水道管の漏水、最新技術で発見

2022.04.17 07:00(2年前) ブログ公明党ニュース |里見りゅうじ(里見隆治)

人工衛星とAI活用
愛知・豊田市

愛知県豊田市は、2月から市全域を対象に人工衛星と人工知能(AI)を活用した水道管の漏水調査を開始した(来年3月まで)。従来の調査と比べて時間と費用を大幅に削減できるとあって、多くの自治体・企業から問い合わせや視察が相次いでいる。公明党市議団(田代研団長)はこのほど、市上下水道局の岡田俊樹副主幹らから説明を受けた。

「通学路なので子どもたちに何かないかと心配でした」。豊田市に住む古澤ひさこさん(78)は昨年、晴れの日でも家の近くの道路に水がたまっている様子を見つけた。公明市議に相談して市が修繕したところ、水道管の劣化による漏水が原因と判明。放置すれば、道路が陥没する恐れもあると感じた古澤さんは、「古くなった他の水道管も点検し、できるだけ早く直してほしい」と話していた。

生活に欠かせない水を各家庭へ運ぶ水道管の老朽化が問題になっている。

市内では水道管総延長約3667キロのうち、法定耐用年数の40年を超えた管路は約557キロに及ぶ。年間で更新できる長さは12・5キロで、老朽化のスピードに全く追い付いていない。このため、漏水修繕は年間約900件にも上る。水道管の漏水は断水にもつながるため未然に防ぐ必要があるが、調査に膨大な時間・費用を要することがネックになってきた。

今回、市が行う調査は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星「だいち2号」が撮った画像を使う。地球に向けてマイクロ波を放射して得られたものだ。マイクロ波は、水道管が通る地下1~2メートルまで浸透し、塩素を含む水道水に当たると、他と異なった反射をする【図参照】。そのデータが位置情報と共に埋め込まれた画像と、水道管配管データなどを照らし合わせてAIで解析することで、漏水している場所を推定できる。

市は2020年8月、全国で初めて、この方式で漏水調査を行った。区域は足助、稲武など市東部の中山間地域(約660平方キロ、管延長2217キロ)で、市面積の約7割に当たる。

この時は、衛星画像をAIが直径200メートルの円で区切り、円ごとに漏水している可能性を判定。それを基に、市職員が同9月から昨年4月にかけ、現地で水道管の上の道路に「漏水探知機」を聴診器のように当てて、歩きながら漏水している音を聴き取る調査を実施した。

その結果、154区域で漏水を発見した。AIによる解析では、556区域が漏水の可能性があると判定されていたことから、的中精度は約30%となった。現在、漏水箇所の改修が進められている。

■調査期間、約10分の1に短縮

自治体の漏水調査は通常、探知機を使いながら市全域を歩く必要があるが、衛星画像とAIを用いた調査では、探知機で調べる範囲を限定することができる。特に負担が大きい中山間地の調査で導入する利点は大きく、20年調査では、探知機なら5年かかるところをわずか7カ月と、10分の1近くに短縮できた。費用も大幅に削減され、「(合計で)数千万円かかっていたのが数百万円になった」(岡田副主幹)。

現在、行っている全域調査では、新しいAIシステムの導入により、的中精度を6割に上げることを目標にしている。また、AIが判定する範囲を、直径100メートルに設定。前回に比べて探知機で調べる範囲を狭くすることで、さらなる期間短縮を狙う。

厚生労働省によると、全国の水道管の総延長は約72万キロ(18年度)。このうち、17・6%に当たる約12・7万キロが法定耐用年数を超えており、19年度に起きた漏水・破損事故は約2万件に達している。

岡田副主幹は、「中小の自治体は職員が少なく、水道管の調査に割ける人員が限られている。効率的で費用も削減できるこの技術は必ず役立つ」と強調していた。

豊田市の取り組みを参考に、同じ技術で調査に乗り出した自治体もある。岐阜市は今年度、水道管の調査に衛星とAIを活用することを決めた。市の担当者は「新しい調査方法で早期発見、早期修繕につなげたい」と期待を寄せる。

衛星とAIは水道管更新の“特効薬”となるか。最新技術を活用した対策は始まったばかりだ。

■広域連携と併せて推進/党上水道事業促進委員会事務局長 里見りゅうじ参院議員

水道管の老朽化は、国民生活への影響が大きい社会課題です。私は昨年12月の参院予算委員会で、対策をスピードアップするよう訴えました。豊田市の取り組みを一つのモデルとして、最新技術を活用した水道管の更新が各地で進むよう後押ししていきます。

水道事業は今後、人口減少が進むことで料金収入が減少し、水道施設の老朽化に対応することが一段と難しくなります。

そこで国は、複数の市町村が共同して事業を行う広域連携を進めています。

職員数確保や浄水場の統廃合ができ、水道事業の財政安定につながります。管路の修繕にも取り組みやすくなります。公明党としても各地で広域連携が広がるよう推進していきます。

(リポート最前線)水道管の漏水、最新技術で発見/人工衛星とAI活用/愛知・豊田市

公明党ニュースより

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