農林水産委員会で「農業用ため池管理保全法案」について質問

2019.04.19 07:44(6年前) ブログ国会質疑 |里見りゅうじ(里見隆治)

4月18日、農林水産委員会で「農業用ため池管理保全法案」について質問。
いつもの佐々木さやか議員に代わって、谷合正明議員(公明党参議院政審会長)も出席。谷合議員は、農林水産労働副大臣だった昨年7月の西日本豪雨によりため池の決壊による水害で、議員の地元・被災地の岡山県・広島県に急行、様々なご要望を受けました。この法案にも反映されています。
私からは、3月末に広島県世羅町開催されたシンポジウムで提起された現場の声を紹介し、高齢化が進み、専門家ではない農家にため池の管理責任が過度にかかることがないよう公的支援をと訴えました。

 

委員会質疑から

農林水産委員会で「農業用ため池管理保全法案」について質問 農林水産委員会で「農業用ため池管理保全法案」について質問農林水産委員会で「農業用ため池管理保全法案」について質問

議事録

里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
 まず、法案に入る前に、私からも豚コレラについて触れざるを得ません。
 昨日、残念なことに、岐阜県恵那市で豚コレラの二十例目の発生が確認をされました。岐阜県内でこれまで最大の飼養頭数、九千六百二十八頭ということでございます。同じ恵那市では、二月二日、そして去る四月九日と立て続けに発生をしておりまして、大変ショックを受けております。あえて答弁を求めませんけれども、大臣、先ほど、できることは何でもやると、また考えているということでございます。現状の施策、対応にこだわらずといいますか、日々状況に応じた臨機の対応をお願いしたいと思います。
 今日は、もちろんこの今苦しんでおられる養豚農家のことも非常に心配ではありますけれども、実は、その周辺の農家、あるいはジビエに関わる皆様方からも飼養という観点ではない様々な御懸念の声もいただいておりますので、その観点から御質問したいと思います。
 先日、愛知県の春日井市の岐阜県境の中山間地の農家の方からお話をお伺いしました。今政府で進めていただいている野生イノシシの経口ワクチンの散布、これはこれでいいんだけれども、ただ、これまでの鳥獣被害対策という文脈からすれば、むしろワクチンを摂取なんということではなくて、もうすぐに捕獲をして生息数を低減させる、その対策をもっと加速させるべきだと、そのように御意見をいただいております。
 この点、政府はどのように捉えられているか、お伺いいたします。

政府参考人(新井ゆたか君) お答え申し上げます。
 まず、経口ワクチンについてお話をさせていただきたいと思います。
 これは一年間を三期に分けてということでございまして、第一期目が三月二十四日—四月二日に行いました。その経験を踏まえまして、第二期の、二回目の散布を今後開始することにしておりまして、両県の要請を踏まえまして、散布地域をそれぞれ約一・五倍に拡大して経口ワクチンの投与を始めたいと思っております。愛知県は四月二十一日、岐阜県は五月七日から開始をすることにしております。
 また、御指摘のとおり、鳥獣被害対策の視点を踏まえて野生イノシシの生息数を減少させるという捕獲も大変重要でございまして、愛知県、岐阜県におきましては、従来から、鳥獣保護法に基づきます第二種特定鳥獣管理計画というものにイノシシを指定いたしまして、それぞれ目標と対策を決めて推進しているというふうに承知をしておりますけれども、今回の豚コレラを機に、わなを大幅に増やして今加速化しているという状況だと聞いております。
 このように、経口ワクチンと、それから捕獲による生息数の減少ということを並行しながら、それぞれの自治体とも連携しながら進めてまいりたいというふうに考えております。

里見隆治君 これ通告はしていないし、今日答弁求めませんけれども、実は、その経口ワクチンの散布についても、猟友会の皆さんなどから、これなかなか、届け出るにしても、血液を採って提出をして、またお支払いいただく手数料も相当時間が掛かるといった、そんなお声も聞いていまして、そんな手間ならもう検体を提出しなくていいんじゃないかと、そんなお話も聞いているところでありまして、これはまた改めてお伺いをしますけれども、そうした観点も是非御検討いただければと思います。
 この鳥獣被害という対策に加えまして、今政府ではジビエ対策、対策といいますか、ジビエを振興していこうという対策を進められておりますけれども、私の地元愛知県、またその周辺でも、せっかくこの数年、ジビエが振興されてきたという中で、今回の豚コレラの発生、そして野生イノシシへの経口ワクチンの散布ということで、そこに冷や水を浴びせられたというような印象を持っております。このジビエ業界への影響について、農水省ではどのように把握をされていらっしゃるでしょうか。

政府参考人(室本隆司君) まず、イノシシへの経口ワクチンの散布決定を受けまして、農水省の本省職員を岐阜県、愛知県に派遣をいたしております。ジビエ処理加工施設に訪問しまして、どういった経営への影響があるとか、あるいは何か課題がないでしょうかという聞き取りを行いました。
 主な意見としては、いわゆるこの豚コレラ対策が長期化することで、イノシシの食肉利用への影響も長期化が予想されるのではないかといった意見や、処理加工施設周辺の養豚場や野生イノシシで新たに豚コレラ陽性が確認された場合に経営への影響が深刻化するのではないかと。あるいは、イノシシの受入れ範囲で感染イノシシが確認された場合、鹿主体の処理への変更も検討しなければならない、こういった様々な意見、要望が出されております。
 これを受けて、農水省として、風評対策被害として、まずは小売、流通団体、外食団体に対して三月二十五日付けで通知を発出しております。中身としては、豚コレラは人に感染することはない、仮に豚コレラにかかったイノシシの肉や加工品を食べたとしても人体に影響はない旨会員に周知を依頼するということと、豚コレラ発生県産であることを理由とした不適切な表示、取引拒否等が行われることがないように要請をしたところでございます。
 また、経口ワクチンを摂取したイノシシに由来する食品の安全性についてでありますが、農水省で予備的に検討した結果、人への健康への影響はないと考えられましたが、念のため三月十二日付けで食品安全委員会に評価を諮問しまして、この四月の二日に人の健康に影響を与える可能性は無視できる程度というふうな評価案が委員会で取りまとめられ、現在パブリックコメントが行われているところでございまして、この評価の最終的な評価が示され次第、こうした点も加えて更なる周知徹底を図ってまいりたいと考えてございます。

里見隆治君 もちろん、我々関係している者は風評被害を抑えようと、実態への、人間への被害はないんだと、これよく分かっているわけですけれども、これでも現に経営に影響が出ているという、これは深刻な問題でございます。
 大臣、是非このジビエの振興という点と豚コレラ対策、これ両方相並べて政策を打つのは非常に難しいと思いますけれども、どのように対応いただけるか、御答弁をいただきたいと思います。

国務大臣(吉川貴盛君) 豚コレラの対応につきましては、もう様々な御指摘、御議論をいただいておりますので、これは終息に向けてしっかりと、さらに次善策も対応してまいりたいと思いますが、今、里見委員から御指摘をいただいておりましたこの豚コレラの発生を受けましてのジビエ等への影響に対してでありますけれども、ジビエの処理加工施設から風評被害に対する国の対策への要望が出されておりますし、また、今後の経営への影響が不安といった声もあることも重々承知もいたしているところでございます。
 風評被害の防止を徹底するために、流通、小売関係者への文書の発出等も行ってきたところでありまするけれども、今後は早急にイノシシ肉の安全性をPRするポスターなども作成をしていきたいと思いますし、広く消費者に対する啓発に努めてもまいりたいと存じます。
 このジビエ振興というのは政府を挙げた取組でもございます。有害鳥獣の捕獲を地域一体となって進めるためにも非常に重要と考えておりますので、その歩みを止めないためにも、この処理加工施設がジビエ利用を今後とも継続ができますように、イノシシから鹿へ処理を切り替える場合に必要となる処理加工施設関連の資機材の導入支援ももちろんのこと、できる限りの支援につきまして関係者の御要望を伺いながら対応をしっかりとしてまいりたいと存じます。

里見隆治君 是非、現地の意見、要望も聞きながら対策を進めていただければと思います。
 では次に、本題の農業用ため池管理保全に関する法律案について御質問いたします。
 このきっかけとなりました昨年の平成三十年七月豪雨、これを受けて、農水省、また政府を挙げて様々取組を進めていただいております。今日は、私のお隣は谷合当時副大臣もため池法案見届けに来ていただいておりますけれども、これは先ほどもう答弁いただいたんで私の方で申し上げますけれども、これは農水省の対応の中で防災重点ため池の選定基準の見直しを行われていると。この結果、見直し前の一万一千だったのが約五万というふうに増えていくということで、その数としては非常に対象範囲広がっていくわけでございます。
 そうした中で、その上で、これも政府全体としての動きでございますが、昨年の重点インフラの緊急点検を踏まえて実施することと決定をされている防災・減災、国土強靱化のための三か年緊急対策において、ため池の改修、これについてはどのような対策を講じられることになっているか、高野政務官にお伺いいたします。

大臣政務官(高野光二郎君) 御質問ありがとうございます。
 里見委員の御指摘のとおり、防災重点ため池の数は五万か所を超えることが想定をされています。その全てを対象に堤体、これは水をためるための沢等を締め切るための堤でございますが、の改修等のハード対策を短期間で進めることにつきましては、予算の制約や都道府県、市町村等の組織体制からも困難であると考えています。
 したがいまして、三か年の緊急対策では、整備の緊急性を踏まえた優先順位を付けた上で、対策期間中に効果が上げられる約一千か所のため池について堤体の改修、補強、洪水吐きの拡幅等対策を実施することといたしております。

里見隆治君 これ大分、この五万と約一千ということで大分格差があるわけですけれども、ちょっとこの数だけ比較しますと非常に不安になる面もあるんですが、そこはどういうふうに措置をされるのか、農水省として、更に詳しく安心感を与えていただけるような御答弁をお願いしたいと思います。

政府参考人(室本隆司君) まず、政務官から答弁がございましたとおり、短期間でハード対策を進めるというのは予算の制約等々があって困難であるということで、ため池対策については、その整備の緊急度を踏まえて、ソフトも組み合わせながらやっていくということが基本ではないかと思っております。
 その具体的な避難行動につなげるソフト対策でございますけれども、まず、全ての防災重点ため池の位置と貯水量を記載した市町村ごとのため池マップ、これを作成したいと思っております。それを受けて、ため池管理者、行政機関の緊急連絡体制を構築した上で必要なため池情報を地域住民に周知を図るということ、優先順位の高い防災重点ため池から住民のワークショップとかも交えながらハザードマップを作成すると、こういったことを順次進めてまいりたいと考えてございます。

里見隆治君 いずれにしても、これ全てをハードで即座にというわけにはいかないのは理解しますので、ソフトと併せてということだと思います。
 今おっしゃった市町村のハザードマップの作成、これは法律上も努力義務として今回規定をされているわけですけれども、市町村としてはこれで何か新たな負担が加わるのではないか、あるいは財政上もつのか、様々な不安の声も聞いておりまして、これは市町村にお任せということではなくて、国として予算、技術面の支援、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

政府参考人(室本隆司君) おっしゃるとおり、ハザードマップについては市町村の努力義務規定として入れております。
 ただ、私どもとしましては、都道府県なり市町村にこれを全部一任するのではなくて、国としてもこれまで同様積極的に支援をしてまいりたいと考えてございます。具体的には、予算の関連でございますが、三十一年度のハザードマップの作成予算としては昨年度の約三倍に当たる三十億円を確保してございまして、その他技術支援の面では手引を、どうやってハザードマップを作るかという手引を作成しておりますので、この手引をしっかり周知を図る、あるいは研修なども行っていくということで農政局の方で対応していきたいと、こう考えてございます。

里見隆治君 よろしくお願いいたします。
 先ほどから広島ということで何回か出ておりますけれども、兵庫県に次いで二番目にため池が多いということでございます。谷合前副大臣からもいろいろお話をお伺いしましたけれども、当委員会としても、本委員会としても視察をし、そういう意味では非常にコミュニケーションを取って地域の要望を丁寧に聞いて御対応いただいているということ、非常に感謝を申し上げたいと思います。
 特にこの広島県から、また広島県内の自治体から、ため池の廃止手続が円滑に進むようにという御要望が非常に多かったということも伺っております。この要望について、本法案においてどのような措置が講じられているか、お伺いをいたします。

政府参考人(室本隆司君) ため池の廃止でございますが、基本的に形状変更を伴うことから、民法上、共有物の場合は全ての共有者の全員同意が必要になると、これがこれまでの必要な手続でございまして、権利関係が複雑化して所有者を特定できない場合には所有者の同意が得られず、なかなか廃止ができなかったというのが広島県さん始め西日本の各県さんの悩みでございました。
 広島県始め全国の自治体、それから全国知事会からも、特に廃止が円滑にできるような制度をつくっていただきたいというふうな要望をこの七月豪雨の後受けまして、この法案においては、廃止する必要がある農業用ため池について、所有者の探索を行ってもなお特定できないような場合には、公告手続を経て知事が代執行することができるという仕組みを導入したところでございます。これを活用していただければ、これまでの各県さんの悩みは解消できるのではないかと考えてございます。

里見隆治君 この法案で都道府県にある程度権限が集約されるといいますか、付与されると。都道府県が所有者等に対して勧告や命令を行う仕組みができております。
 ただ、都道府県と所有者あるいは管理者というとこれ距離感がありますし、その間に立つ市町村が適切に関与し、都道府県と管理者、所有者との間を取り持つような、そうした仕組みをうまく醸成していく、持っていく必要があると思います。この点、市町村に対してはどのような役割を期待しているか、お伺いをいたします。

政府参考人(室本隆司君) 法第三条第一項、これは都道府県及び市町村の責務という条項でございますが、これは相互に連携を図りながら、この法律に基づく措置あるいは農業用ため池の適正な管理、保全に関する施策を講ずる責務を有する旨規定してございます。
 市町村は、委員おっしゃるとおり、現場に一番近い、密着しているというふうな地公体でございますので、市町村が直接行う事務については、地域の防災あるいは産業振興を担う自治体として、特定農業用ため池に関しまして、一つは、周辺住民の避難に必要なハザードマップの作成、二つ目は、所有者が不明の場合に、地域の農業者や周辺住民と調整しつつ行う日常的な施設の維持管理の主体に位置付けているということでございます。
 また、都道府県が担う事務についても、市町村は特定農業用ため池の指定に対する意見具申ができる、さらに、県が行う立入調査に協力をする、それから、未届けため池を市町村が確認した場合は県に通知を行うという旨の規定も設けているところでございまして、現場に密着した立場で行政を行う市町村との連携をしっかりと確保していきたいと考えてございます。

里見隆治君 県、市にそれぞれの役割を与えた上で、しっかりとこれ法律で枠組みをつくったということは、国からの御支援をよろしくお願いしたいと思います。
 先ほど来お話ししている広島県内で、世羅町という町があります。こちらで去る三月三十一日にため池シンポジウムを開催されたというふうに報じられております。その中で、ため池の維持管理について熱い議論が交わされたということでございます。
 例えば、発言の内容でいいますと、農地の減少、ため池を管理する農業者の高齢化などにより、ため池の管理維持が難しくなっている、ため池の災害リスクが叫ばれる中、防災・減災の専門家ではない農家に対策を求めるのは困難であり、管理責任を問われる精神的な負担は大きいなど、ため池を管理する農事組合の法人の代表などから切実な訴えがあったということでございます。
 本法案の第五条で、農業用ため池の所有者は、当該農業用ため池の機能が十分に発揮されるよう、当該農業用ため池の適正な管理に努めなければならないと規定をしております。今御紹介をしましたような高齢化、あるいは専門家ではない農家という、その農家にため池の適正な維持管理を求めるというのは非常に負担が大きいと、それはごもっともな感想、受け止めではないかというふうに思いますが、こうした農家のお声をどのように受け止められますでしょうか。
 そもそも、これも先ほど来議論がありましたように、ため池というのは、農業用水という意義のみならず、生物多様性確保という環境保全、また地域用水、洪水調節、親水空間の維持、こうした多面的な機能があるわけでございます。こうした多面的また公的な機能を有するため池に、これを維持管理する農業者に対しては、それが公的な機能を持つというゆえからしても公的に支援をしていく必要があると考えますけれども、農林水産大臣に御所見をお伺いいたします。

国務大臣(吉川貴盛君) ため池につきましては、個人や集落、水利組合等で管理しているものがほとんどでございまして、今、里見委員御指摘のとおり、農家の高齢化等によりましてその管理が脆弱化しているものが大きな課題であると私どもも認識をいたしております。
 このため、ため池管理マニュアルを管理者等に配付いたしますとともに、例えば、兵庫県と三十八の市町村で組織する協議会が設置するため池サポートセンターで行っているようなため池の点検やあるいは軽微な補修等の技術指導に対しまして国が定額で支援する事業をこの平成三十一年度に創設をしたところでもございます。
 ため池の有する環境保全、さらには洪水調節等の多面的機能の適切な発揮を目的といたしまして、地域住民の参画を得てため池の点検、草刈り等を行う場合には、多面的機能支払交付金ですとかあるいは中山間地域等直接支払交付金により支援も行っているところでもございまするけれども、今後とも、こういった各種の制度を活用しながら、ため池の管理についてもしっかりと支援もしてまいりたいと存じます。

里見隆治君 大臣、よろしくお願いいたします。
 以上で質問を終わります。

公明党
公明党青年委員会
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