各地で相談窓口が開設
判断能力が不十分な人の権利や財産を守るため、家庭裁判所が選任した法定後見人が、本人に代わり財産管理や福祉サービスの手続きなどを行う成年後見制度。2025年には65歳以上の5人に1人、約730万人に上ると推計される認知症の人やその家族を支える制度として期待されている。利用促進に向けて、公明党も推進し、相談窓口となる「センター」などを設ける自治体が増えている。
「預金を引き出せない」……
財産管理など困り事に対応
「親が認知症になって、銀行の預金の引き出しができなくなったとの相談が多い」。群馬県渋川市役所に19年から設置されている「成年後見サポートセンター」の担当者は、こう話す。同市は、日常生活自立度がⅡa(金銭管理など、それまでできていたことにミスが目立つ状態)以上の認知症高齢者が3023人に上り、高齢者人口の11.4%を占める。
預金の引き出しには口座の名義人の意思確認が必要だ。認知症でそれができなくなると、家族であっても預金引き出しは困難になり、本人の介護や医療に必要な費用を家族が立て替えざるを得なくなる。
群馬・渋川市
専門家と連携、解決を支援
同センターでは、相談を受けると、弁護士などの専門家とも連携しながら、必要に応じて成年後見制度などの利用に向けた支援を行う。実際に、親族が法定後見人になるための必要な手続きを説明したり、身寄りがない人に対して市が利用手続きを行った事例もある。
法定後見人は、預金の引き出しや税金の支払いといった財産管理のほか、介護・福祉サービスの利用契約、施設入所に関する手続きなどを本人に代わって行うことができる。
個々の事例によっては、市の社会福祉協議会が担う日常生活自立支援事業などで対応できる場合もある。同センターでは、「成年後見を含めて、必要な時に適切な制度を活用できるようコーディネート(調整)し、手続きなどをサポートする体制を整えている」(センター長の西脇正悟・市高齢者安心課長)という。
同センターのように、成年後見制度などに関する相談窓口となって、支援に向けて関係機関との連携を進める拠点は「中核機関」と呼ばれる。政府の「成年後見制度利用促進基本計画」に基づき設置されている。
厚生労働省が今年7月に公表した調査結果によると、中核機関などを設置した自治体は、21年10月時点で全体の48%に当たる836となっている。
政府、使いやすい制度に運用の改善を図る
ただ、成年後見制度の利用がためらわれるケースは少なくない。その理由として挙げられるのが、被後見人の判断能力が回復しない限り、制度の利用を途中でやめられないことだ。後見人との相性が合わなかったり、後見人が本人の意思を尊重しないケースがあっても、簡単に交代できない。
また、利用者本人が後見人に支払う報酬を巡っても課題がある。報酬額は裁判官が事案ごとに決めるが、基本的な目安は月額2万円とされ、一定の資産がないと利用するのは難しい。自治体によっては報酬の助成制度を実施しているが、対応にばらつきがある。
こうした課題を踏まえ政府は、今年3月25日に策定した今年度から26年度までの「基本計画」で、本人や家族にとって、より使いやすい制度にするため、運用改善を図り、報酬助成のあり方などを検討する方針を示している。
公明、法整備を主導、施策推進
成年後見制度に関して公明党は、10年12月にプロジェクトチーム(PT、座長=大口善徳衆院議員)を設置し、同制度の利用促進に向けて「成年後見制度利用促進法」(16年4月成立の議員立法)の整備を主導した。政府の「基本計画」は、同法に基づき策定されている。
今年3月17日の参院予算委員会では、公明党の里見隆治氏が、報酬助成など国の支援策の拡充や、本人のニーズや課題に応じて後見人の柔軟な交代を可能にすることなど、制度の必要な見直しをスピード感を持って進めるよう訴えていた。
各地の地方議員も、相談支援を行うセンターの設置や、市民後見人の育成など、制度の利用促進に向けた取り組みを一貫して推進している。