コロナで入国制限 日本語教育を無償で
補正予算に計上 学校経営支える側面も
日本留学に胸を膨らませながらも、コロナ禍での入国制限によって母国で足止めされ、不安を募らせる外国人留学生が増加の一途をたどっている。こうした中、昨年12月に成立した2021年度補正予算には、来日前に日本語を学習できる機会を提供する支援が盛り込まれた。文化庁が日本語学校など日本語教育機関に委託し、オンラインを活用した授業を無償で受けられるようにする内容だ。公明党が推進してきた。
13日午後、さいたま市内にある与野学院日本語学校を訪ねると、ガランとした教室の前方で日本人講師がパソコン画面越しに話し掛けていた。母国で待機する外国人留学生約10人とオンラインで結んでの日本語授業の一コマだ。
谷一郎校長によると、待機する留学生はベトナムや中国、タイなどアジアを中心に100人に達するという。一方、通学している在籍者は80人程度と、コロナ前の最盛期と比べて3分の1に減った。
外国人留学生の受け入れが滞る痛手は甚大だ。日本の良き理解者となって母国との“平和の懸け橋”を担う人材の流れが細くなり、日本人が異文化交流を通じて世界に目を向けるチャンスが減ることにもつながる。これらの影響は将来まで及びかねない。
そこで今回の補正予算に盛り込まれたのが「ウィズコロナにおけるオンライン日本語教育実証事業」(予算額41億円)だ。待機中の外国人留学生の「日本語を学びたい」というニーズ(需要)に応えるため、オンライン授業などを無償で提供する。待機中に来日を諦めたり、留学先を他国に変更したりしないよう、つなぎ止めるのが狙いだ。
日本語教育機関を支える意義もある。前述の与野学院日本語学校では、コロナ禍の2年間、教室や寮などの施設は待機学生の来日に備えて縮小せずに維持してきたため、経費はかさむ一方。収入のほとんどを占める、在籍者からの納付金も激減しており、打撃は大きい。
それだけに谷校長は、同事業に期待を寄せる。オンライン授業の知見をさらに積むことができる上、国からの委託という形で新たな業務が生まれることが、経営継続の大きな後押しになるからだ。具体的には、オンライン授業などにかかる人件費や教材費、パソコンなどの機材のリース代といった経費が委託に伴い、国から支払われる。
「画期的」と関係者が評価
今回の事業に当たり、公明党は、現場の声を基に日本語教育の支援を訴えてきた。また、公明党を含む超党派の日本語教育推進議員連盟としても昨年5月、公明党から文部科学部会長の浮島智子衆院議員、里見りゅうじ参院議員(参院選予定候補=愛知選挙区)、熊野せいし参院議員(同=比例区)が出席し、政府に同様の要望を申し入れていた。
そうした中で実現したのが今回の事業だ。コロナ禍での日本語教育機関における教育に特化した国による初めての支援であり、日本語教育機関の関係者は「画期的」と口をそろえる。
主な日本語教育機関は全国に800余りある。文化庁国語課は、今年4月ごろに公募を経て事業の委託先を決定する方針で、「苦境を乗り越える一助として多くの日本語教育機関に活用してもらいたい」と話す。
公明 共生社会へ政策を推進
教師の国家資格創設めざす
留学生のみならず、国内で暮らす外国人の日本語教育の環境は、ここ数年で大きく整備された。転機は超党派の議員立法として、19年に成立・施行された日本語教育推進法だ。公明党は、外国人が必要な日本語能力を身に付け、地域で安心して暮らせる共生社会に向けた政策論議をリードしてきた。
日本語教育施策に詳しい田尻英三・龍谷大学名誉教授は昨年末、ひつじ書房のホームページにあるウェブマガジン「未草」への寄稿で、公明議員の奮闘を紹介。この中で田尻氏が今回の補正予算の事業とともに高く評価しているのが、出入国在留管理庁「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」が昨年11月に取りまとめた、中長期的な課題に関する意見書だ。
同会議は、党外国人材の受入れ対策本部長の石川ひろたか参院議員(同=大阪選挙区)らの尽力で設置されたもので、意見書には、日本語教師の国家資格創設などが明記された。これについて田尻氏は「特筆に値する」と評価している。
日本語教師の資質や能力にバラツキがあることや、待遇が低いことなどが課題となっており、公明党も国家資格創設をめざしている。文化庁は、①日本語教師の国家資格創設②日本語教育機関の評価制度――を柱とする法律案を、今通常国会への提出を視野に検討を進めている。田尻氏は「法律制定は共生社会に向けた一里塚だ。公明党に頑張ってもらいたい」と語っていた。