医療研究分野の研究開発に繋げるために

2017.04.25 22:55(7年前) ブログ国会質疑 |里見りゅうじ(里見隆治)

4月25日、内閣委員会で、医療機関などの医療情報を匿名加工して医療研究分野の研究開発に繋げるための法律案の審議。

担当の石原大臣ほかに、その情報が悪用されることのないように、また、医療情報の流出することのないよう担保措置を!といった質問をしました。

石原のぶてる大臣は、15年前行革担当大臣でいらした時に、内閣官房行革担当の参事官補佐としてお仕えし、今日も審議後、お声を掛けて下さいました。

 

医療機関などの医療情報を匿名加工して医療研究分野の研究開発に繋げるための法律案の審議医療機関などの医療情報を匿名加工して医療研究分野の研究開発に繋げるための法律案の審議

議事録

里見隆治君 公明党の里見隆治でございます。本日は質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 本法案は、我が国における健康・医療に関する先端的研究開発や新産業創出を促し、健康長寿社会を実現していく上で重要な取組であるというふうに考えております。私からは、衆議院での議論を踏まえ、本法案の意義や本法案に基づき匿名加工された医療情報の医療分野の研究開発への利活用が円滑に進むために、施行に際して重要と考えられる点について議論を深めてまいりたいと思います。
 まず、本法案の意義について確認をしておきたいと思います。本法案は、医療分野の研究開発を推進するため、医療情報を安心、円滑に収集し、匿名加工する能力を有する事業者を国が認定する仕組みを設けることとした上で、医療機関はあらかじめ本人に通知し、本人が拒否しない場合には、認定事業者に対して医療情報を提供できる仕組みとなっていると承知をしております。
 この点に関して、私、今回の審議に当たって、医療分野の研究開発に携わる医師に今回の情報提供に関してその考えを伺ったところ、このようにおっしゃっていました。治療を行うお医者さんと、また患者さんとの関係というのは対等な関係になりにくい、患者さん御本人は、お医者さんに対してあらゆる努力により治療を進めてほしいという立場からどうしても遠慮がちになり、初期段階で治療方針について相談をすると同時に医療情報の提供について問われると、ともすると同意せざるを得ない精神状況に置かれてしまうのではないかといったおそれをおっしゃっていました。
 この点、衆議院内閣委員会で附帯決議がなされておりまして、医療情報取扱事業者に対しては本人又はその遺族が医療情報の提供の停止の求めを行う際に、その手続を容易に行うことができるよう適切な措置を講ずることと決議されておりますけれども、私も賛成でございます。患者さん御本人が萎縮するようなことのないよう、御配慮をお願いしておきます。
 さて、医療情報を提供する医療機関には、民間の医療機関はもちろん、国や独立行政法人の医療機関、あるいは自治体立の医療機関も含まれると思いますが、そもそも医療情報を含む個人情報の扱いの取扱いについては、医療機関の設置主体ごとに適用される法体系が異なるというふうに承知をしております。
 民間であれば個人情報保護法、独立行政法人であれば独立行政法人等個人情報保護法、自治体立病院であれば自治体ごとの条例が適用されており、こうした主体ごとに適用される法令が異なり、各自治体の条例を含めれば二千種類にも及ぶことは二千個問題とも呼ばれております。
 今回の法案は、こうした適用される法令の相違を超えて、医療情報の円滑な利活用を実現する仕組みとなっているか、お伺いをいたします。

国務大臣(石原伸晃君) ただいまの里見委員が御指摘をいただきましたとおり、医療機関における個人情報の取扱いというのは病院によって分かれていることによりまして、医療関係者の側からすると複雑で分かりにくいという指摘は私も聞かされております。
 今回の法案によりますと、こうした医療機関の設置主体や場所ですね、地方ですと条例になっておりますので、市が変わるだけで市民病院などは変わってしまいます、こういう相違にかかわらず、統一ルールの下で当然本人に意思を確認し、認定事業者に医療情報を提供できる、そこは一つになるということでございます。これによって、午前中も御議論がございましたけれども、医療分野の研究開発に資する医療情報の収集がより効率的、円滑に行われるようになる、こんなふうに基本的に考えているところでございます。

里見隆治君 ありがとうございます。
 この医療分野の研究開発を推進していく上では、あらゆる情報を全国民分収集する必要はなく、統計的に有意であるなど研究開発に必要な質の高い情報を収集していくことが肝要だと考えます。そうした観点からは、認定事業者については、単にデータの量の拡大を目指すのではなく、医療分野の研究開発のニーズを踏まえて研究開発に資する情報を収集していく必要があると考えております。
 例えば、医療等IDといったデータの突合のためのツールも併せて活用していくことが必要ではありますが、糖尿病と歯周病のような異なる診療科の関連、また、急性期から回復期、そして介護までの一連の流れの中での分析といった研究開発も今回の仕組みによる医療情報を利活用することで実現が期待をされます。また、今後の高齢化の進展を見据えると、医療の質の向上のみならず、効果的な予防法の開発も重要であり、病気になる前の情報の収集も重要と考えます。
 こうした点を踏まえて、具体的にどのようなデータを収集していくのか、その点、お伺いをいたします。

政府参考人(大島一博君) 医療分野の研究開発におきまして、委員御指摘のような異なる診療科間の連携ですとか、急性期から始まる一連の分析あるいは予防、こういったことは極めて重要なテーマと考えておりまして、こういう分野でも今回の仕組みが役に立つことを期待しております。
 今回の制度により収集される医療情報として考えておりますのは、具体的には、現在、医療情報の利活用の中心となって使われているいわゆるレセプト情報でございますが、こういったレセプト情報に加えまして、診療行為の結果に関する情報であるところの問診内容ですとか検査結果、治療予後、こういった情報を想定しているところであります。
 認定事業者におきましては、ここが一つの力の見せどころになるわけですけれども、研究開発者の具体的なニーズを個別に踏まえまして、それに的確に応えられるように創意工夫しながら質の高いデータを収集していくと、そういうことになると考えております。

里見隆治君 是非、こうした運用面においての効率的、効果的なデータ収集の方法、これを運用の中でまた更に改善をしていっていただきたいと思います。
 医療の情報を収集するといいましても、以前の、昔の、今日午前中も紙という話がありましたけれども、紙のカルテをスキャナーで読み込んでいたのでは利活用は困難でございます。医療情報のデジタル化が前提となると考えますが、電子カルテの普及が徐々に進んでいると。その上で、医療情報のデジタル化に際して、今度はそのデータの標準化の推進ということが不可欠となろうかと思います。データの標準化、これに関してどのように取り組んでいかれるお考えでしょうか。
 厚生労働省にはあらかじめ説明を受けておりましたけれども、厚生労働省より、保健医療分野の標準規格の整備・普及推進までの流れという資料、本日お手元に、配付資料一ページ目に、お配りをしております。これは非常に分かりやすい資料でございましたので、この点、厚生労働省から御説明をお願いいたします。

政府参考人(大橋秀行君) お答え申し上げたいと思います。
 今御指摘をいただきましたように、医療情報のデジタル化の基盤となりますのは電子カルテでございます。この普及、徐々にではありますけれども進んでおりまして、例えば四百床以上の大規模な病院に関しては平成二十六年度時点で八割程度にまで普及が進んでいるというのが現状でございます。
 こうした中、データの標準化ということが課題になってまいります。この点、異なる医療機関の間において必要な医療情報が容易に利用可能となりますように、厚生労働省において、病名や処方、検査データなどに関する標準的な規格を策定をしております。今後も、患者の入院から退院までの記録方法に関する規格など、民間からの提案も踏まえながら、更に必要な標準規格を策定するなど取り組んでまいりたいと思います。
 また、今回の法案に基づいて認定事業者が医療機関等の電子カルテデータを収集、提供する際には、厚生労働省の標準規格への対応を求めていくなどの方策について、今後検討し、推進してまいりたいというふうに考えているところでございます。

里見隆治君 是非よろしくお願いいたします。
 次に、医療機関から認定事業者に対する医療情報の提供、これは任意となっております。認定事業者が医療情報を収集するためには医療機関の協力が必要不可欠となります。衆議院における審議でも、医療機関が医療情報を提供する際に生じるコストは誰が負担するのかといった議論があったと承知をしております。より多くの医療機関等に参加してもらうためにどのような取組が考えられますでしょうか。
 また、今後は、医療現場におけるデータを作成する段階からデータを用いた医療分野の研究開発への利活用を想定しつつ、データの入力といった面を含め、医療現場に新たな負担が掛けられないように、むしろICTを活用して事務負担を軽減していくような取組も必要となると考えます。この点、いかがでしょうか。

政府参考人(大島一博君) 医療機関は任意でございますので、理解を得て、協力を多くしていくということが重要な施行後の課題と考えます。医療機関に対しまして、今回の仕組みに基づく医療情報の提供が治療効果等に関します大規模データ研究に通じて、それによりまして最適な医療の提供や医薬品副作用等の早期把握による安全性向上につながることなどにつきまして丁寧に説明、広報をさせていただきながら、趣旨及び意義について理解を求めていきたいと考えています。
 その上で、認定事業者への情報提供に伴いまして医療機関に発生する情報システム等のコストにつきましては、今委員御指摘のありましたとおり衆議院でも議論がございましたが、認定事業者が負担することが基本となります。加えて、認定事業者から院内の情報セキュリティーに関しまして医療機関に対しましてアドバイスをしていただける、そういうメリットもあると考えます。
 加えまして、やはり、先ほど電子カルテの音声入力の話もございましたが、医療情報規格の普及、標準化ですとか、あるいはそういう人手をなるべく減らせるようなITの活用、こういったことによって、データ作成、入力に伴う労力が減るようなことも進めていかなければならないと考えております。

里見隆治君 是非、その医療機関等の負担軽減については更なる運用の改善、また工夫をお願いをしたいと思います。
 次に、今回の仕組みについて、信頼できる基盤として活用されるために、収集した医療情報が流出することのないように情報セキュリティーを確保することが肝要であると考えます。また、利活用は匿名加工された情報に限ることとされておりますけれども、この特定の個人が識別されないことがきちんと担保されていることが重要でございます。
 最近の情報流出事案の中で、業務の委託先の関係者から情報が流出した事案があったと承知をしております。認定事業者は業務の委託を行うことを想定しているか、また、想定される場合、委託先についても適切な監督が及ぶ仕組みとなっているか。この点、しっかりとした対応が必要であると思いますが、御所見をお願いいたします。

政府参考人(藤本康二君) お答えいたします。
 新法におきましては、認定事業者が委託を行うことを想定しております。そのような場合におきましても適切なセキュリティーが確保されるよう規定を置いております。
 具体的に申し上げますと、認定事業者は、医療情報の安全管理が図られるよう、委託先の事業者に対する必要かつ適切な監督を行う必要があります。また、認定事業者が委託をできる事業者は、主務大臣が定められた基準、具体的に申し上げますと、欠格事由に該当しない、安全管理措置が図られる、安全管理措置の適確な実施ができるとの基準を満たすことを認定した認定受託事業者である必要がございます。また、委託を受けました認定受託事業者が再委託を行う場合も同様に認定受託事業者であることを求めつつ、再委託の際には認定事業者の許諾が必要になります。これらに違反した場合、認定事業者や受託者への是正命令の対象となり、違反すれば懲役や罰金刑の対象となります。
 認定事業者や認定受託事業者がこれらの義務を適切に果たすことで匿名加工医療情報作成事業の遂行が円滑に行われるとともに、適切な安全管理、セキュリティーが確保されると考えております。

里見隆治君 是非、この委託先の管理監督、この範囲まで含めての適切な対応をお願いいたします。
 今回の仕組みでは、認定事業者の運営費用については、研究機関等の利活用者が認定事業者に支払う利用料で賄うこととなっていると承知をしております。この利用料については、もちろん認定事業者が暴利を貪るような高額なものではあってはならない。その一方で、余りに低い価格であっては、認定事業者が医療分野の研究開発に資する質の高い匿名加工医療情報を適確に提供することが困難となってしまいます。
 そうした観点から、認定事業者における利用料について、これはどのように決まるか、そのルールについてお伺いをいたします。

大臣政務官(武村展英君) まず、認定事業者の事業運営に要する経費です。
 これは、基本的に匿名加工医療情報の利活用者が負担することとなります。したがいまして、利活用者が負担する利用料の総額は、認定事業者が継続的な事業運営を確保できるように、情報の収集、加工、提供に要するコストを基本に適度のマージンを上乗せしたものとなります。こうした利用料の算定の考え方は基本方針や認定基準において示していく予定でございます。
 なお、認定後の収支の状況につきましては、認定事業者に対して、事業計画の進捗と併せまして必要に応じて第三十五条の規定による報告を求め、対価が適正であると認められない場合には、第三十六条の助言、指導の規定により是正を図っていくこととしております。

里見隆治君 そうした事後的な規制というものはあろうというふうに伺いましたけれども、しっかりこれウオッチをして適正な状態になるようにフォローをお願いしたいと思います。
 続きまして、人材の確保という観点から御質問をしたいと思います。
 今後の我が国の医療分野の研究開発を推進していく上で、医療情報の利活用の基盤となる認定事業者の役割は重要であると考えます。認定事業者に求める情報セキュリティーや匿名加工に関する一定の基準の具体的内容は今後主務省令で定めるというふうにされておりますけれども、認定事業者の能力、質を支えるのは、とどのつまりは業務に従事する人材であると考えます。
 そうした意味で、認定事業者の業務に求められる人材、その人材に求められる能力のイメージ、質の高い人材を確保していくための方策についてお伺いをいたします。

政府参考人(藤本康二君) お答えいたします。
 認定事業者の業務を適正に実施していくためには、研究ニーズに応じて医療情報の匿名加工を適確に行うことができる医療、統計、匿名加工に関する知識、能力を有する人材、医療情報を適切に管理するための情報セキュリティーの知識や能力を有する人材、これらを育成、確保することは重要というふうに考えております。
 こうした医療情報処理について知見を有する専門家が集まる日本医療情報学会、それから日本臨床疫学会、日本薬剤疫学会、こうした学会の先生方のお力をお借りして、こういう人材の確保、育成に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

里見隆治君 そういった意味で、まさに基盤整備ということでございますが、その基盤を支える基盤、これはまさに人材でございます。そうした人材の確保、そしてその確保された人材がしっかりとこの時代にあって応じて、更に研修、育成が重ねられるように配慮をお願いいたします。
 続いて、利活用者による悪用防止に関して御質問をいたします。
 認定事業者については、認定基準や是正命令、守秘義務など様々な規制措置を講じていると理解をしております。匿名加工された情報であるとはいえ、利活用者が入手した情報を悪用することはないか適切に対応するべきと考えます。
 午前中も質疑があったところですが、利活用者による適正な利用のために、具体的にどのような制限を掛け、どのように悪用防止をするのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。

政府参考人(藤本康二君) お答えいたします。
 新法におきまして、認定事業者は医療分野の研究開発に資するよう医療情報を取り扱うべきこととされております。匿名加工医療情報の利活用は医療分野の研究開発に資する用途に限られるものというふうに考えております。
 その上で、新法第二十条の規定におきまして、認定事業者は、その提供した匿名加工医療情報が利活用者において不適切に取り扱われていないかについて適切にチェックを行う義務を有しております。あわせまして、利活用者による第三者への匿名加工医療情報の提供範囲が無限定に拡散しないよう、利活用者との契約において情報の共有範囲を明確化することとしております。認定事業者から匿名加工医療情報の提供を受けました利活用者が当該契約に違反しまして当該匿名加工医療情報を不適切に取り扱った場合は、認定事業者が適切にその是正措置を図るべきであるものと考えております。
 さらに、匿名加工医療情報の利活用者は、匿名加工医療情報を取り扱うに当たりまして、作成の基となりました医療情報に係る本人を識別するために、加工方法に関する情報を取得する行為、それから他の情報と照合する行為は禁止されております。認定事業者が委託先を適切に監督していないと認められる場合や、匿名加工医療情報の利活用者が禁止行為を行った場合は、主務大臣による是正命令の対象となります。
 これらにより、利活用者による匿名加工医療情報の適切な利用を確保してまいりたいというふうに考えております。

里見隆治君 この利活用者による悪用防止、まさにこの制度の信頼に関わる点だと思います。万全の対策をお願いいたします。
 この今回の法案による医療情報の利活用基盤が整備されることで、様々な利活用が考えられます。今回の法案は内閣官房で作業、取りまとめされておりますけれども、今後の利活用については厚生労働省、文部科学省、また経済産業省と、それぞれの所管の分野で御検討されていると思いますので、これから各省庁にお伺いをしていきたいと思います。
 今回の法案では、海外の製薬企業もこの匿名加工医療情報の利活用、これ排除されていないというふうに承知をしておりますけれども、これも午前中審議でございましたとおり、この医療情報の利活用の基盤が我が国の経済成長や新産業創出に寄与していくことということが大変重要でございます。認定事業者が収集した情報が実際に我が国における医療分野の研究開発に利活用され成果を上げていく、そのために何をしていくのかということが私どもに与えられた使命でございます。特に、人工知能も活用することで、最先端の診療支援ソフトを開発し、全国どこでも質の高い医療が受けられるようになることが期待をされております。
 この点、午前中の審議でも触れられておりましたけれども、本日の配付資料三ページで配付させていただいておりますとおり、厚生労働大臣が去る四月十四日に開催をされた第七回未来投資会議において、保健医療人工知能、AIの開発加速化というテーマで今後の方針を打ち出されております。厚生労働省として、特にAIの開発加速化についてどのように取り組まれるのか、お伺いをいたします。

政府参考人(宮嵜雅則君) お答え申し上げます。
 保健医療分野における人工知能の活用につきましては、一つには、新たな診断方法や治療方法が創出できるようになる、また、全国どこでも最先端の医療を受けられるようになる、あるいは、医療・介護従事者の負担の軽減が図られまして、より患者さんの治療とか介護に専念できるようになるといったようなメリットが見込まれるところでございます。
 委員御指摘のとおり、認定事業者が収集した情報も含め、医療情報を利活用して人工知能の開発を進めることは大変重要であると考えております。このため、厚生労働省におきましては、本年一月から、保健医療分野におけるAI活用推進懇談会を開催いたしまして、人工知能の活用に向けた課題の洗い出しや対応策の検討を行っているところでございます。
 委員のお示しいただいた資料にもございますが、本懇談会では、我が国における医療技術の強み、例えば画像診断系ですけれども、と、それから医療情報の増大とか医師の偏在など我が国の保健医療分野の抱える課題の両面を踏まえまして、画像診断支援などAI開発を進めるべき重点六領域を選定したところでございます。
 人工知能の開発を促進するための基盤整備とそれから人工知能の質や安全性を確保するためのルール整備に取り組み、人工知能の活用によるメリットを国民がしっかり享受できる社会を実現してまいりたいというふうに考えているところでございます。

里見隆治君 今御答弁いただいたAIの開発加速化、こうしたことと、そして今回の匿名加工医療情報のこの制度、これが相まって、日本の医療、また研究開発をしっかり進めていけると思いますので、是非積極的なお取組をお願いいたします。
 次に、文部科学省関係でございますけれども、私、この一つの利活用の方法として、例えば難病等の希少疾患に関する研究を進めると。これ、今までですと、なかなか希少疾患というだけに情報が収集しにくいということがあろうかと思います。こうした困難な状況が、今回の法案の施行により、医療情報の収集が非常に効率的に進められるのではないかという期待をお持ちの方もお見えです。当然、希少情報なだけに逆に匿名性と相反するような、したがって、その情報、その特性については十分考慮して行う必要があるというふうに考えますけれども、こうした能力を有する認定事業者により、こうした情報収集、効率的、円滑にしっかりと行っていく必要があると思います。
 その上で、文科省にお伺いをいたしますけれども、難病等の研究においては大学等の果たす役割、これが重要であると考えます。その際に、これまでであれば大学等に埋もれているシーズを、これを実用につなげていくための支援、これが必要と考えておりますけれども、文科省としてこうした研究に対してどのような支援が可能なのか、この点、御答弁をお願いいたします。

政府参考人(板倉康洋君) お答えいたします。
 文科省といたしましては、大学における革新的な基礎研究を行いまして、また、その成果を臨床研究、実用化につなげていくことが重要だと考えております。そのために、橋渡し研究戦略的推進プログラムを実施しておるところでございまして、その中でも、例えば難病対策の成果といたしまして、脂肪萎縮症に対するレプチン補充療法の薬事承認など、基礎研究の成果を基にした画期的な成果が創出されているところでございます。
 現在御審議いただいておりますこの法案によりまして、大学などがこういった研究開発を実施するに当たりまして必要となる匿名加工医療情報を円滑に入手できる可能性が開けることになるのではないかというふうに考えてございます。
 文部科学省といたしましては、今後とも、革新的な基礎研究を着実に推進し、その成果を臨床研究や実用化につなげるための取組を行ってまいりたいと考えております。

里見隆治君 難病等の研究においてこうした成果を待ち望んでおられる方、大変多くいらっしゃると思います。そのための積極的なお取組をお願いいたします。
 続きまして、経済産業省にお伺いをしたいと思います。
 民間企業において、従業員にウエアラブル端末を配り、糖尿病予防に生かすことで従業員の健康維持増進を図る実証事業を行っていると、これ、午前中の藤末委員からも質問があった点でございます。これは私も事前にいろいろと御説明いただきましたけれども、本日、資料では四ページで配付をいただいております。これは、今回の法案と相まって、また、こうした分野でその研究成果が一層進むことが期待されるところでございます。
 経産省においての取組の概要と成果について、また、その成果が国民の皆様お一人お一人にどのように及んでいくかという点も含めて、御説明をお願いいたします。

政府参考人(吉本豊君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、経済産業省では、平成二十七年度補正事業といたしまして、お配りいただきました資料にございますように、ウエアラブル端末等のIoT機器、これを用いまして、民間企業や保険者あるいはサービス事業者等から成ります八つのコンソーシアムに委託をする形で、糖尿病軽症者約千名を対象にいたしまして、その重症化予防サービスを提供する実証事業を実施してございます。
 具体的に申し上げますと、一人一人の従業員の方に個別化したサービスを提供できるように、まずは一つ、質の高いデータを取得するということ、このために、糖尿病診断指標の一つでございますヘモグロビンA1cという数字がございますが、これに基づきまして、行動変容の必要性が高い糖尿病軽症者あるいは予備群の方をまず抽出をいたしました。その上で、そういう方々にウエアラブル端末を活用して日々の健康情報を収集し、医師あるいは管理栄養士等の専門職とも共有をすると。そのために、本人同意をいただいた上で、個々人の状態に合った指導、介入をタイムリーに行って個々人の行動変容を促すと。こういうことから、糖尿病の重症化予防を目指したわけでございます。
 これは、三か月から六か月程度介入をした八つのケースございますけれども、実際に、ヘモグロビンA1cの値、あるいは肥満度を表すBMIの値、体重等に一定の改善傾向を確認をいたしております。また、介入をしなかった群に比べて介入をした方が効果が高かった、こういったような有望な結果が出ております。
 私どもとしましては、これはあくまでも僅か半年の実証でございましたので、今年度、平成二十九年度からは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、AMEDにおきまして、事業の規模、期間を拡充をいたしましてこうしたサービスの有効性をより科学的に検証する、こういったようなことを取り組む予定にしております。
 今回の法案との関係でございます。
 我々は、非常に質の高い個々人に刺さるサービスをやろうということで、千人、極めて軽症者に限定したデータで、質の高いアルゴリズムを目指しております。
 ただ、あくまでも千人のデータということでございます。もし仮に外部に似たような健康情報の情報セットが例えば百万人あったとしたら、例えば千人の中にはなかったような異常値を百万人の中にあるからそれを排除することができたりとか、あるいは、糖尿病にフォーカスした事業でございましたけれども、例えば心臓疾患なんかの影響みたいなことが推定できるというようなことが、外部にこういった大きなデータセットがある場合に、よりそういった個々人に向けたサービスの質を外部の情報からも利用しながら高度化する、こういったようなことも期待できるということでございまして、いずれにしましても、今回の法案によりまして、医療機関が保有をするデータの活用、より幅広く深いデータ分析可能になるということ、これによりまして、より品質の高い効果的なサービス、商品の市場化に結び付く研究開発加速されることを大きく期待をいたしております。

里見隆治君 是非、そうした取組、積極的に推進をお願いいたします。
 こうした事業も含めて、今回の法案により医療情報を集めることによって、ヘルスケア産業の振興、成長にどのような影響が想定されるのか、そして、それによって国民の皆様お一人お一人がどのようなメリットを受けるのか、これにつきましても経産省からお願いいたします。

政府参考人(吉本豊君) お答え申し上げます。
 ただいま御紹介、御説明させていただいたことの延長になりますけれども、今の事例を一つ取りましても、こういった外部からより大きな深いデータが入手できることになることによりまして様々なサービスが生まれてくる可能性があると考えております。
 先ほどの例でいいますと、個人の属性、生活習慣を踏まえた行動変容、こういったものを促すような個別化サービス、あるいは先ほどお話ございましたAIを用いたような診断支援システム等、あらゆる分野でのサービス、製品の創出が促進されると思っております。
 私どもといたしましても、関係省庁と連携しながら、ヘルスケア産業の発展に向けて支援を加速、充実してまいりたいと、こういうふうに考えてございます。

里見隆治君 ありがとうございます。以上で質問を終わります。

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