしまして、関係各業界への周知徹底に万全を期してまいりたいと考えております。
里見隆治君 それから、各省庁、各省庁が所管をする業界にという、こういう立て付けになっておりますけれども、しっかりこれ横串を刺して全体を見ていく、また底上げしていく、悪い点があれば横展開をしていく、そういったことをしっかりと取り組んでいただく、その司令塔としての役目を是非内閣官房にも果たしていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
次に、提言の二点目で御紹介したいのが製品やサービスの最低価格を取り決める団体協約の積極的な活用促進ということでございます。今日、配付資料も御用意しております。
この団体協約というのは、中小企業組合の組合員と取引関係にある事業者と中小企業組合が団体協約を結ぶことによりまして、取引先との価格交渉や価格転嫁の対策を進めることができるというものでございます。団体協約の活用による好事例も多く、今後更に積極的な活用が望まれるところであります。この取組を推進する全国中小企業団体中央会が作成、配布をされているパンフレット、これを基に経済産業省がその抜粋版を作成いただいておりますので、今日配付をさせていただきました。
中小企業庁に、団体協約について、その概要、また具体的な活用例を御説明いただきたいと思います。
政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
団体協約は、今委員御指摘のとおり、取引の相手方との関係で社会的、経済的に弱い立場に立たされている中小企業が、組合を組織した上で、交渉力を高めるための手段として中小企業等協同組合法に基づき締結するものでございます。中小企業等協同組合法に基づいて設立された組合であって、中小規模事業者から成る事業協同組合等の行為は独占禁止法の適用除外となることから、組合は取引条件等について相手方と交渉が可能となり、また、交渉の相手方は誠意を持って交渉に応じるものとされているため、団体協約締結が組合員の価格交渉力の向上につながることが期待されるものでございます。
この団体協約によりまして取引価格、代金の支払方法、手形の期間等の取引条件について定めることが可能でございまして、価格交渉力の向上につながった具体的な事例といたしましては、例えば、著述、芸術家業の組合におきまして、協約締結先と脚本料や著作物使用料等の基準を定めることで組合員の作家が不当な価格で個人契約を強制されることを防止している事例、また、設備工事事業者から成る組合が資材メーカーと価格交渉を行い、仕入価格に関する団体協約を締結することで資材価格高騰の影響を低減した事例などがあるものと承知しております。
以上です。
里見隆治君 今後、今の経済の構造の中で、フリーランス等の働き方も増えてくるという方々をしっかりこの団体として、組合としてまとめて、そして交渉力を上げていくという、そのために非常に重要なツールになるものというふうに思っております。
これ是非しっかりと活用を促していく、積極的な働きかけをしていくべきだというふうに考えますけれども、その方策について中企庁に伺います。
政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
事業協同組合等は、組合員の福利厚生や共同購入を主たる目的として設立されることが多うございます。本年六月に全国の二千四百四十八の組合を対象に行った調査によりますと、現在、団体協約を締結している組合は、回答のあった千五百八十四組合のうち百八十六件にとどまっておりまして、今後の団体協約の活用に向けた周知が重要と認識しております。
このため、全国中小企業団体中央会と連携いたしまして、分かりやすいパンフレットを用いた中小企業団体中央会を通じた組合等への巡回訪問や相談対応を実施するとともに、各商工関連団体等への普及啓発にも取り組んできているところでございます。
引き続きしっかり取り組んでまいる所存でございます。
里見隆治君 しっかり取り組んでくださいますようお願いいたします。
次に、三点目の提言としてここで御紹介したいのが、国、地方自治体等の官公需における適正な転嫁の確保という点でございます。岸田総理も、また西村経産大臣も、民間企業、また民間の経済団体等に対して適正な価格転嫁、また取引環境の改善ということは、これはトップに対してお話をいただいているということでございます。
一方で、じゃ、国や地方自治体はどうなのかという点であります。まさに公共こそが、まず隗より始めよでしっかりと対応するべきだというふうに考えます。公共調達、物品、サービス等の調達を行う際には中小企業の模範を示して、率先して受注した中小企業がしっかり価格転嫁できるような、そうした委託費、補助金の在り方ということが模索されるべきだというふうに思います。
この点、従来からも取組はいただいていますけれども、今まさに社会的な、また時代的な要請という中でこの取組を強化いただく必要があると思います。その対応方針についてお伺いいたします。
政府参考人(山本和徳君) お答えいたします。
政府では、今御紹介いただきましたとおり、国や独立行政法人の官公需において中小企業の受注機会を確保するため、官公需法に基づき、中小企業者に関する国等の契約の基本方針を作成しております。この基本方針には、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の上昇や最低賃金額の改定に関しまして必要な予算の確保や契約変更の検討など措置事項が盛り込まれておりまして、これに基づき、各省、各独立行政法人に対しまして必要な措置を求めるものでございます。
地方自治体につきましても、官公需法上、国の政策に準じて必要な施策を講ずるよう努める旨が定められております。関係省庁と連携いたしまして、地方自治体に対しこの基本方針に準じて取り組むよう、都道府県知事への通知を行っているところでございます。また、本年七月におきましては、中小企業庁が自治体の契約担当者向けに説明会を開催しております。この説明会におきまして、物価上昇時の価格転嫁等の対応につきましては特に留意いただきたい点であるとして、個別に問題意識とともにしっかり御説明を差し上げたところでございます。
引き続き、国、地方自治体等におきまして適切な措置が講じられますよう働きかけてまいる所存であります。
里見隆治君 これ、せっかくやっていただいているし、また自治体にも説明をいただいているということですけれども、なかなか中企庁も直接的な、何か強制的な権限があるというところまでは難しいと思います。その意味では、各省庁とどう連携体制を取っていくのか、その意味では政府の中の司令塔ということが重要だと思います。
先ほどの提言でいいますと、四点目に私どもが強調しましたのが中小企業の賃上げ政策全般を見る司令塔となる組織や関係省庁が連携した会議体の設置ということでございます。今もるる申し上げたようなこの適正な価格転嫁、取引環境の改善については、政府を挙げて全体として取り組んでいただくべきだと思います。
実は、先日の衆議院予算委員会で、公明党の高木政調会長が総理に対して、中小企業を応援するための司令塔となる組織、関係省庁が連帯した、連携した会議体を設置すべきと質問したことに対しまして、岸田総理からは、まずは中小企業の現場に近い中小企業庁を司令塔にして、関係省庁一丸となってというふうに答弁をされました。
現に、中小企業庁は毎年二回の、今日午前中、大臣からも御答弁ありましたように、価格交渉促進月間、これを業種横断的に価格転嫁の状況を収集、結果を公表していただいております。このために、各業種について横断的に評価をするということが中企庁で可能だと思います。その上で、各業所管官庁にその取引方針の改善を促し、その後検証させる、また、政府全体の制度的対応を要するものはしっかりと内閣官房での検討を促していくといった取組が可能ではないかというふうに思います。まさに中小企業庁が司令塔としての役割を果たすことができるその部分がここにも存在するというふうに思っております。
中企庁、また広く産業政策をも所管する経済産業省として、政府全体を牽引する役割を積極的に果たしていくべきと考えますけれども、西村大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、価格転嫁対策においては、中小企業庁がまさに関係省庁とも幅広く連携をして取り組んできているところであります。
御指摘のように、価格交渉月間の調査においても、中小企業庁が業種問わず、例えばトラック運送業なども含めて業種横断的に調査を行って、その結果に基づいて各省庁に連絡をし、所管大臣から業界のトップにも指導、助言をしてもらうという枠組みをこれまでも講じてきたところであります。御指摘の司令塔についても、まさにそういった役割を今後とも果たしていくことが大事だと思っております。
中小企業政策を一義的に、一元的に全体として所管をし、現場に近い中小企業庁を中心に、関係省庁一体となって、この実情を確認しながら価格転嫁を着実に進めていく、そのためにその既存の枠組みも活用しながら、よりそうした気持ちを持って、総理が言われるように、中小企業庁が中心となってこの体制を進めていきたいというふうに考えております。
里見隆治君 是非、西村大臣のリーダーシップに期待をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
次に、テーマを変えまして、ビジネスと人権について御質問したいと思います。
昨今、国際的にサプライチェーンにおける企業の人権尊重責任の要請の高まりがある中で、日本企業、そして我が国がどのように対応すべきかということについて何点か伺ってまいります。
昨年三月の本委員会においても、私、ガイドラインの作成を、早期に作成をし、企業で活用できるよう推進いただきたいという旨、御質問させていただきましたけれども、その後、昨年九月に、政府として、責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン、これを決定いただきました。
その後、各企業においてこのガイドラインがどのように活用されているか、現場での取組状況についてお伺いしたいと思います。
政府参考人(柏原恭子君) お答え申し上げます。
サプライチェーンにおける人権尊重は各国が取り組むべき課題でございます。二〇二一年秋に企業へのアンケート調査を実施いたしましたところ、自主的な取組を進めるためのガイドラインの整備、これを望む声が多く寄せられたことも踏まえまして、昨年九月、政府といたしまして、サプライチェーンにおける人権尊重のための業種横断的なガイドラインを策定いたしました。
ガイドライン策定の後、経済産業省やジェトロが主催するセミナーや業界団体等への説明会を通じましてガイドラインの普及を図っているところでございます。セミナーの参加者からは、政府のガイドラインの策定をきっかけとして人権デューデリジェンスを実施したといった声も聞かれております。また、個別企業からは、ガイドラインを踏まえた自社の取組についての相談が寄せられております。また、ガイドラインが策定されたことで、人権尊重の取組に関して経営陣の理解を得ることができたといった報告もございます。
経産省といたしましては、企業による人権尊重の取組を促すために、引き続き関係省庁と連携しながらガイドラインの普及を進めてまいります。
里見隆治君 ありがとうございます。
本来、人権尊重のビジネスが企業の競争力強化につながるという認識が広がるということが望ましいわけですけれども、なかなか時間が掛かるわけであります。現実には、各企業の担当者から、社内的にはトップのコミットメントを得るのが難しいといった声、あるいは、サプライチェーンを含む社外に対しては中小企業を巻き込んでいくことが難しい、どこまで裾野を広げたらよいのか、範囲をどこまで広げたらよいのかといった声が上がるなど、まだまだ課題も多いというふうに聞いております。
そこで、国内に対しましては、例えば現場の労務、あるいは様々な雇用管理等について精通をしている社会保険労務士の皆さん、あるいは、これは国際的な知見を持ち、またこのスタンダードをよく知っているILO、国際労働機関などの力も借りて、特に取組が困難な中小企業を対象に相談に応じることができる人材育成、また体制構築を是非推進していただきたいと思います。
現在の経産省の取組状況についてお伺いいたします。
政府参考人(柏原恭子君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、国際スタンダードに沿った形で企業による人権尊重の取組を促すことで、企業の経営リスクの低減及び企業価値の向上を通じて我が国企業の国際競争力強化につなげていくことが重要だと考えております。
しかしながら、人権尊重の取組を進めるに当たって、特に中小企業においては、御指摘のような人材あるいは知見、こういったものが不足しているといった課題も多いと承知しております。
このため、昨年九月に策定した政府のガイドラインでは、国際スタンダードにのっとると同時に、中小企業等にも分かりやすいよう、多くの具体例を盛り込んでおります。また、本年四月には、経産省といたしまして、多くの中小企業を始めとして、これまで本格的に人権尊重の取組を行ったことのない企業がガイドラインに沿った取組を進めやすくなるよう、企業の実務者のための参照資料も公表いたしました。また、経産省といたしまして、ガイドラインに基づく企業の人権尊重の取組の普及啓発を進める中で、特に中小企業を対象としたセミナーも開催してきております。さらに、経済産業省では、国際労働機関、ILOへの拠出を通じまして、全国社会保険労務士会連合会と協力をして、中小企業の人権尊重の取組をサポートできる専門人材の育成を行っているところでございます。
引き続き、こうしたガイドラインの普及や専門人材の育成に取り組むことで中小企業の人権尊重の取組を後押ししてまいります。
里見隆治君 個別の企業への取組ということも大事ですけれども、やはり中小企業含めて、これをどう業界として、また業を超えて対応していくか。そういう意味では、相談窓口もどうしても社内的に囲ってしまうとなかなか情報が共有されない。そうした観点からいいますと、業種を超えて横断的に対応していく必要があるというふうに思います。
また、この相談体制だけではなくて、この人権侵害が発見された場合の救済制度、これも、これもむしろ、個々の企業で囲っていくのではなくて、これも第三者的に見れる、そうした機関が必要だというふうに思います。こうした相談窓口の確保、また人権侵害が発見された場合の救済制度の確立、こうした点も業種横断的に、また、これいきなり国の組織というわけにはいかないと思います。既に様々な取組をされている民間企業もいらっしゃると思いますので、そうした民間の力も活用いただきながら是非進めていただきたいと思います。
今後の経済産業省としての取組方針についてお伺いしたいと思います。
政府参考人(柏原恭子君) お答えいたします。
政府のガイドラインでは、企業に対して、ステークホルダーに関わる苦情や紛争に取り組む一連の仕組みである苦情処理メカニズムを自ら設置するか、又は業界団体等が設置する苦情処理メカニズムに参加することで救済へのアクセスを確保することを促しております。
そうした中で、御指摘のような、業界団体等を母体として苦情処理プラットフォームを構築し、個別企業や特定の業界団体の枠を超えて会員企業の苦情処理の支援を専門的な立場から行う取組も始まっていると承知しております。
経済産業省としましては、こうした企業、業界の垣根を越えた取組も含めまして企業等による人権尊重の取組を促すため、引き続き、関係省庁とも連携しながらガイドラインの普及を進めてまいります。
里見隆治君 実は、本年四月、G7、これは倉敷で労働大臣会合の開催がございました。その開催に合わせてILOのウングボ事務局長が来られまして、東京ではJICAの田中理事長等とも会談をして、この会談において、海外から移住してきた労働者、移動してきた労働者の人権保護なども大きな意味でのビジネスと人権という観点で、文脈で対話されたと聞いております。
経済産業省はとかく貿易、通商という点でありますが、非常に広い概念であります。このウングボ事務局長、ILO事務局長が来られた際、私も山口那津男公明党代表とウングボ事務局長と会談をいたしまして、男女間の賃金格差など、いわゆる人権面からの対話となりまして、いかにこの国際社会がこの人権ということに非常に敏感になっているかということを感じた次第であります。
我が国が人と物との交流、そして経済、通商で関わる、深く関わるアジア諸国におきましてビジネスと人権に関する議論を深め、そして人権にのっとった経済活動を促していくことは、欧米、そして日本、またアジア諸国、これらを結び付けていく上で大変重要な課題だというふうに考えます。
単に貿易に関する規則や市場規則で縛っていく手法ではなく、アジアにおいて、人権尊重の取組によって、弱い立場にあった労働者も企業も国も包摂的に成長していくことができるという相乗効果の認識、これを日本がアジア各国と共有し始めているということは大変重要な取組だというふうに思います。
具体的に、先般、インドネシアにおいてもそうした対話イベント、開催いただいたと聞いておりますけれども、こうした取組の状況について御紹介いただければと思います。
政府参考人(柏原恭子君) サプライチェーンにおける人権尊重の取組は、海外の取引先も巻き込んで進めることが重要と考えております。取引先を含む関係企業と協力して人権尊重の取組を実施、強化することは、強靱で包摂的な国際競争力のあるサプライチェーン構築にもつながるものと考えております。
こうした観点から、日本企業がサプライチェーンを通じて深く結び付くアジアでの人権尊重の取組を進めるために、本年九月、インドネシアのジャカルタにおきまして、国際労働機関、ILOとともにG7とアジア諸国の政労使等による対話イベントを開催いたしまして、まさに委員御指摘のございました人権尊重と包摂的成長の相乗効果、それから各国の事情を踏まえた多様なアプローチの重要性について議論を深めたところでございます。
また、経済産業省では、ILOへの拠出を通じて、アジアにおける責任ある企業行動を推進するため、生産現場の人権、労働環境向上のための助言の提供、それから国際労働基準に精通した人材の育成といった事業も実施しているところでございます。
里見隆治君 今お話をいただきましたとおり、このアジア諸国とそして日本とのビジネスと人権をめぐる対話の活動、これはつい先日、西村大臣も御出席をされたG7大阪・堺貿易大臣会合でも大いに評価をされたというふうに伺っております。
G7での成果も踏まえ、また企業活動における人権尊重の確保について、是非、西村大臣には、G7、またアジア諸国を含む国の内外で、経産省はジェトロとも連携もできるわけですから、ジェトロの各拠点の活用ということも念頭に置いて是非積極的なお取組をお願いしたいと思います。
大臣の御決意、またお取組についてのお考え、お聞かせいただければと思います。
国務大臣(西村康稔君) サプライチェーンにおける人権尊重でありますが、これはもう世界共通で取り組むべき課題だというふうに認識をしております。
まず、国内においては、昨年策定したガイドラインの普及を通じて企業による人権尊重の取組を促していきたいと思いますし、御指摘のように国際協調も進めていかなければなりません。企業が予見可能性を持ってその国際スタンダートにのっとった人権尊重に取り組めるようにしていくことが重要であります。
御指摘のように、今年、私が議長を務めました二つのG7の貿易大臣会合におきましては、ビジネスと人権に関するG7内外での国際協調の強化、そしてG7を超えたアウトリーチと関与の強化に合意をいたしました。実際に、G7及びアジア諸国との間で対話も実施をしたところであります。
あわせて、日本企業がサプライチェーンを通じて深く結び付くアジアでの人権尊重の取組を進めるために、引き続き、御指摘のジェトロやILOとも連携をして、アジアの新興国との協力も進めていきたいというふうに考えております。
里見隆治君 それでは、最後に物流の二〇二四年問題についてお伺いをしたいと思います。
経済産業省では、国土交通省、農林水産省とともに持続可能な物流の実現に向けた検討会をこの一年間開催をし、八月には最終取りまとめをされています。並行して関係閣僚会議でも議論を進められております。
経済産業省としては、特にその中でも発注、発送側、そして受取側の荷主企業対策という側面で大いに役割を担っていただかなければなりません。
事業者に対する規制を含む法案を来年の通常国会に提出するということもこの最終取りまとめ、あるいは関係閣僚会議でも既に表明をされていますけれども、これは法案の準備はもちろん進めていただくとして、もう期限は、この二〇二四年四月はもう目前に迫っております。その意味では、もう待ったないこの状況にあって、できる限りのことを現時点から、既に着手はいただいておりますけれども、進めていく必要がございます。
逆算して、この四月、時期から逆算をして、じゃ、今何ができるのかと。法律による規制ではなくても、例えば、各事業者、業界が取り組むべきことは自主的にお取組をいただくこともできるわけですし、それを経産省としても後押しをする必要があると考えます。
現在の経産省としてのお考え、御紹介いただきたいと思います。
政府参考人(南亮君) 物流の二〇二四年問題への対応ですが、まず、政府としましては、六月二日に第二回我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議で決定されました物流革新に向けた政策パッケージに基づく取組を確実に進めてまいりたいと思っております。
この中で、経済産業省としましては、物流事業者だけではなく荷主企業の協力が不可欠であるとの認識の下、標準パレットの使用や納品期限の緩和などの商慣行の是正等に関するガイドラインを示しまして、まさに規制的措置の導入に先立ちまして、広く荷主企業に対し同ガイドラインに従った取組を強く要請しているところでございます。これを受けまして、二〇二三年内を目途に、業界あるいは分野別の自主行動計画の作成も呼びかけております。
こうした我々の呼びかけに応じまして、現在、製造業、流通業といった各業界におきまして、ガイドラインの内容及び業界特殊性を踏まえつつ、年内の完成を目指して自主行動計画の作成が進んでいると承知しておりまして、経済産業省としても、企業、業界からの相談に乗るなどのことでこの作成に向けた支援を引き続き行ってまいりたいと思っております。さらに、物流の適正化や生産性向上を確実なものとすべく、関係省庁とともに、荷主に対して行動変容を促す規制的措置等の導入に向けた検討も併せて進めてまいりたいと思っております。
里見隆治君 将来的には規制を含めた法制的な措置も考えているということです。まず、今からそうしたガイドラインに基づく推進というものは是非お取組をお願いしたいと思います。
その上で、やはり経済的なインセンティブが必要な部分もあろうかと思います。それによって先行事例、それが横展開されていくということからすれば、やはり今のうちから経済的なインセンティブをいかに付けていくかと。その意味では、今般の総合経済対策でも物流効率化に向けた先進的な実証事業ということが盛り込まれております。これをしっかりと計上して前倒しで実施をしていただきたいと思います。今後の取組の見通しについてお伺いします。
政府参考人(南亮君) 物流二〇二四年問題の対応のためには、まさに物流事業者だけではなく荷主企業の協力が不可欠であるとの認識を持っております。特に、ドライバー不足、人手不足を起点として、抜本的な省力化による生産性向上に取り組むことが重要であると考えております。
そこで、経済産業省としましては、物流施設における自動化、機械化の推進など、物流効率化に向けた荷主企業の設備投資を後押しすることを目的とした物流効率化に向けた先進的な実証事業をさきの経済対策に盛り込んだところでございます。
我が国の重要な社会インフラであります物流を維持していくべく、引き続き、関係省庁とも緊密に連携しながらこうした取組を進めてまいりたいと思っております。
里見隆治君 今お話をいただいたこの物流二〇二四年問題、これは我々が今取り組んでいる経済活動、また産業政策、これらの全ての基盤になると思います。あらゆる経済政策を発動しても物が動かなければ経済も回りません。その意味では、是非この物流政策、経済産業省も、これは国交省だけでもないし、また農林水産省だけでもない、むしろ経産省はその基盤づくりをしっかり先導していくんだと、その決意に立って進めていただきたいと、そのことを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。