AI活用しプラン作成/里見氏、先行実施の豊橋市(愛知)を視察
■今月からの介護報酬改定が後押し
今月からの介護報酬改定で、介護支援専門員(ケアマネジャー=以下、ケアマネ)がAI(人工知能)を活用してケアプランを作成した場合、より多くの在宅介護サービス利用者を扱えることになった。ケアマネの負担軽減と人材確保が目的で、改定を推進してきた公明党の里見隆治参院議員はこのほど、全国に先駆けてAI活用のケアプラン作成支援に取り組んできた愛知県豊橋市を訪れ、職員から現状と課題を聞いた。市議になる前、ケアマネとしてこの事業に参加した梅田早苗市議も同席した。
ケアマネが介護サービス利用者のケアプランを作成する場合、扱う件数が40件以上になると単位(報酬)が半減し、60件以上は3分の1以下になる仕組みがある(逓減制)。ケアプラン作成は専門的な知識や経験を必要とするため、プランの質を維持するための制限だ。今回の改定では、AI活用で業務効率化と介護サービスの適正化を図ることを前提に「40件以上」が「45件以上」に変更された。
AI活用のケアプラン作成の手順は、まずケアマネが介護認定調査項目(74項目)と主治医意見書の内容を入力する。AIは蓄積されている過去のビッグデータに基づき、①利用者の身体的自立に効果が見込める三つのプラン②各プランを実施した場合の日常生活動作や認知症状の1年後予測(図表など)――を提示する。ケアマネは、自身が訪問調査した利用者の現状や要望などを踏まえてAIプランを修正し、最適なプランを提案できる。
豊橋市は、2017年から「AIを活用したケアプラン作成支援」の実証研究に着手。民間が開発したAI搭載のシステムに同市の過去8年分の要介護認定申請のデータ(訪問調査票や主治医意見書など約10万7000件)と給付実績のデータ(利用日数やサービスの種類など約587万件)を入力し、2年かけて実証研究を行った。市内の居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに勤務する合計74人のケアマネが参加し、235件のケアプランを作成。その結果、介護の手間を時間に換算する「要介護認定等基準時間」が、AIを利用しなかった過去の事例と比較して4・8分短縮され、「その分、身体の悪化を抑えることができた」(同市長寿介護課)など一定の成果が得られた。これらの結果を踏まえ、20年度から本格運用している。
梅田市議は19年4月に市議に初当選する以前、ケアマネとして実証研究に参加し、AI活用がケアマネの負担軽減や介護サービスの適正化に大きく寄与すると実感。市議になってからは、19年6月定例会を皮切りに4回にわたって質問し、AI活用を主張してきた。また、昨年10月には里見参院議員に相談し、国の強い後押しを求めた。里見氏が副部会長を務める公明党厚生労働部会は同年12月、介護報酬改定に関する要望書を田村憲久厚生労働相に提出。その中で介護現場の厳しい労働環境に触れ、ITなどの活用と介護人材の確保を訴えた。
里見氏は、市職員との意見交換で「今後、AI活用を全国展開する上で豊橋市の事例が参考になる。ケアマネの処遇改善と人材確保につながるよう全力で取り組んでいく」と述べた。
公明党ニュースより