低体重児救うドナーミルク
里見氏ら導入病院で課題を探る
愛知県
早産などにより低体重で生まれた赤ちゃんに欠かせないのが母乳。だが、事情によって与えることができない母親もいる。こうしたときに母乳(ドナーミルク)を提供するのが「母乳バンク」だ。公明党の里見隆治参院議員は先ごろ、ドナーミルクを導入している藤田医科大学病院(愛知県豊明市)を訪れ、担当する宮田昌史准教授と意見交換した。愛知県に母乳バンク設立を提案している加藤貴志県議が同行した。
ドナーミルクは日本母乳バンク協会(一般社団法人)指定の病院で採取し、冷凍して同バンクに送られ、低温殺菌処理される。ドナーミルクを与える赤ちゃんは、早産などにより1500グラム未満で生まれた「極低出生体重児」。低体重の赤ちゃんは腸が未発達で病気にかかりやすいため、母乳が欠かせない。
藤田医科大学病院は昨年7月から、ドナーミルクの提供を開始。生まれてくる赤ちゃんが極低体重と予想される場合、妊婦に説明して使っている。
愛知県東海市在住の30代女性は昨年9月に男の双子を藤田医科大学病院で出産。予定日よりも2カ月早く、体重は1400グラムと1200グラムで、新生児集中治療室(NICU)に運ばれた。担当医からの勧めで、母乳が足りないときにドナーミルクを使用。女性は「不安はなく心強かった。ドナーミルクのおかげで、すくすくと大きくなってくれた」と喜んでいる。
意見交換の席上、母乳バンク普及の課題として宮田氏が指摘したのは、医療現場の認識度の低さと費用の問題。宮田氏は「新生児を診療する医師でも母乳バンクの取り組みを十分に知らない人もいる」と述べた。 また、ドナーミルクを使用する場合、病院が母乳バンク協会の会員になる必要があり、会費は年間10~30万円で、会費に応じてミルクを利用できる量が異なる事情を指摘。宮田氏は「病院が母乳バンク協会の会費を捻出できないなどの問題で使用できないこともある」と語った。
母乳バンク協会の会員は全国で28病院で、愛知県では藤田医科大学病院など3病院。宮田氏は「今後は、各地に母乳バンクが整備されなければならない。まずはドナーミルクを導入する病院が増えることが重要だ」と強調した。
これに対し、里見氏は「課題を整理し、母乳バンクが広まるように後押ししていきたい」と応じた。
厚生労働省は現在、ドナーミルクを全国のNICUで安定して供給するための調査研究を実施している。
愛知県はドナーミルクの需要量や供給体制の課題を調べており、今年度中に調査結果を報告する予定だ。