5月22日、参議院決算委員会で質問に立ちました。
私自身が第二次安倍政権発足直後に厚生労働省の担当として関わった最低賃金について、麻生財務大臣、塩崎厚生労働大臣などに質問しました。
政府の責任として、中小企業支援のための財政支援を、そして、国や地方公共団体が中小企業と契約を結ぶ際に、適切な予定価格の設定が求められていることから、その徹底を求めました。
さらに、近年増加傾向にある、いわゆるフリーランサーなどインターネット等を通じて業務契約を結ぶ自営業者が劣悪な労働条件下で就労することのないよう、まずは、その実態把握のための統計の整備などを求めました。
議事録
里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。
先月の省庁別審査に続き、二度目の質問の機会をいただきましてありがとうございます。本日は、三月で政府決定された働き方改革実行計画に関連してお伺いをいたします。
最低賃金の引上げに関連して実行計画では、「最低賃金については、年率三%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が千円になることを目指す。」とされております。
内容的には、これまで経済財政諮問会議などでも議論、決定されたことはございましたけれども、労使のトップを含め、政労使を構成員とする働き方改革実現会議において最低賃金の引上げの目標を明記した計画が決定されたのは、約四年半前に政権交代してから初めてのことでございまして、大変重要な意義を持つと思います。塩崎大臣が十年ほど前に第一次安倍政権で官房長官として御尽力された、やはり政労使で構成されます成長力底上げ戦略円卓会議における最低賃金引上げの目標より更に踏み込んだ目標設定がされております。
塩崎大臣に、今回の最低賃金引上げについての合意の意義とその実現に向けての御決意を伺いたいと思います。
国務大臣(塩崎恭久君) 御質問ありがとうございます。
最低賃金の引上げにつきましては、経済の好循環を実現する観点で大変重要だということで、安倍内閣、今回、第二次内閣以降四年連続で大幅に引上げを行ってまいりました。特に、平成二十八年度は、時給表示となってから過去最高となります加重平均で二十五円という引上げを行っているわけであります。
今お話をいただきましたように、この三月二十八日に決定をいたしました働き方改革実行計画では、年率三%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しながら引き上げて、全国加重平均が千円となるということを目指すことを明記をしているわけであります。これは、働き方改革実現会議において、総理自らが議長となり、また労働界と産業界のトップの合意を得て決定をされた。今お話があった十年前のときには、かなりやっぱり中小企業の皆さん方が心配をされました。そういう意味で、今回、大変意義のある決定がなされたというふうに思っております。
その十年前もそうでしたが、やはり大事なポイントは、中小企業の生産性をどう上げていくか、どう実効性を持って上げていくかということが大事であり、その支援を図るということが極めて重要であり、それが経済の底上げにつながるということだというふうに思います。
したがって、私どもも、関係省庁としっかりと連携をして、最低賃金引上げに向けた環境整備にしっかりと取り組んで、中小企業も皆底上げができ、そしてこの働く人たちの暮らしが充実するように頑張っていきたいと思います。
里見隆治君 今大臣から御答弁をいただきました中小企業の生産性の向上への支援、また中小企業がしっかりと経済の中で活躍をいただけるような取引条件の改善、これに政府としてもしっかり取り組んでいただきたいと思います。
この中小企業支援に関しては財政支援も重要でございます。この取引条件の改善につきましては、中小企業等に先駆けて、中央省庁、各省庁、また地方自治体で率先垂範をいただくことが重要と考えます。その意味で、厚生労働省のみならず、経済産業省、財務省、総務省などがそれぞれの立場で推進をいただく必要がございます。
例えば、過去四年間の中央最低賃金審議会の答申において、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望するとございます。
その意味するところ、また、この答申を踏まえての厚労省の対応状況についてお伺いいたします。
大臣政務官(堀内詔子君) 地域別最低賃金は、中央及び地方の最低賃金審議会において議論の上、その改定額は毎年十月頃に発効させていただいているところでございます。このため、行政機関から民間企業へ業務委託する場合に、こうした年度途中の最低賃金額の改定に対応して委託先が最低賃金額以上の賃金を支払うことができるよう中央最低賃金審議会の答申において要望がなされているところでございます。
この答申を踏まえ、厚生労働省では、毎年度、最低賃金の改定額の発効前に各省庁や地方公共団体に対して通知を発出し、年度途中の最低賃金額の改定に伴い業務委託先が最低賃金法違反を発生させることがないよう協力依頼を行っているところでございます。
加えて、公共建築物のビルメンテナンス業務については、平成二十七年にビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドラインを作成し、各省庁、地方公共団体に発出しております。
このガイドラインでは、入札参加者に対して最低賃金制度の周知を図ることや、最低賃金の改定等を注視し、必要があると認める場合には代金の額の変更を検討するよう要請しており、引き続き、ガイドラインに基づいた取組が促進されるよう、周知徹底を図ってまいりたいと存じます。
里見隆治君 こうした状況を踏まえまして、他省庁でも相当の対応が求められておりますので、各省庁に順に伺いたいと思います。
まず、経済産業省に伺います。
最低賃金を始め、賃金の引上げについては、特に支援の必要な中小企業への配慮が重要だと思います。官公需法に基づく中小企業者に関する国等の契約の基本方針においては、適切な予定価格の作成が明記されていると承知をしておりますけれども、その趣旨、また中央省庁や地方公共団体にどのように徹底をされているか、お伺いいたします。
大臣政務官(井原巧君) お答えを申し上げます。
官公需法に基づき閣議決定する国等の契約の基本方針の中では、中小企業・小規模事業者の受注機会の確保の観点から講ずるべき基本的な事項を幾つか定められております。その一つとして、品質の確保や賃金の引上げに向けた環境整備の観点から、もう一つはダンピングの防止対策ということで、御指摘のとおり、発注に当たっては、需給の状況とか原材料及び人件費等の最新の実勢価格等を踏まえた上で、その積算に基づき、適正な予定価格を作成するということになっております。
この法律は、地方自治体にも、国に準じて取り組むという努力規定も設けられておりますし、ちなみに、この発注額を挙げていくと、平成二十七年度では、国等の官公需は七兆一千億、うち中小企業・小規模事業者は三・六兆です。そして、地方はもっと大きくて十四・二兆、うち中小・小規模事業者は十・六兆と、こういう大きなものでございますから、この周知を図るということが非常に重要だというふうに思っております。
毎年、基本方針の閣議決定後に、経済産業大臣名で、各府省、独立行政法人等の機関、地方公共団体の長などに対して協力要請の文書を発出しております。加えまして、全都道府県で基本方針の説明会を開催いたしておりまして、国の地方部局やあるいは地方公共団体の発注担当者に対して、措置の内容を解説するとともに協力の要請を行っているところであります。
今後とも、関係省庁や地方公共団体と連携し、適切な予定価格の作成を含めた国等の契約の基本方針について周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
里見隆治君 こうした厚生労働省、また経済産業省からの通知を踏まえて、総務省にお伺いをいたします。
我が国の経済を支える中小企業を支えるべく、国、地方公共団体が率先して賃上げを考慮した価格設定を行うべきだと考えます。総務省の御認識、またこれまでの対応状況、そして今後の対応方針についてお伺いをいたします。
政府参考人(安田充君) お答えいたします。
ただいま御答弁ございましたように、官公需法に基づく基本方針には、国等は、需給の状況、原材料及び人件費等の最新の実勢価格を踏まえた積算に基づいて、適切に予定価格を作成することとされているところでございます。
地方公共団体につきましては、官公需法におきまして、「国の施策に準じて、中小企業者の受注の機会を確保するために必要な施策を講ずるように努めなければならない。」とされておりまして、総務省といたしましては、地方公共団体に対しまして、適切な予定価格の作成を含め、基本方針の周知徹底について通知を発出してきたところでございます。
今後も、平成二十九年度の基本方針の閣議決定に合わせまして、総務省としても、通知を発出するとともに、地方公共団体の担当者を集めた会議での周知等、地方公共団体に対する周知徹底について、関係省庁と連携を図りながら適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
里見隆治君 こうした各省庁の対応を受けて、最後に財務大臣にお伺いをいたします。
最低賃金引上げについて、経済、財政に与える好影響、まずこれについてどのように御認識をされているか、また中小企業や小規模事業者の従業員の賃金を引き上げていく上で官公需部門の果たす役割をどのようにお考えか、御見解をお伺いいたします。
国務大臣(麻生太郎君) 御存じのように、最低賃金がパーセントで約三・一%、額で二十五円ということになって上がっており、まあ四年連続上がって、引上げ、八百二十三円ですかね、に上がったんだと記憶をしますけれども、いずれにしても、この最低賃金につきましては、加重平均ですよ、加重平均で、四年、まあ五年連続きちんと上がっていったということはこの四年間の成果としては非常に大きなものだったと、私はそう考えております。
その上で、この最低賃金を含みます所得の引上げとか、同じくやっぱりそういったものが消費の喚起というものにつながっていくということになるためには、これはやっぱり今年で終わりかというんじゃこれは止まっちゃいますので、やっぱり先もずっといくであろうというようなものが出てこないとなかなかそういった気にはならぬと思っておりますので、そこが一つある。
それから続いて、下請等々の中小企業の取引条件というのが、これだけ何も相変わらず額は変わらぬというのでは、これはなかなかうまいこといきませんので、中小企業に対しては、高い賃上げというものを行う中小企業に対してはいわゆる税額控除を拡充しますということで、固定資産税の軽減措置の拡充というのがありましたし、また、生産性を向上させるために設備投資というものを行ってくれた中小企業に対しては助成金というような支援をすることなど、税制とか予算とかそういったようなものでいろいろ総合的に策を講じることといたしておりますが、今、それに加えて、国のいわゆる、何というの、調達、公共工事等々の国の調達というものもありますけれども、この契約事務を行います、今御質問された各省各庁において取引の実例価格というのが出ますので、そういったものの需給の状況等を総合的に考えて予定価格を適正に定めるというのはこれはすごく大事なところだろうと思っております。
そのほか、中小企業のいわゆる受注するチャンス、機会を増やすということをやるためには、毎年、中小企業・小規模事業者向けの契約する目標額というのをアバウト決めているんですけど、目標比率も決めておりまして、大体ここのところ五五%ぐらい、半分以上、昔はもうはるかに下だったんですけど、だんだん上がってきて五五%ぐらいまでに今上がってきていると思いますけれども、そういった意味で、きめ細かな取組というものを、中小企業の賃上げとかいうのをいったって生産性が上がらなきゃ賃上げなんかできませんので、そういった意味では、生産性の向上に役立つように、かつ、成長と分配、そういったものを考えて好循環というものが生まれていくためにやっていくというところが一番肝腎なところだと思っておりますので、そういったところを配慮して実現をさせてまいりたいと考えております。
里見隆治君 ありがとうございます。
麻生財務大臣におかれては、この中小企業への財政支援、また取引等に関して官公需、しっかりとお支えいただくようお願いをいたします。
こうした今テーマといたしました最低賃金の引上げ、また同一労働同一賃金の実現、これは正規、非正規の格差是正ということにはつながりますけれども、まだまだこうした取組では手が届かない労働者がおります。それは雇用関係によらない働き方、すなわち労働基準法や労働組合法などの労働関係法令が適用されない働き方で生計を立てている労働者の皆様方です。自営業という意味では、従来にも、そうした委託や請負といっても実際に取引先に従属しているような働き方、これまでもございましたけれども、近年、フリーランサー等々と呼ばれるインターネットを通じて業務契約を結ぶ労働者が増加をしております。
こうした雇用関係によらない働き方について、この三月、経済産業省の研究会が報告書をまとめたと伺っております。その内容について端的に御報告をいただきたいと思います。
大臣政務官(井原巧君) お答えを申し上げます。
昨年九月の働き方改革実現会議におきまして柔軟な働き方についても検討項目として挙げられたということから、経産省におきましても、民間の有識者の参画を得て、雇用関係によらない働き方に関する研究会を開催し、実態や課題を整理した上で本年三月に報告書を取りまとめたところでございます。
育児や介護など人生のそれぞれのステージにおける働き手のニーズに応じて、時間、場所、契約にとらわれない多様で柔軟な働き方を実現すること、そして、それによって働き手一人一人の能力を最大限に引き出すことが必要となってきます。そのような観点から、御指摘のフリーランサーといった働き方についても、働き方の選択肢の一つとして位置付けられるべきものと考えております。女性を中心としてこのような働き方への関心は高まっておりまして、実際に増えているものと承知をいたしております。
その一方で、その研究会から様々課題を指摘されております。一つには、教育訓練については、働き手がスキルを身に付けていくための手段、職業訓練支援が正社員などと比べると限定的であるということ。二点目には、働き手の環境整備ということでありますけれども、報酬が低い場合があることや、働き手のセーフティーネットとなる社会保障制度の多くが現行の制度では企業に雇用されているのを前提として組み立てられているということ。三点目は、さらに、企業の取組については、不適切な条件での取引、契約ですね、が排除される仕組みが必ずしも十分でない場合があること。加えて、中長期的には労働法制や社会保障制度の中でこのような働き手をどのように位置付けるか議論を深めていく必要があるといった指摘をいただいております。
これらの報告書の指摘を踏まえ、厚労省などの関係省庁ともしっかり連携し、新たな働き方につきましての対応について更に検討を進めてまいりたいと考えております。
里見隆治君 私も、今お話をいただきました、御答弁をいただきました報告書、拝見をいたしまして、様々今後打つ手ございますけれども、まず、この実態を把握すること、政策判断の基盤となる現状把握、これが重要だと考えます。
時間もございませんので、総務省に、この雇用によらない働き方に関して今後更に詳細な統計上の把握を検討すべきと考えますけれども、この点いかがでございましょうか。
政府参考人(新井豊君) 我が国の政府統計におきましては、ILOが定めました従業上の地位に関する国際分類の区分を取り入れた形で統計調査を実施し、結果表の作成を行っておるところでございます。
この国際分類につきましては、我が国も参加するILOの会議におきまして、二〇一八年の改定に向けた議論が進められておるところでございまして、多様な働き方の把握についても検討課題の一つとなっておると承知しております。
総務省といたしましては、引き続き、この国際分類の改定の動向を注視しつつ、現在見直しを進めております公的統計の整備に関する基本的な計画におきまして、分類の改定内容を踏まえた調査が行われるよう必要な検討課題を盛り込み、様々な働き方の把握に向けた取組を進めてまいりたいと考えております。
里見隆治君 この統計上の把握、非常に今後の対策を考える上で重要だと思いますので、是非研究、早急にお願いをしたいと思います。
もう時間がございませんので、厚労大臣には、通告をしておりましたけれども、最後お願いだけしておきます。
厚生労働省におかれては、非雇用型テレワークについてガイドラインをこれから策定するというふうに承知をしておりますけれども、非雇用型、あるいは雇用類似の働き方、非常に多様化しております。そういった意味で、それにとどまらず、雇用類似の働き方の検討をしっかり進めていただきたいと、そのことを申し上げて、私からの質問を終わります。