3月7日、議院運営委員会で、国会同意人事の対象である日本銀行副総裁の候補者2名から、前日の総裁候補に続き、所信聴取・質疑。
公明党からは伊藤たかえ議員と私が質問。
2週間前に訪れた青森・函館で地方銀行、日銀の支店から伺った状況などを伝えながら、日銀としてもアンテナを張って、市場とのコミュニケーションを密に、適時適切な実態把握と情報発信をすべきとの考えを伝え、所見を伺いました。
議事録
里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
雨宮参考人は、昭和五十四年から、日銀入行以来四十年ということで、日銀業務に携わってこられたということでございます。私も財政金融委員会の一員として、昨年十二月に委員の一員として日銀本店を訪問させていただきまして、黒田総裁以下、雨宮理事にもその際、御対応いただきました。日銀の政策、また現場での業務について様々お伺いをいたしました。先ほど話題になりましたフィンテックセンターについて、新しい取組ということでもお伺いをしたわけでございます。
やはり、日銀の政策とその業務を運営していくという両面を考えましたときに、日銀の総裁、副総裁、またそれ以下の役員につきましては、日銀の組織に精通された方が必要であるというふうに考えます。
そこで、雨宮参考人におかれては、先ほどの所信でも、第三番目の課題として、業務の組織運営について強い思いを語られておりました。そこで、雨宮参考人に、これまで日銀の組織運営についてどのように貢献してきたか、多くあると思いますけれども、ひとつ具体例を挙げながら教えていただけますでしょうか。
参考人(雨宮正佳君) 組織運営面での経験、貢献ということで申し上げますと、直接の担当ということで申し上げますと、二〇〇四年から二〇〇六年にかけまして組織運営の担当審議役というポストで、日本銀行の予算、人員計画ですとかIT投資計画や経営戦略の策定といった内部管理を統括する担当をいたしました。それから、二〇一二年から一三年にかけては、大阪支店長として三百五十人の支店職員を率いまして業務運営や組織の人事管理を担当いたしました。また、現在は理事としまして、私ども内部で業務調整会議と呼んでいるんですけれども、内部管理を担当する委員会、一種の執行役員会議でありますけれども、そのメンバーとして組織運営の検討に参画しております。
ただ、こうした具体的な担当ということを離れて申し上げますと、私は、長年の日銀における経験、私は新人時代の札勘から、札の勘定と帳簿付けから始めましたので、その経験を踏まえまして、やはり中央銀行の仕事の基盤は、日々の銀行券の発行や流通とか、あるいは決済システムの運営ですとか国庫金の管理といった一見地味な金融インフラの維持に中央銀行業の基盤があるというふうに確信しております。
したがって、この間、政策担当の役員になりましても、日本銀行の職員全員が政策も含めて気持ちをそろえることができるように、政策担当部局以外のところでも私が話しに行って今の政策の考え方等を説明するというような機会も設けながら、できるだけ一人一人の職員が高い士気と責任感を持って中央銀行業務に邁進できるように努力してきたつもりでありますし、もし副総裁として御了承いただければ、そうした努力を更に強めて、言わば日本銀行の組織力をフルに発揮できるよう努めていきたいというふうに考えております。
里見隆治君 ありがとうございます。
雨宮参考人の現場への思い、また組織運営に対する決意というものを感じることができました。
これは今までの実績ということでございますけれども、それを踏まえまして、今後、日銀の組織運営にとって必要なものは何なのか、あるいはそのためにこれまでの御経験をどのように生かしていけるのか、貢献できるのかと、その点についてお考えをお伺いしたいと思います。
参考人(雨宮正佳君) この後、組織運営に必要なこととして二つ申し上げますと、一つは、やはり何といっても、日本銀行の目標、目的は物価の安定と金融システムの安定ということを達成することでありますので、まずは五千人近くの全職員一人一人がこの目的達成に向けて気合をそろえ、高い士気と責任感を持って業務に当たることができるような環境を整えるということがまず最も重要なことかと思います。
それに加えまして、私は最近、今日も先ほど御質問いただきましたけれども、やはり非常に強い問題意識を持っておりますのが、IT技術あるいはフィンテックの発展でございます。
当然、IT技術の発展は、我々のオフィスの在り方、例えば会議の運営の仕方とか、あるいは仕事の進め方も変えますし、あるいは働き方も変えます。
当然のことながら、これは通貨ということでありますので、我々の金融政策や金融システムの安定の仕事にも影響を与えますので、政策だけではなくて、組織運営の在り方としても、このIT技術の発展なりフィンテックの発展に十分キャッチアップして、場合によっては先取りできるような組織運営、それは先ほどから御質問いただいたような人材の育成といったことも含まれますが、そうした点が次の五年間の組織運営上も大きな課題ではないかなと感じております。
里見隆治君 ありがとうございます。
是非、そうした点について雨宮参考人のお力を発揮いただくように、私からも期待を申し上げたいと思います。
次の質問に移りたいと思いますけれども、実は、先々週、二月の十九日、二十日でございますが、これもまた財政金融委員会の一員として、ほかの先生方とともに委員派遣で、青森それから函館に行ってまいりました。その際には、地元の金融機関、日銀の現地支店の皆様にも現地の実情についてお伺いをしてまいりました。
その中で、昨日、本日の議論でも出てまいりましたけれども、地域の金融機関の状況として、貸出金利利回りが低下していることから本業の収益が悪化しているといった実態をお伺いしたり、あるいは、当期純利益は確保しているものの、総合的に考えると預貸業務を中心としたビジネスモデルの持続可能性に課題を抱えているといった事情の説明を受けております。
私は、日本銀行の役割として、中央で政府と連携して金融政策を立案、遂行していくということも重要でございますが、一方で、金融市場の現場、金融機関の経営実態を的確にその土地土地で把握をして、そして全国的にも発信をしていく、それを政策的にフィードバックしていくということが大変重要であるというふうに考えております。
一つの例示といたしまして、例えば、これは昨日の質疑でも、また本日も話題になりましたが、アパート・マンションローンの増加という点について触れておきたいと思います。これは、昨年から今年にかけて様々な課題が問題提起されているところでございます。昨年十月に、金融庁からは金融レポートという形で、あるいは日本銀行も金融システムレポートという形でこの件について触れられております。
私の問題意識は、こうした後々から課題として提起されるぐらいであれば、もっと現場に精通をし、また日頃からアンテナを張っておられる当局あるいは金融関係の皆さん、もっと早くこの実態をレポートし、そして世に発信をしていってもよかったのではないかという点でございます。
日銀は、日銀法の第四十四条の規定で考査という規定があって、金融機関から業務の状況を把握することができるわけですし、また、様々な調査活動から、金融システムの安定という意味で、適時適切にルーチンの定時のレポートということにこだわらずに情報発信また金融業界への注意喚起ということをできるのではないか、またその必要があるのではないかと考えますが、この点について雨宮参考人のお考えをお聞かせください。
参考人(雨宮正佳君) 御指摘のとおり、私どもは、日頃からの考査、モニタリングを通じまして金融機関の金融仲介活動を丹念に点検しております。その成果も生かしながら、今先生からの御指摘にもありました金融システムレポートで、最近のアパートローンを含む不動産向け貸出しの動向やリスク管理等について取り上げて分析を提示してまいりました。
ただ、それと同時に、日頃の考査やモニタリングを通じても金融機関とこうした問題については議論を深めております。実際に、今、低金利環境、それからやはり人口減少、企業数の減少といった構造要因の中で、特に国内預貸金、預金、貸金ですね、預貸金業務のウエートが高い地域金融機関は非常にその経営が厳しくなっているわけであります。
そうした中でどうやって収益性を高めていくかと申しますと、一つは、やはり地域のニーズに即した資金需要を発掘して強みを生かしていくということと、もう一つは、やはり収益性の高い分野に乗り出そうとすると、その分リスク管理ということが重要になってきておりますので、こうした地域に即した強みのある取組が行われているのか、あるいは行うためにはどのようにしたらよいのか。同時に、リスク管理をどうすべきかといったことは、こうしたレポート、考査、モニタリング、それから、私ども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、金融高度化センターという一種の研修・講演センターがありまして、こうしたところのセミナーも通じて意見交換に努めているところでありますし、今後ともそうした方針で臨みたいと思っております。
里見隆治君 是非、そうした市場とのコミュニケーション、また、各金融機関そして業界とのコミュニケーション、さらに社会に対しての発信ということでお願いをしたいと、またそういったことを期待しております。
最後の質問になりますけれども、物価安定の目標ということについての政府とまた日銀との責任という点についてお伺いをしておきたいと思います。
物価安定の目標といいましても、これは日銀の責任ということではありますけれども、物価そのものはマクロ経済でいえば総需要との関係で決まってくると。その意味で、総需要そのものの創出については、これは政府の経済財政運営の影響によるところが大きいわけでございます。
そのためには、物価安定、これはもちろん日銀も様々な手段によってアプローチをされるわけですけれども、日銀だけでコントロールできるものではないと。ポリシーミックスだという中で、政府の経済財政運営、これに対して日銀との関係では連携ということを言われ、また、共同声明の中でそれぞれの役割分担に応じて実施をされているということですけれども、日銀として政府にもいろいろとおっしゃりたいことはあるんじゃないかと。
日銀と政府との関係というのは、様々言われておりますけれども、日銀法の第四条で、最後の部分だけ申し上げますと、常に政府と連携を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないと。これが、受け身であるのか、双方向に日銀として言うべきことは言っていけるのか、あるいは言う場合には何を言えるのかと。この政府と日銀との関係について、御見解を教えていただければと思います。
参考人(雨宮正佳君) お答え申し上げます。
まず、日銀だけではなくて、世界的に中央銀行の目標として物価の安定ということが目標とされているわけでありますけれども、この考え方としては、やはり物価というのはお金の価値の裏返しでありますので、そのお金を発行する機関である中央銀行がその価値の維持に責任を持つという考え方に基づいておりますので、やはり中央銀行が物価の安定に責任を持つということは非常に理にかなった考え方だと思います。
ただし、その上で、御指摘のとおり、実際の物価というものは非常に複雑でありまして、金融政策だけで決まるものではないわけでありますので、そこは、先ほど話に出ましたが、ポリシーミックスということも重要でありますし、人々の期待成長率や潜在成長率を上げるためには、やはり成長戦略の推進等を通じました、あるいは企業の自助努力を通じた成長力の引上げということも非常に重要だと思います。
これは、実は全て二〇一三年一月の政府、日銀の共同声明に盛り込まれた考え方でございますので、私どもは、この共同声明に基づき物価安定目標の実現に向けて全力を尽くしますし、もう一つの機動的な財政運営も一つの成長戦略ということについても、この実施を通じて、真の意味での物価の安定の下での持続的成長の実現に貢献していってまいりたいというふうに望んでおります。
そうした議論をする場は、例えば私どもの金融政策決定会合に政府からの代表の方が二名お見えになって議論できますし、あるいは総裁が経済財政諮問会議のメンバーでありますので、そうした場も通じながら議論をさせていただきたいというふうに思っております。
里見隆治君 時間ですので、終わります。ありがとうございました。