「在宅介護」の苦悩

コロナの影響受け、ひっ迫

先月25日に緊急事態宣言が全面解除となり、社会経済活動が徐々に再び動き始めた。一方で、訪問やデイサービス(通所介護)など「在宅介護」の現場では、感染リスクの高さから、いまだ緊迫した状況が続いている。利用者や事業者、訪問介護員(へルパー)などの介護従事者は、それぞれが見通しの利かない不安を抱える。実情を追った。

■(利用者)感染不安あるが必要なもの

東京都に住む釘本君江さん(96)は6年前、大腿骨を骨折したことをきっかけに要介護3の認定を受けた。同居の家族は全員仕事に就いているため、平日は毎日、食事の補助などの訪問介護を受けながら、週3日は入浴や身体の状態を維持する機能訓練のために通所介護の事業所に通っている。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、釘本さんの家族はサービスの利用を控えることもよぎったが、機能訓練を欠かすとトイレへの移動など日常生活に必要な身体機能が失われ、在宅での介護が難しくなる。「感染への不安もあるが、自宅での介護を続けていくためには必要なもの」と複雑な心境を語る。

■利用控えの高齢者「6割に機能低下」

淑徳大学の結城康博教授が5月4日~17日の期間で、在宅介護の関係者約500人を対象に行った調査では、介護サービスの利用を控えている高齢者に「機能低下が見られる」との回答が6割に上った。結城教授は、「感染と機能低下による重度化のリスク、利用者はその両方を抱えている」と指摘する。

■(事業者)通所9割以上が経営に打撃

介護事業者も苦境に立たされている。全国介護事業者連盟の調査では、通所介護を行う事業所の90%以上が新型コロナウイルスの感染拡大によって、経営面で打撃を受けていると回答した。

複数の利用者が集まる通所介護や短期間の宿泊が可能なショートステイの事業所は、クラスター(感染者集団)発生の危険性が高い。実際に名古屋市や富山市などでは、複数の通所介護事業所でクラスターが確認されている。

都内のある事業所の担当者は、「経営は厳しいが、感染防止の対策を続けなければならない」と窮状を訴える。同事業所では3月以降、利用者が2割減って経営状況が悪化。マスクなど衛生物資の調達にかかる費用も大きな痛手だ。

通所介護の事業所は元々、利用者1人当たり3平方㍍を基準に食事や機能訓練を行うスペースを確保している。定員を減らさないと十分なソーシャルディスタンス(社会的距離)を保てない可能性があるため、利用者のさらなる制限も検討している。

■(従事者)休職増で、人手不足深刻に

ヘルパーなど介護従事者の負担増も見逃せない。東京都目黒区にある「株式会社やさしい手」の学芸大学訪問介護事業所では、250人の利用者に登録ヘルパー約50人体制でサービスを行っていた。

だが、一部のヘルパーは感染リスクの高さを懸念し、休職を申し出た。担当していた利用者には職員や他のヘルパーが対応しているが、慢性的な人材不足で1日に7~8件の介助に当たる人もいる。

同社の香取幹代表取締役社長は、ヘルパーや職員が感染防止策を講じながら、利用者の体調管理なども担っていると説明し、「在宅医療体制の強化を含め、事業者や従事者がサービスの再開、継続を安心してできることが大切だ」と強調している。

■公明、慰労金、再開支援など推進

公明党は、濃厚接触のリスクを抱えつつ従事する介護現場の実情に耳を傾け、政府に対策を求めてきた。

4月30日に成立した2020年度第1次補正予算では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、介護事業所が衛生物資の調達や事業継続のための人員確保を行った際の費用について、国と自治体が負担する支援メニューが実現した。

加えて、先月7日には、党新型コロナウイルス感染症対策本部の介護・障がい福祉支援検討チーム(座長=里見隆治参院議員)が加藤勝信厚生労働相に、介護従事者への特別手当支給など、さらなる支援策を提言した。

これを受け、政府は第2次補正予算案において、地域の医療や介護・福祉の提供体制を強化する、都道府県への「緊急包括支援交付金」に介護分として、4000億円以上を計上。ここには、介護従事者に対する慰労金の支給、サービスを休止している事業所や利用者への再開支援などの事業が盛り込まれている。

公明党ニュースより

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